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異世界ヒーローはチート使い  作者: みか
一章 異世界ヒーロー編
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第六話 再会

誤字を直しました。







次の日の朝。






「い……おい………いつまで寝てんだ?

起きろー」



『アキ、起きて』




「…………文乃」




ぼんやりする意識の中で居る筈のない文乃の姿が見えた。とうとう俺は文乃の幻覚でも見たらしい。




「ほら、アキ。早く起きる起きる」

「……ん?」




やけにリアルな声。ボヤけていた意識が鮮明になっていく。そんな中で目の前に居る人物もハッキリ見えた。鷹広と文乃……………文乃!?




「あははは。驚いた?」




俺の驚いた顔を見て文乃は苦笑いだった。文乃は行方不明になってた筈。見つかったのか?




「今日の朝、早朝に城に訪ねて来たんだ。あとミュミュって子も一緒に」

「ミュミュ?」




鷹広の説明に出てきた聞いた事もない名前を呟いた。




「ミュミュはドワーフなの」




付け足すように文乃がどや顔で割り込んで来る。まぁ、驚く事じゃない。




「…それでそのミュミュはどこに居る」

「あ、うーん……ミュミュは人見知りでちょっとね」




なるほどな。確かドワーフや精霊は滅多に人間の側に現れないんだったか。




「そうか。だが何でここが分かったんだ」

「私、ここに来た時は一人で森の中に居たの。その森でミュミュに会って王都で異世界から来たって人が王様殺しで捕まったって話してるのを聞いて、ミュミュの魔法で来たんだ」




そのミュミュは魔法使えるのか。




「それにしても文乃ちゃん、来てそうそう大変な目にあったな」

「あははは。でもそのお陰でミュミュに会えたし、ラッキーだったかも」




…文乃は自分が辛い時でも笑顔を絶やさない。それが羨ましいとよく思う。




「文乃ちゃん、言わなくて良いの?」

「あぁ!そうそう。ミュミュの弟が行方不明らしくてね、一緒に探してあげようよ」




キラキラが見えるんじゃないかというぐらい笑顔で俺を見つめる。本来なら人探しは鷹広達に任せる所だが仕方ない。




「…仕方ない」

「えへへ。それじゃ、作戦会議にアキもレッツゴー!!」

「うおっ!」




文乃に腕を引っ張られて部屋を出る。部屋を出ると柱の後ろに隠れる恐らくミュミュという奴と顔をしかめる草部が居た。




「ミュミュ。まだ怖い?」

「あ、アヤノ様」




文乃を様付で呼んでるのか。それはともかく重度の人見知りだな。




「文乃! この子、ずっと隠れちゃってさ。友達になる方法ないかな?」




草部はこう見えて友達想いだ。普段はふざけてるがこういう珍しい一面を見せる時もある。




「友達かー。笑顔で話し掛ければ大丈夫だよ」

「それは文乃しか無理じゃない?まぁ、でもやってみるかな」




よしっ!と小さく言うと柱の後ろに隠れるミュミュの元に行く。




「…ミュミュちゃんだよね、私は草部美代。

友達になろっ」




ミュミュに差し出される手と満面の笑み。警戒心が解けたのか柱から身を乗り出すと恐る恐る美代の手を取った。




「よ、よろしくお願いしますミヨ様」

「んじゃこの流れで、俺は三浦鷹広。どうぞよろしくな」




鷹広が言い終わると肘で突いて来る。




「……俺は成瀬秋哉」

「タカヒロ様、アキチカ様。よろしくお願いします」




ようやく心を許したのかミュミュも笑うようになっていた。その事に文乃は特に嬉しそうだ。




「皆集まった所でお願いがあるの」

「…じ、実は私の弟が行方不明で。いっ、一緒に探して貰えませんか!」




ミュミュの弟が行方不明なのは文乃から聞いた。鷹広達も知ってる。それでも本人に言わせたのは仲良くなる為か。




「……」




全員の顔を見合う。そしてビクビクしているミュミュに告げる。




「勿論! 手伝うよ」

「あ…ありがとうございます!」




ようやく笑えるようになったミュミュだがコミュニケーションにはまだ馴れてないようだ。




「探すって言っても俺達には見当もつかないぞ」

「そうだね……ミュミュちゃん、何か手懸かりは無い?」

「手懸かりですか………弟が居なくなる前、私にこう言いました。「姉ちゃん! 幻の果実が実ってる所見付けたよ」と。それから私は仕事を終えてから弟を探したのですが…それきり」




幻の果実……この世界の食べ物か。




「その幻の果実って珍しいのか」

「はい。どこに実っているのか知る者は居ない、は黄金に輝き一口食べれば不老不死になれる。売れば一攫千金も夢じゃない。という言い伝えです」




これはまた凄い噂だな。黄金の果実なんて見た事ないぞ。




「ミュミュの弟は幻の果実が実ってる所を見付けて、それを誰かに見られてて連れ去られたのかも。これは誘拐だよ」

「文乃、少し落ち着け」




興奮気味に話す文乃を一先ず落ち着かせる。話をまとめるとこうだ。ミュミュの弟は黄金の果実を見付けてミュミュに話したが仕事中という事で弟は一人で行ってしまった。そして弟が行方不明になった。




「……文乃の言う通り誘拐かもしれないな」

「だね。この事、リリベルちゃんにも相談しない?

私達だけじゃちょっと無理あるし」

「美代の言う通りだな。行こう」




こうして俺達は王女であるリリベルに相談しようと部屋に向かう。










「……なるほど、ミュミュさんの弟さんが行方不明に。それは心配ですね……所でミュミュさんは一体何をしているのでしょう」




リリベルに全てを話したは良いがミュミュが跪いたまま喋ろうとしない。




「み、ミュミュちゃん」

「…私は本来ならば王女様にお会いできる身分ではありません…なので…私は」




すっかり忘れてたがリリベルはネフィヤ王国の王女だった。俺達だって普通なら会える身分じゃない。




「ミュミュさん、顔を上げて下さい………私は大切な人が亡くなる悲しみを知りました。ミュミュさんにはそんな思いをさせたくないのです」

「あ……」




リリベルの父親でもありネフィヤ王国の国王が殺された。そんな悲しみが分かるからこそのリリベルの言葉は俺の心にも突き刺さる。







『………げなさい…………秋哉…』








「…うっ」

「秋哉? 大丈夫?」




何だこの記憶。女が俺の名前を呼んでた…それだけなのに心が痛い。




「……もう大丈夫だ」

「…そっか…良かった」




ここでこれ以上文乃に心配かけたらダメだ。




「……王女様。失礼を承知でお願い申し上げます。どうか…どうか私の弟の捜索を手伝っては頂けませんか?」




「えぇ、勿論」

「あ…ありがとうございます!」




こうして俺達はミュミュの弟捜しを手伝う事になった。ミュミュの弟と幻の果実、【漆黒の翼(ダーク・ウィング)】が深く関係している事をまだ知らない。


















――――――――――――同時刻




城の地下牢に国王殺しの犯人である【漆黒の翼(ダーク・ウィング)】が居た。




「……クソッ。この俺が国王殺しだと? 誰だか知らない奴が罪を擦り付けやがって」




地下牢は陽射しが届かない為、湿気が凄い。薄暗くそれぞれ個室になっている。魔法を使えなくする特殊な手錠を嵌められ簡単に逃げ出せない。【漆黒の翼(ダーク・ウィング)】が座っているベットは清潔で真っ白だ。







キィン…ガシャン







ドアが開く音がしてそこから男が入って来た。城の者らしく、警備兵は敬礼した後出て行ってしまった。これで地下牢に居る者は二人だけとなった。




カツン、カツン、カツン、カツン




靴音が段々と近付いて来る。そして【漆黒の翼(ダーク・ウィング)】の牢屋の前で止まる。

三十代の軍服を着た大男が鋭い瞳で見下す。




「……アンタ、誰だ?」

「貴様に名乗る必要はない。国王殺しの罪で貴様に死刑を宣告する。実行日は早くて一週間以内だと思え」




顔色一つ変えない男に段々と苛立ちが湧いてくる。




「おい、待て! 俺は国王を殺してない。犯人は別に居るんだよ」

「………犯人は別に?」




歩き出そうとしていた足を止め、顔だけをこちらへ向ける。




「そうだ。犯人の目星は付いてるんだよ! だから俺を解放しろ」




カツン、カツン、カツン、カツン




男は再び【漆黒の翼(ダーク・ウィング)】の元へ戻る。それを見ると笑みがこぼれた。




「それは本当か?」

「…あぁ。犯人は革命ギルドの奴らだ」

「………」

「クッ、クッ、クッ。教えてやったんだ早く俺を解放しやがれ――――」





ドスッ






何が起こったのか分からない。ただ、何かが胸を貫く感触がした。恐る恐る自分の胸を触ってみる。そこには自分の胸を貫く刀が刺さっていた。




「なん……き、貴様は……誰…だ。ぐはっ」

「俺か? 俺はお前が言い当てた革命ギルドの者だが。残念だったな」

「こっ、のぉ……ゆる、さな…いぞ………」





バタンッ





男に伸ばした手が届く筈もなく、床に崩れ落ちた。刺さった刀を抜いて空中に一振りすると刀に付いていた血が壁に吹き飛んだ。




「………ふん、許さないか。

俺は革命の為なら憎まれたって構わない」




そう一人呟く男の瞳は悲しみで溢れていた。



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