10
翌朝。
耳元ですーすーと寝息の音がした。
ゆっくりとを開けると俺の隣に顔が接近したさっちゃんが居た。
俺は顔を真っ赤にしてベッドから起き上がった。
「なんちゅう、無防備」
俺はそのままトイレを済ませて顔を洗って戻るとベッドから上肢を起こして俺の事を見つめているさっちゃんがいた。
「おはよ。眠れた?」
「おはよう。よく寝れた」
「そっか」
笑いながらそう言うとベッドから起き上がって背伸びをして見せる。
よく見ると小柄でTシャツに短パンという姿が妙に可愛らしいと思ってしまった。
「学校あるんだろ? 俺も会社行かなきゃ」
「ああ、そうだね。朝ごはん食べる?」
「コーヒーだけ貰おうかな」
「わかった」
淡々な言葉の掛け合いをした後、さっちゃんは台所に向かってポットに水を入れてコンロの火をつける。
俺は貸してもらったスエットスーツから昨日来ていたシャツとスーツに着替えた。
ネクタイを締める姿を見ていたさっちゃんが俺に話しかけてきた。
「ネクタイ、曲がってる」
「え?」
さっちゃんは俺の所へ来てネクタイを締めなおしてくれた。
その仕草が何だか凄く可愛らしく思ってしまう。
その気持ちを押し殺すように『ダメだ。彼女は女子高生だぞ』と違う自分が制止させようとする。
確かにダメだ。
世間体を考えるとあり得ない二人の恋なんて。
さっちゃんはコーヒーを淹れたカップを俺に渡し、制服に着替えてくると言ってベッドの部屋に行ってしまった。
携帯電話の着信履歴を見ると、先輩から着信ばかりが記録されていた。
その中に録音メッセージが残されていた。
俺はそのメッセージを訊くことにした。
『ピー……紫野、どうしてこんなことになったのかな。私との関係を終わりにしたいのならそう言ってほしかった。会社で話をしたい……ピー……録音メッセ―』
会社に行けば無理やりでも先輩に会うことになる。