第四十二話 洞窟の戦い 一
「……そ、そこをどいて!!」
「簡単に行かせると思うのかニャ? もっとも、あなたが行った所で何も出来ニャいけどニャ~」
確かに。
私じゃすぐやられちゃうよ……。
「でもっ! いつまでも守って貰ってばっかりじゃやだから!!」
「……ふん。やるニャ~」
「えっ」
キューティー・ラロスはそう言うと持っていた短剣をこっちに投げてきた。カランと洞窟内に乾いた音が響く。
「……どういうつもり?」
「決まってるニャ。こうして武器を与えて、平等にしてあげたニャ~」
どうしよ。目の前に落ちてる短剣を広えば、キューティー・ラロスと戦わなきゃいけない。でも、やっぱり怖い。
「拾うな文乃! 安全な場所に逃げろっ!!」
「っ、アキ!」
苺花ちゃんの攻撃を避けながら叫ぶ………ありがとうアキ、お陰で決心ついた。
「…なっ! お前人の話し、うおっ!」
「…………ふん。やっとその気になったようだニャ~」
床に落ちた短剣を拾う。ひんやりとした冷たさが手に伝わる。そんな私を見てキューティー・ラロスはニヤリと口角を上げた。
「…この私に勝てると思ってるのかニャ?」
「勿論。そのつもりだよ!」
「はっ、面白い。こっちから行くニャ~」
く、来る!
キューティー・ラロスは短剣を構え、一気に距離を縮めて来る。
「しゅ、盾華癒月」
「なにっ!」
思った通り。
私の力で攻撃を防がれたキューティー・ラロスは隙ができた。
「盾華癒月ーー攻撃モード 紅焔雷火!」
「う、ニャ~!!」
隙ができた瞬間を逃さず、盾華癒月の攻撃モード、紅焔雷火で倒した。
「あ、あの。痛かったよね、ごめん! 今傷癒すから待ってて!」
「………」
地面に大の字で横たわるキューティー・ラロスは傷たらけだ。手加減したつもりが、どうやらまだ練習が必要なようだ。
無言のキューティー・ラロスの横に座る。
「……なんで…」
「ん?」
「…なんで敵の傷を癒すニャ。癒して元気になったらまた狙われるかもしれニャいのに…」
顔を恥ずかしそうに逸らすキューティー・ラロスに何だか可愛さを感じてしまう。
「…うーん、なんでかな。私にも分かんないや……ごめんね」
「うぅ…しょ、しょうがないニャ~。治療させてやるニャ」
「ふふふ。ありがとう」
こっちは何とかなった。
アキ、治療が終わったら行くね!
「ったく、文乃の奴! うおっ」
「……………」
気が散って苺花って奴の攻撃をかわすので精一杯だった。だが、どうやら無事にキューティー・ラロスを倒したようだ。
「逃げてばかりで勝てると思うな、成瀬 秋哉」
「くっ」
何なんだあいつ。
俺の名前を知ってるわ、この苺花という少女の事も知ってるようだし。
「…………」
それにこの頭痛…。
まさか俺の記憶と関係あるのか?
「……やれ、苺花」
「…………はい」
マントの男がそう命令すると苺花はこつ然と目の前から姿を消した。
「アキ、上っ!」
「なに! うわっ」
上を見た瞬間、苺花が降ってきた。今の状況は地面に倒れた俺の上に苺花が乗ってる感じだ。冷静に説明してるがこれは危険な状況に違いない。
「…………死ね」
感情の籠ってない声で言うと苺花はナイフを目の前に高々と振り上げる。気付いた時には遅く、ナイフは俺に向かって振りおろされた。
グサッ…
ふわっといい匂いがして目を開ける。苺花はナイフを握りながら倒れていた。そしてナイフは俺の頬を掠めただけ。
「…お、お前…」
「……………」
『ーーーーーーーーーーーーちゃん』
「…ハッ!」
苺花が上半身を起こし、目が合った時。何かの映像が頭に浮かんだ。それは小さい子供が無邪気な笑顔を見せていた……文乃でも、草部でもない。誰だ?
「それより、『吹き飛べ!』」
「……!」
エコーが掛かり苺花の身体が宙を舞うが苺花は何ともなく着地した。マントの男の横に戻っていく。
「……あ。文乃……は?」
キューティー・ラロスの治療をしていた文乃の姿がない。
「アキ、私シュシュ助けるね!」
「は? お、おい文乃! 無茶するな!」
俺の声が聞こえてないのか、文乃は既に走り出している。
 




