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春光  作者: につき
6/10

優弓

優れた楽器は感情を引き出すどころではなく

むしろ破壊寸前まで連れて行く

演奏者は彼等だけの景色の中で

苦痛に満ちた恍惚に満ちる

或いは最も静かな昂りに至り

聴衆はただその透き通る軽やかな船に乗り

連れゆかれるまま波に揺られ

フォルテシモの嵐雨と稲光に怯え

アンダンテのそよ風と雲間の光りに安らぐ


かつて芸術は発明以前

技術であったように

美しさは巧まざる技術

静かに尽きるように曳く弓のように

仄赤く金に染めてゆく曙の雲のように

音もなく解ける柔らかな薔薇の蕾のように

そして

マグマの豪炎と灼熱の揺らぎのように

大鷲を肩に留め夕日を独り占めする巨岩のように

恐るべき広大な銀河の渦巻きの目眩くオーロラのように

存在とはつまり美しさ

全てよ

遍く全てよ

わたしに美しさを教えてくれ

この不条理の隙間に生まれ続ける煌めく粒たち

旋律の綾模様が満たす清明な大気を

黒と黒の間にある明晰な銀の指先

技術は軽やかにしかし確かに駆け回ることを

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