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え…? 俺の横で赤城さんが声を掛けてきた。
お互い服を纏わず素肌を曝していた。
何が起こっているのか全く理解できない俺は頭を抱えた。
「どうしたの。覚えてない?」
「すみません。もしかして……」
恐る恐る事の成り行きを聞くと予想通りの答えが返ってきた。
それを聞いた俺は絶望感で一杯になってしまった。
彼女にはもうすぐ結婚する相手がいた。
俺は彼女に何度も頭を下げて謝った。
許してくれるとは思っていないがとにかく謝りたかったのだ。
「大丈夫よ」
赤城さんは頭を下げる俺に向かって優しい言葉を掛けてくれた。
俺の傍に来るとそっと手を重ねてこう話した。
「私、貴方の事が気になってるの。もしよかったら私と定期的に会わない?」
衝撃的な話だった。
男と女が定期的に会うというのはつまりそう言う事だ。
俺は今までの彼女の抱いていたイメージが崩され、軽蔑した。
しかしその反面彼女とこうして会えることへの喜びも感じていた。
彼女は周囲から思われている優しさや、凛とした良い女性でもなかったようだ。
俺だけが知ってしまった彼女の本当の姿に俺は心のどこかで喜びに感じていた。
それから彼女の都合のいい時に声を掛けられ身体だけを求め合う関係になった。
間違ってると分かっていても彼女を尊敬する多くの男性たちを考えると自分からこの関係を断ち切る勇気はなかった。
遊ばれているのは分かっていたけれど自分から赤城さんと別れるという選択肢を選ぶことはなかった。
「はい。分かりました」
俺は赤城にそう告げると会議室を後にした。
もうこの関係が続いてどれだけ経っただろうか。
定時で事務所を後にして彼女が来るかもしれない自分のアパートに帰る足取りが凄く重たい。
電車に乗って最寄り駅に着くが何度も点滅する横断歩道の信号機を眺めてしまっていた。
「どうしたの? 渡らないの?」




