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異世界ヒーローはチート使い  作者: みか
一章 異世界ヒーロー編
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第二十五話 ラビ






ラビの視線でほとんど料理に手を付けられずに夕御飯は終わってしまった。夕御飯が終わるとテーブルを片付けて今度は大きい地図を広げる。




「何してるのエルボー?」

「見て分かる通り、地図だ。お前らにはちょっと地理を勉強してもらう」




そう言って地図に赤いペンで印を付ける。赤丸を付けた場所には「ネフィヤ」と書かれていた。地図を見るとあまり大きくない世界だ。「ネフィヤ」の周りには森で囲まれ、その部分は「帰らずの森」と書かれている。森の近くには山があった。ネフィヤがあるこの大陸がリリベルの言ってた「グラシアス大陸」だろう。




「この世界、『イアダム』は大きく四つの大陸に分かれてる。一つはネフィヤがあるグラシアス大陸、二つ目はボルオンがあるヒーグラント大陸、三つ目は魔国マーラがあるアクダス大陸。そして四つ目は精霊が住むイグネシア大陸となってる」




地図では四つの大陸が四つ横に二つずつ並んでいるように見える。




「でも、何でボルオンには船からじゃないと行けないの?」

「それは徒歩で行くには時間が掛かるし、それぞれの大陸には橋が架かってるんだがそこに魔国マーラの者が居座ってるらしくてな」




だから徒歩じゃなく、船か。

それにしても何で魔国マーラはそんな所に居座ってるんだ?




「大雑把に説明すると以上だ。じゃ、明日の朝にはボルオンに着く…今日は早く寝ろ」




言葉通り大雑把な説明を受けて俺達は各自、自分の部屋に戻って休む事にした。














「………………んん……」




今は何時だろうか。

不意に目を覚ましてしまった。空に居るからだろうか、寒い。お陰でトイレが近い。




トイレに行こうと上半身を起こすとどこからか視線を感じた。よく見るとドアの前が光っている。いや、性格には目が光っていた。




「ひ、ひぃ!! でっ、でたぁ!」

「師匠…僕です」




勢い余ってベッドから落ちた俺は聞き覚えのある声で冷静さを取り戻す。電気を付けるとやっぱりラビだった。




「……………やっぱりお前か…何でここに居る。ここは俺の部屋だぞ」




ラビは白い水玉の寝巻きを着ている。

正座でジーっと俺を見ていたらしい。見られてたと考えると背筋が凍る。




「…僕はただ、師匠をお守りしようと」

「何から守るんだ!」




いかん、思わずツッコンでしまった。

しかし本当に何から守ろうとしていたんだ。




「……お前、眠くないのか?」

「大丈夫です!」




子供は元気だなと思いながら俺はトイレに行く為ラビに退いて貰って部屋を出る。廊下は暗い。物音一つもしないせいか恐怖が倍増する。




「………やっぱり我慢すれば良かったか」

「ダメです。我慢はお体に毒ですよ」

「うわあっ!………なんだ、ラビか。というかトイレまで付いて来る気か」




部屋で大人しく待ってると思ったら俺の後ろに居た。これは誰でもビビる。




「僕はどんな些細な事でも見逃したくないので!」




そう自信満々に言うラビだがハッキリ言って迷惑だ。と、そう思っても言う事は出来ない。




トイレは一階の厨房の横にあるらしい。

階段を降りて厨房を通り過ぎようとした時、厨房から明かりが漏れてるいるのが見えた。こんな時間に仕込みか…と思ったがそれなら厨房の電気が点いてる筈だ。




「………誰か居るのか?」




少し中を覗き込みながらボリュームを下げてそう言ってみると厨房からガシャンという音がした。




「…………………なんだ、ラルか」




音がして走ると冷蔵庫を漁るラルの姿があった。

ラルは口にソーセージを咥えながら目があって固まっている。




「な、な、な、何故にアキチカさんが居るデスか!

それにラビまで居やがるデス」

「つまみ食い…ラル、師匠に怒られるよ?」




俺の後ろからひょいと顔を出して言うラビにラルは「うるさいデス」とハムを投げた。




「…というか何でつまみ食いを?」

「それは、少しお腹が空いたのデスよ。そう言うアキチカさんとラビは仲良くつまみ食いデスか?」

「お前と一緒にすんな……俺は単にトイレだ。ラビは、くっ付いて来た」




トイレに来ただけでつまみ食いに来たと勘違いされるとは……心外だ。




「じゃあな……つまみ食い、程々にしろよ」

「はいデスよ」




こうしてつまみ食いのラルと分かれてトイレに向かった。トイレに入る前に、念の為に釘を刺しておく。




「……ラビ、中に入って来るなよ」

「了解です、師匠!」




意外に簡単に承諾したラビを残して一人、トイレへ。途中で入って来るんじゃないかと心配したが入って来なかった。トイレから出ると正座をしたラビが微笑む。




それから部屋に戻るまで一言も話さず、俺はベッドに横になる。でもラビは同じようにドアの前に正座をして座っていた。




「………おい、ラビ。寒くないのか?」

「僕はだっ、大丈夫です……クシュン」




全然大丈夫じゃないだろ。

このまま放っておくのもあれだ。




「寒いなら自分の部屋に戻ったらどうだ?」

「………嫌です。自分の部屋に戻るぐらいなら僕は師匠の側に居ます」




もしかしたらラビは……一人が怖いのかもしれない。

俺も昔はそうだった。何の記憶も無く、夜寝るのも怖くて文乃や文乃の両親に心配掛けた。ラビはその頃の俺と同じなのかもしれない。それなら、




「……一緒に寝るか?」

「!!!」




暗くて表情は見えないが驚いてるだろう。

でも、でもと小声でそんな声が聞こえる。




「………来い、ラビ」

「師匠…………は、はい」




ラビはやっと動き出した。

ベッドが軽く軋む。ラビが布団に潜り込む。暖かい人の温もりは安心するんだよな。




「暖かいです……師匠」




それだけ言うと静かになった。その後、規則正しい寝息が聞こえた。本当はかなり眠かったらしいな。




ラビが女だったら犯罪だな。と思いながら、隣に温もりを感じながら俺は目を閉じる。


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