11
憂鬱な時間がまた訪れようとしている。
「何考えてるの?」
え……? 制服に着替えていたさっちゃんが俺の顔を覗き込んできた。
俺は慌てて顔に手をやる。
この子は本当に不用心だ。
「何でもないよ。そろそろ出るわ」
「あ、待って…。私も出るよ」
それよりも、はい。
彼女からこの部屋の鍵を手渡された。
「これは……?」
「此処の鍵。持っててね。今日もちゃんとここに帰って来て」
「それは……」
「ねっ。お願い」
ん………なんだか、俺はこの子の押しに弱くなってしまったのか。
小さく頷くと、よかった、と笑顔で笑った。
その顔を見るとなんだかほっとした。
部屋を出て俺は会社へ。
彼女は学校へそれぞれ別れた。
出社して自分のデスクに座ると置手紙が置いてあった。
何だろう、俺はその手紙を見た。
『昼休み。屋上でーーー赤城』
先輩からの手紙だった。
俺はその手紙をスーツの内ポケットにしまうと仕事を始めた。
いつも通りの物品管理の仕事。
パソコンとにらめっこしながら作業をしていると直ぐに昼の時間になった。
俺は先輩が待っている屋上へ向かった。
ドアノブを回して扉を開けると先輩が1人で佇んでいた。
「先輩……」
「来たわね。昨日のあれは何だったのかしら」
やっぱりその話か。
俺はなんて言葉で自分の思いを伝えればいいのだろう。
そう思いながら話をした。
「昨日のは……その……そういう事です」