第五話 ミュミュの事情
「おぉ! かっけぇー!!!」
「鷹広子供みたーい」
まぁ俺的には二人とも子供だけどな。
「確認出来ましたか?
何か分からない事があれば遠慮なく言って下さい」
「私、魔法攻撃力が高いんだけど魔法使いになろうかな」
「そうですね。治癒師が居れば心強いと思います」
「……お前はどうだった鷹広」
「ん、俺か?」
鷹広なら拳が似合いそうだ。
草部に聞いた話じゃ喧嘩が強いらしい。
「俺は攻撃力が高いからな……ただ、ちょっと分かんない事があってさ。妖刀使いって書いてあったんだよ」
妖刀…?
どこからそんな言葉が出てきたんだ?
「…妖刀なんて持ってるのか?」
「いや。剣道習ってたし少しは自信あるけど妖刀なんて気持ち悪いよな」
鷹広はそう言って苦笑いする。
俺もリリベルに聞いた方が良いのだろうか。俺の場合はチートだからな。
「それでは皆様、お部屋へご案内しますね」
「おいリリベル! お前がそこまでやる意味はないのではないか?」
「でもお兄様……私のせいで…」
またもやリリベルは瞳をうるうるさせる。するとグエンは慌て始める。
リリベルが一枚上手だったな。
「案内するだけだぞリリベル」
「はい、ありがとうございます」
応接室を出てしばらく赤い絨毯の上を進む。その間にも部屋は何個もあったが全て通り過ぎた。
一体どこまで行くつもりだ?
リリベルに着いて歩くとようやく見覚えのある場所へ着いた。
「リリベルちゃん……ここ最初の場所」
草部が言った通りだ。
確かに大きなドアも見える。俺達は金色の階段を下りて来たようだ。
「はい。最初に戻った方が近いんです」
金色の階段を下りてツルツルの床に下りる。そこから左右にある四つの部屋。
もしかすると…
「あの四つの部屋を皆様に使って貰おうと思うのですが如何でしょう」
俺達は全員で四人。ピッタリだ。
「部屋まで用意して貰ってありがとうね!」
「いえ。何かありましたら近くの者を呼んで下さいね。それでは失礼します」
リリベルはまだ仕事が残ってるのか。
王女も大変だな。
「男子は左の部屋ね。女子は右側使うから!
あ、入る時はちゃんとノックしてよね」
「お、おい美代」
「じゃあまた後で」
人の話を聞かない美代は自分で割り当てた部屋に入って行った。
「ふぅ……秋哉はどっち使う?」
「そうだな。俺はこっちにする」
ドアに近付いてみる。
古くは無いが豪華でもない。まぁ、別に気にしないが。
ガシャ
ドアを開けて中に入る。部屋の中はベットと冷蔵庫、トイレに風呂と最低限な家具しか無い。俺は殺風景でも大丈夫だ。
まだ一日なのに何週間も経ったように疲れた。
ベットに寝転がって天井を見る。急に眠気が襲う。
瞼が重い………
『…アキ』
「……!!」
瞼に笑ってる文乃の姿が映った。どうやら俺は文乃を気になってるらしい。
「文乃……無事で居てくれ」
「…へっ、クシュン!」
「うわっ」
ドワーフの少女、ミュミュと共に王都 ネフィヤを目指してただ真っ直ぐ森の中を歩いていた。
そんな中、私が突然くしゃみをしたもんだからミュミュがビックリしてしまった。
「ごめんね、ミュミュ。たぶんアキ達が私の噂をしてくれたんだよ」
「アヤノ様は何で仲間とはぐれちゃたの??」
うぅ。言い難い事を
「気付いたら私、ここに一人で居たんだよ。ミュミュはこんな所で何やってたの?」
質問が悪かったのかミュミュの表情が曇る。
「実は……行方不明になった弟を探してたの。三日前から探してるんだけど見つからなくて」
ミュミュの弟が行方不明。
凄く悲しいだろうな。
「ねぇ、ミュミュ。私の友達に再会出来たら皆に探して貰おうよ!」
「え……あ、ありがとう!
アヤノ様。見えました、あれがネフィヤだよ」
森に囲まれた中心に巨大な城と城下町が広がっている。私達はまだ崖道だけど…待っててね。
「ずいぶんデカイんだね」
「王都だから。私、あんまり魔法は得意じゃないけどアヤノ様……掴まって下さい」
「うん」
言われた通りミュミュに掴まる。
モフモフした感触。気持ち良い。
「ネフィヤへひとっ飛びだよ!」
自信満々に言うと今度は足元に魔法陣が現れた。ミュミュと文乃の体は魔法陣の光に包まれる。
キュイイイイィィィィィンン……
「……着きました、アヤノ様」
「んん…おぉ!」
さっきまで眺めているだけだったネフィヤだったが一瞬で到着してしまった。
「アヤノ様のお友達は恐らく城の中です。行きましょう」
「うん、行こう」
こうして二人は秋哉達と合流するべく、城へと向かうのだった。