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異世界ヒーローはチート使い  作者: みか
一章 異世界ヒーロー編
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第四十一話 二人きり






アジトの中は薄暗く、足元も不安定だ。俺達はラフットさんを先頭に歩いている。ラフットさんの手にはどこから持ってきたのは懐中電灯。



「なんかドキドキするね」

「全く…。いつ罠が発動するか分からないんだぞ」

「もぅ……分かってるよ〜。アキは分かってないなぁ」



文乃は何言ってるんだ?



「文乃さん! ぼ、僕もドキドキします! カチッ」

「………カチッ?」



スイッチを踏んだような音が静寂な洞窟内に響き渡る。見るとラビの右足の床が僅かに沈んでいた。今にも泣きそうな瞳で俺を見つめる。



「し、師匠〜〜」

「大丈夫だ、落ち着け! いいか絶対に動くなよ」



そう言うとラビはコク、コクと頷いた。それから間もなく、ゴゴゴゴと地響きが始まった。



「なっ! 地震?」

「わわわわ」

「くっ……大きいな」



罠を踏んだ直後の地響き…。嫌な予感しかしないのは俺だけじゃない筈だ。



ドドドドドド…



何かが転がる音…。

つまりは……鉄球だ!



「まずい。早く逃げるぞ!」

「逃げる? ってもラビはどうすんだ」

「し…師匠…」



ラビの事があったか…。



「ラビ、靴を脱げ。文乃は靴を押さえててくれ」

「分かった」



ラビは言われた通りゆっくりと靴を脱ぐ。文乃はちゃんと靴を押さえる。文乃に押さえさせた理由は重さだ。スイッチを踏んだまま靴だけ脱ぐと軽さで罠が発動してしまうかもしれない……よし、ラビは大丈夫だな。次は…



「……重りっ」



靴の中、重り。とイメージしながら言霊を唱えると文乃が「あっ!」と声を漏らした。その様子を見る限り成功したようだな。



「アキ、靴が重くなったよ!」

「あぁ。重りを入れたんだ…それより早く逃げよう」

「に、逃げるって…一体どうしたんだ兄ちゃん」

「鉄球か何かが転がってきてる筈です。早く逃げないと、ぺちゃんこですよ」

「わわわ」



転がる音がさっきより大分近く感じる。このままじゃ追い付かれて全員ぺちゃんこだ。



「あ! すぐそこに分かれ道があるぞ。そこまでなんとか持ち堪えるんだ」



分かれ道か…ラッキーだ。

すぐそこに迫った分かれ道だったが…




「きゃっーーーーーーーー」



すぐ後ろで短い文乃の悲鳴が聞こえた。すぐさま後ろを振り返ると落とし穴に落ちていく文乃が。自分でも驚くぐらい自然に手を伸ばしていた…。



「文乃つ!」

「あ、アキ」



手は届いたが重力には逆らえず、俺も穴に吸い込まれていく…。




「兄ちゃん! 嬢ちゃん!」

「し、師匠…」





落ちていく中、落下に備え文乃を抱き寄せる。このまま地面に叩きつけられれば確実に死ぬ。



「…っ、クッション!」



エコーが掛かるのと同時に地面に真っ白のデカイクッションが現れる。ふわっとしたクッションに包まれ、何とか生きながらえる事が出来た。



「…文乃、大丈夫か?」

「……アキ。うん、大丈夫」



見た所、本当に怪我は無さそうだ…良かった。

それにしても結構、深く落ちたみたいだ。チートを使っても上がれそうにない。



「道、続いてるね…」

「ここに居ても仕方無いな……行くか」



道は一方通行だ。

まるで誰かに誘われてるようで気味が悪い。



「そう言えば、通信機壊れてないか?」

「あ! そっか」



忘れてたのか…。

まぁ、いい。俺のは壊れてたが文乃の方が無事ならラフットさんと連絡取れる。



「あー…あの、アキ」

「ん?」

「…えへへ」



文乃が微笑みながらブレスレットを見せてくる。真ん中に付いてる通信機はヒビが入っていた。



「…文乃の方も壊れてたか」

「うん……ごめんね」

「いや、仕方無い。行くか」



上より薄暗い洞窟の中を二人で進んでいく。何故だろうか、二人きりになると胸が高鳴る。



「…アキ。アキの大切な人、助けられるといいね」

「…? あ、あぁ。いきなりどうしたんだ」

「ううん…何でも! あ、明かりだよ!」



誤魔化された気がするが…。

でもどうやら終着点に着いたようだ。












「…ふふ。待ってたニャ〜」



終着点。

そこに居たのは猫耳の少女とシュシュだった。猫耳の少女は黒い仮面を付けている。猫を擬人化した感じだ。そして隣にいるミュミュの弟、シュシュは生気のない瞳でどこかをジッと見ていた。



「シュシュ! ミュミュの所に帰ろう?」

「……………」

「…ふふ。無駄ニャ……さぁ、アナタのお客様が来たニャ〜」



キューティー・ラロスの後ろからマントを纏った男と、メイド服を着た少女が出てきた。メイド服の少女…。知ってる気がする。



「…お客、だと?」

「……フッ。貴様の相手は私ではない……行くのだ苺花」

「え! い、苺花?」



苺花って…アキの恋人の…。



メイド服の少女は一気に詰めてくる。

手には短剣を持っていて、それを俺目掛けて振り回してきた。



「…っ、お前は誰だ」

「…………」



何も喋らないか。

しかし、この頭痛……戦いにくい。



「アキっ!」

「文乃はそこにいろ」



どうやらこの苺花という少女は俺に狙いを定めているようだ。そっちの方がまだ安心だが…。











「…ど、どうしよ…」



アキは忘れてるけどあの苺花って子、絶対恋人だよね。恋人同士が戦うなんて辛いよ…。それにしても苺花ちゃん、アキに似てるような?



「ふん。もっと、もっとだ!! もっと私を楽しませろ」



あの人…。あの人が苺花ちゃんを操ってるのかな。

だとしたらシュシュもきっと…。



アキは苺花ちゃんと戦ってる……私は…私は。シュシュを助けるんだ!



「あ〜ら、どこ行くつもりかニャ……人間」

「…っ!」



やっぱり簡単には行かせてくれないか。

キューティー・ラロスは短剣をぺろっと舐めて微笑んだ。



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