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異世界ヒーローはチート使い  作者: みか
一章 異世界ヒーロー編
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第二十六話 異変






「おはよー」

「あ、おはよう文乃!」




朝。

いつも通りに起きた私はレストランに居た。レストランには美代ちゃんがくつろいでいる。




「あれ……三浦君は……まだ寝てるの?」




ふと思った事を聞いてみた。

すると美代ちゃんは困ったような顔をして厨房を指差す。




「…厨房?」

「そう。ラフットさんに料理を教えて貰うんだって…ずっと篭ってるよ……で、秋哉はまだ寝てるの?」

「あはは……うん」




そう言うと美代ちゃんは悪い顔をして私の腕を引っ張って二階に向かう。着いたのはアキの部屋だ。




「み、美代ちゃん? アキの部屋で何するの」

「うふふ。秋哉には水を掛けられたり、タライを落とされたりしたからね。仕返しよ。し・か・え・し」




しーと言う仕草をして笑った。

その様子にやっぱり可愛いなぁと思う。




慣れたようにドアを開けて案外普通に入れる。

美代ちゃんの後ろを歩きながら私も中に入った。アキは寝息を立ててスヤスヤ眠っている。




「…美代ちゃん、やっぱり止めた方が良いんじゃないかな? アキに見付かったらまた水掛けられちゃうよ」

「うっさいよ文乃。それに、嫌な事まで思い出させないでよ……ま、少し驚かせるだ・け」




またしーと言う仕草をして毛布を掴む美代ちゃん。

そしてせーの、と言ってから毛布を一気にめくった。でも様子がおかしい。固まってる。




「どうしたの……あっ!」




私も近付いて見てみるとベッドにはアキとその隣りにはラビの姿が。いつこんなに仲良くなったんだろう。そんな事を思いながらいつも通りアキを起こす。




「アキー、起きろー」




何回か繰り返し言ってみると「うっ」と小さく声を漏らして目を開く。パチパチと瞬きを数回するとダルそうに上半身を起こす。




「……文乃か………何で草部まで居るんだ?」

「ギクッ! べっ、別に私が居たって良いでしょ。それより何で同じベッドにラビが居るのよ!」




美代ちゃん…ちょっと話しを逸らした。




「…仕方ないだろ。ラビがずっと俺を見てて……あれじゃ眠れない」




ラビちゃん、相変わらずアキにベッタリなんだ。

でも仲良さそう。




「……ラビちゃん、まだ寝てるね」

「あぁ……最近睡眠不足だったらしいからな。着替えるからさっさと出てけ」




「なによー」と文句を言う美代ちゃんを連れて私達は部屋を出る。












「…行ったか。全く…」




準備が終わって部屋を出ようとした時、ラビに目が行った。起こした方が良いのか……起こすか?でも寝顔は気持ち良さそうで起こしにくい。




悩んだ末、寝かせとく事にした。








「痛っ、痛いデスよ〜!」




レストランに行くとラルの泣き叫ぶ声が聞こえた。きっと盗み食いがバレてグリグリされてるんだな。




「これは何の騒ぎだ?」

「あ、アキ! なんかね、ラルちゃんが夜に盗み食いしてたんだって」




やっぱりな…。

結局、バレたのか。




「ははっ……でもああ見えてラルとラフットさん、仲良いよな」

「…ああ」

「…ったく。ラルの奴」

「お疲れ様ですラフットさん」




やれやれと呟きながら来たラフットさんにエルボーが声を掛ける。




「全くだ。やっとラビの視線から解放されたと思ったらラルが残ってたぜ」




ラフットさんが可哀想だな。

と言うかラルってこんな性格だったか?




「むーー。痛かったデスよ…………んっ!」




相変わらずのうさ耳パーカーを着るラルは頭を摩りながら涙目で来た。でも何やら様子がおかしい。




「なんだ? 今度はなんだラル。また悪い事でもしたのか」

「ち、ち、違うデス! じょ、上空に何か強力な魔力を感じるデスよ」




両耳を押さえ、目を閉じて神経を研ぎ澄ませている。珍しく真剣な面持ちで嘘を付いてるようには見えない。




「上空…という事は……すぐ上かっ!」




エルボーがそう言うのと同時に船内が大きく揺れた。テーブルやイスは左右に移動し、シャンデリアも大きく揺れる。俺達もどこか掴める所に掴んで揺れに耐える。




「…し、師匠? この騒ぎは一体何なんですか」




声が聞こえた方を見ると階段の手すりに掴まるラビの姿が見えた。




「ラビ、ずっと手すりに掴まっていろっ! 離すんじゃないぞ」

「うぅ……は、はいっ」




揺れが一層に激しくなる。

すると今度は船内が少し傾きだした。厨房の道具やテーブル、イスが下に滑り落ちる。と、イスの一つが運悪く飛行艇のドアを開けてしまった。イスはそのまま外に落ちたが今はそれどころじゃない。




「きゃあっ…か、風が」




開かれたドアから容赦なく風が入って来る。空中なだけあって風が強く、台風並みだ。やっと掴まってる俺達にはキツすぎる。




「うぅ……し、師匠……もぅ……手が…うわぁ!」




小さい体には耐えらなかった。

ラビは強風で手を離してしまう。その結果、外に向かって真っ逆さまに落ちる。




「ら、ラビっ!」




俺が飛び込もうと悩んでる時、いち早くラフットが今掴んでる手を離した。そしてそのままラフットがラビを抱き締める状態で外に放り出されてしまった。




「……………チッ」




このまま二人が地面に落ちたら即死だ。

そうさせない為に……俺が行くっ!




怖いがそう言ってられない。

手を離すと吸い寄せられるように外に放り出された。背中で文乃の声が聞こえるけど今は二人だ。




「っ、二人は………居たっ!」




外はやはり風が強い。

だからか落ちる速度も遅かった。頑張ってラフットさんとラビに接触する。




「……『デカイパラシュート!』」




そう叫ぶと一瞬、上に引っ張られる感じがして落ちる速度がゆっくりになった。




そしてどんどん遠ざかっていく飛行艇を見て俺は文乃の事を考えていた。




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