表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春光  作者: につき
6/10

優弓

優れた楽器は感情を引き出すどころではなく

むしろ破壊寸前まで連れて行く

演奏者は彼等だけの景色の中で

苦痛に満ちた恍惚に満ちる

或いは最も静かな昂りに至り

聴衆はただその透き通る軽やかな船に乗り

連れゆかれるまま波に揺られ

フォルテシモの嵐雨と稲光に怯え

アンダンテのそよ風と雲間の光りに安らぐ


かつて芸術は発明以前

技術であったように

美しさは巧まざる技術

静かに尽きるように曳く弓のように

仄赤く金に染めてゆく曙の雲のように

音もなく解ける柔らかな薔薇の蕾のように

そして

マグマの豪炎と灼熱の揺らぎのように

大鷲を肩に留め夕日を独り占めする巨岩のように

恐るべき広大な銀河の渦巻きの目眩くオーロラのように

存在とはつまり美しさ

全てよ

遍く全てよ

わたしに美しさを教えてくれ

この不条理の隙間に生まれ続ける煌めく粒たち

旋律の綾模様が満たす清明な大気を

黒と黒の間にある明晰な銀の指先

技術は軽やかにしかし確かに駆け回ることを

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ