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異世界ヒーローはチート使い  作者: みか
一章 異世界ヒーロー編
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第三話 発見!秋哉のチート






ここは城の中。

床には真っ赤なレッドカーペットが敷かれていて様々な所に豪華そうな花瓶や像が置かれている。割れば俺達の人生が終わるぐらいに高そうだ。

天井に飾られたシャンデリアが放つ光は眩しいと感じる程だ。




「ねぇ……私達、殺されちゃうのかな」




珍しく草部が弱気になっている。それ程に余裕が無いのだろう。実を言うと俺も余裕は無い。城に着くまで隙を見て逃げ出そうとしたが隙を作れず城まで来てしまった。




「…俺に聞くな」

「おい、何をごちゃごちゃ喋っている!」




一人の騎士が槍を俺に突き付ける。先端が俺の背中を見据えている。少しでも動けば刺されてしまうだろう。全身から汗が吹き出る。




「犯人を掴まえたようだな」




凛々しい声がして金色の階段から一人の青年がゆっくりと降りて来る。白を基調とした服に沢山の装飾が付いた服、赤いマントを翻し近くまでやって来る。金髪の少し癖毛のある長い髪を後ろで束ねている。背は高く俺と同じぐらいだろうか。顔立ちもよく、元居た世界ならモデルになれるだろう。ただ、少し残念なのが童顔という事だろうか。




「グエン様! 犯人を引っ捕らえました」

「うむ。御苦労」




グエンと呼ばれた青年は敬礼する騎士達をねぎらうと鋭い目で俺達を見据える。まるで憎しみが込もっているような、そんな目だ。




「処刑する前に一つだけ聞こう……我が父、ジェード・ネフィヤを何故殺したっ!」




憎しみを俺にぶつけるように睨まれる。あまりの剣幕にフリーズしてしまいそうになった。

こういうピンチな時、ヒーローならどうするだろうか?戦うか…いや、ヒーローは卑怯な事はしない。ならば…




「それは誤解だ! ヒーローの名に誓う。俺達は異世界から来たばかりなんだ」

「なっ……異世界…だと?」




グエンは少し戸惑っているようだ。だが俺はその隙を見逃さない。




「ヒーローは決して嘘をつかない……信じてくれ」

「グエン様! この者達は悪党です。耳を傾けてはいけません」




…チッ、騎士め。余計な事を言ってくれる。




「そうだった……私にはこのネフィヤ王国を守らなければいけない責任がある!

例えお前達が異世界という所から来たとしてもその言葉を信じられるような間柄ではない」

「くっ……だがっ」

「死刑だ!」








「―――お待ちくださいっ!」




まさに死の宣告を受けようとしていた時、グエンの声は少女の声に遮られた。声を発した少女もまた、金髪の長い髪を自然に揺らし慌てて来たのか息を切らしていた。




「リリベル!?

な、何故ここに居る」

「お兄様……これは誤解なのです。この方達は私が……私が召還したのです……この【異世界転移】という魔法で」




思っても見ない事実が分かった。俺達がこの世界に来たのはあのリリベルという少女のせいだった。




「魔力の少ないお前に【異世界転移】の魔法は使えない筈だ」

「……いいえ、お兄様。恐らく魔力が不安定な私のせいで歪みが発生し、召還魔法陣の出現場所が違ってしまったのです。この方達にお父様は殺せません」




よく分からないが俺達が犯人でない事を説明して貰えたようだ。これで一件落着、元の世界に帰れる。




「……私は何という間違えを………本当にすまなかった」








「きゃっ!」

「動くなっ」




短い悲鳴と男の怒号が聞こえる。すぐ後ろからだ。振り向くと騎士の一人が草部を人質に取っている。完全に油断してしまった。




「貴様ッ! どういうつもりだ。この私に命令するつもりか」

「フフッ……生憎、俺はこの国に使える騎士の一人じゃないんでな。俺は【漆黒の翼(ダーク・ウィング)】の一員なんでな」




やはりヒーローには敵だ。これは俺に草部を助けろという神の導きか?

だが、俺に力は無い……どうすればいい。




「まさか【漆黒の翼(ダーク・ウィング)】が紛れていたとは」

「フフッ…動くなよ? 動けばこの女を殺すぞ。いいな」




敵はゆっくりと後ずさる。このまま草部を連れて逃げるつもりだろう。そんな事はさせない。




「……おい、鷹広。力を貸せ」

「力? って秋哉まさか」




敵にバレないように鷹広に話すが鷹広の声が大きかったらしく、バレてしまった。




「おいそこ! 何喋っている…そうか、言い付けを破るつもりだな? それならこの女には死んで貰うか」

「なっ、止めろーー!!」




騎士はどこから用意したのか短剣を突き付ける。叫んで走る鷹広と騎士が短剣を振り上げるのはほぼ一緒だった。

このままでは草部が殺されてしまう。だが俺は無力だ………幼い頃から大好きだったヒーローの事を思い浮かべる。




『人は誰だって無力だ。でも人が勇気を出して挑めば無力では無くなるんだよ?

……人は諦めたら無力のままだ』



好きなヒーロー、異世界ヒーロー 赤レッド。

俺も赤レッドみたいなヒーローになりたい。









『………さぁ、勇気を出して』









「止めろッッ!!!!!!」




ありったけの思いを込めてそう叫ぶ。あまり叫んだ事のない俺だが自然に声が出た。





……カラン




声が響いたのとほぼ同時に、騎士の手に握られていた短剣が手から滑り落ちた。


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