第四十四話 イグルモア
「……さて、どう戦うか」
「イグルモアは確か身体の中にある核、つまり心臓を狙うニャ」
「イグルモア体内か。ちょうどいい……よし、俺はイグルモアの足止めをする。お前は体内の心臓を狙ってくれ…あとシュシュも助け出してくれ」
「………ニャ~」
キューティー・ラロスはどうも納得しない様子だ。
「…何か不満でも?」
「不満というか、ニャんで敵である私を信用するニャ? それがよく分からないニャ」
「………」
そう直接言われたら困ってしまう…。
理由を言うならやはり文乃だろう。アイツはキューティー・ラロスを信用した。だから俺も…。
「話しは後だ。キューティー・ラロス、イグルモアの中に入れるか?」
「入れるニャ」
「よし、じゃあ頼んだ」
「ニャ………あ、これが終わったら理由、言うんだニャ」
「…分った分った」
俺の返事にキューティー・ラロスは満足したのか、懐から何かを取り出した。ワイヤーだ。先端には何かに引っ掛けられるようになっている。
「それは?」
「ニャ? 私は怪盗だニャ。色々な道具を持ってても不思議じゃないニャ」
「確かにそうだな」
キューティー・ラロスはワイヤーを頭の上でビュンビュン振り回す。
「増援が来たら俺も後を追う。だからあまり無茶するな」
「……了解だニャ」
振り回したワイヤーをイグルモアの口目掛けて投げる。先端が上手く引っ掛かったのを確認して飛ぶ。ワイヤーが縮んでキューティー・ラロスは無事、侵入出来たようだ。
「…よし、増援が来るまで頑張るか」
イグルモアはゆっくりと、だが着実にネフィヤへ向かっていた。こんな巨大な怪物だ。ネフィヤを破壊するなんて容易いだろう。
「………まずは爆薬で試すか。『爆弾 10』」
エコーが響きイグルモアの上から直径六十センチの黒い玉が立て続けに現れる。そして、玉が一斉に爆発した。打ち上げ花火のような物凄い音と爆風。
「…っ、やったか!?」
期待を込めて砂煙が収まるのを待つ。やがて砂煙が薄れる。イグルモアは相変わらずネフィヤに向けてゆっくりと近付いている。
「…簡単には止まらないか………文乃はまだか!?」
『グオオオオオオオオオオオォォォン』
「な、何だ?」
さっきの爆撃が効いたのか、イグルモアは進むのを止めて俺の方へ向きを変える。どうやら俺を敵として認識したらしい。
「良いぞ、こっちだ」
『グオオオオオオオオオオオォォォン』
敵と認識されてる間はネフィヤは安全だ。だからと言っても長期戦になればまずいな…。
『グオオオオオオオオオオオ』
「なっ!」
イグルモアの口から光が集まっている。これは……光線というやつか!?
当たったら死ぬぞ!
『グオオオオオオオオオオオォォォ』
「っ、『盾!』」
光線と同時に叫ぶ。
凄まじい爆発と爆風が巻き起こる。




