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異世界ヒーローはチート使い  作者: みか
一章 異世界ヒーロー編
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第二十四話 料理







レストランに行くと既に料理が作ってあった。肉の丸焼きが真ん中に置いてある。存在感があるな…。何の肉か分からないが、キツネ色にこんがり仕上がっている。

続いてスープ。コーンスープみたいな色をしたスープだ。中には肉かよく分からないが細かく四角に切られた食材が入っている。後は、色んな野菜が入っているとみられる野菜炒めだ。何故か元の世界と料理が似てる。




「美味そー! これ、ラルが作ったのか?」

「違うデス。これは料理人が作ったデスよ……ほら、厨房に居やがるデス」




そう笑顔で言うラルの後ろには人の影がある。一度振り返ったラルは強張ったまま、正面を向いた。




「コラァ、ラル! 居やがるとは何だその口の聞き方は!」

「痛っ、痛いデスよ! 痛いッ、デス〜! ごっ、ごめんなさいデス」




料理人の格好をした少し若い青年はラルの左右の頭を両手でグリグリとする。痛くて涙を流すラルは謝るとようやく解放して貰った。




「相変わらずラルには厳しいですね」

「そうか?」




「そうデス」と呟いたラルはもう一度グリグリを受けていた。それはそうと、エルボーの話し方だと料理人とは仲が良さそうだ。




「……お、すまなかったな。俺は料理人のラフット・アークスだ。こう見えても二十の後半だ。で、あっちに隠れてる奴は弟子のラビ・シュザァートと言う」




自分とここに居ない弟子を紹介するとラフットは厨房の方から「出て来い」と呼んだ。しばらくすると厨房の方からちょこんと耳が見えた。




「悪いな、ラビは記憶喪失でシャイなんだ。何なら俺が無理矢理にでも連れて来てやるが…」

「だっ、大丈夫です」




無理矢理、連れて来たら大変な事になりそうだ。

ラビは無視して良いとラフットは言うがやりにくい。それはラビという人物がこっちを凝視するからだ。




(……食べにくいな)




食べてる最中もこっちを凝視して来る為、食が進まない。文乃達も食べにくそうだ。




「ラビちゃんは記憶喪失なんだよね、ならアキと一緒だし仲良くなれるんじゃない?」




場の雰囲気に耐えかねた文乃が口走る。俺の事情を知っている鷹広と美代は良い案だと言うが知らないラフットとエルボーは驚いている。




「おぉ、それは良い案だな。同じ境遇を持ってればお互い仲良くなれるんじゃないか?」

「そうそう! ついでにその暗〜い性格も直して貰えば笑」




何なんだ…。

これは…新種のイジメか何かか?そして俺は暗くはない。クールだと言って欲しい。




「………俺にどうしろと言うんだ」

「まずはラビと話して来たらどうだ?」




ラフットが助け船か分からないがアドバイスを貰った。人見知りの奴とどう話せば良いんだ。

……まぁ、とにかく話してみるか。




「………ハァ」




席を立つと両手で手を合わせて「ごめんね」と言う文乃を見た。謝るなら最初からやらないで欲しい…そう思いながら俺は席を立つ。




文乃達が見守る中、厨房まで進むとようやくラビという奴の姿が見えた。後ろからクスクスと笑う草部と鷹広の声が聞こえた。




「……『草部と鷹広に、小さめのタライ』」




あいつらに聞こえないように小声で言う。そして次の瞬間、ガァンという鈍い音と二人の悶絶が聞こえた。

無事に当たったのを確認してラビに近付く。




ラビにはキツネの耳があった。黄色くて小さい耳だ。そして髪は短く、後ろで結んでいる。まだ子供らしい顔立ちに潤んでる瞳。すぐにでも泣き出しそうだ。




「………お、お兄ちゃんも僕といっ、一緒なの?」




顔を覗かせて話すラビ。今、性別が分かった。どうやら男らしい。一緒…という事は記憶喪失がか?




「…あぁ」

「それじゃあ、お兄ちゃんは…魔法使い?」




答えた後にすぐ様質問。しかも意味不明な質問だ。

どこを見て魔法使いだと思ったんだ。




「俺のどこを見て、そう思った」

「……さ、さっき……魔法でタライ…出した」




ボソボソ言うラビの言葉をどうにか聞いてようやく理解した。ラビは俺のチートを魔法だと思ったのか。




「あれは魔法じゃない……チートという奴だ」

「チート…………お兄ちゃん!」




次のラビの行動は今見てた中で一度の速さだ。

隠れてた厨房から何の迷いもなく飛び出して俺の目の前で土下座をしたのだ。




「おっ、おい」

「お兄ちゃん……いえ、師匠! 僕を弟子にして下さい。僕を……強くして下さい!」




いきなり師匠と呼ばれた挙句、弟子にしてくれと土下座までした。そんな事をいきなり言われても困る。師匠になるつもりも無いし弟子を取るぐらいまで強くもない。




「ったく、ラビの奴……今度は兄ちゃんに弟子入り懇願か」




ラフットが意味ありげな事を言った。

今度()……確かにそう言った。




「どういう意味ですか?」

「こいつ、見込んだ奴に弟子入り懇願すんだ。俺の場合は料理…で兄ちゃんの場合は…強さ、か?」




強さを見込まれたのは素直に嬉しい。

でも弟子を取ろうとは思えない。




「そんな……俺は」

「言っとくが、俺は兄ちゃんと同じように弟子を取るつもりは更々無かった…でも、ラビの奴こう見えてもしつこくて……ストーカーのように着いてきて見てるんだよ……で、精神的におかしくなりそうだったから諦めた。でもこれでラビとはおさらばだな」




最後に「諦めろ」と言って笑った。

冗談じゃない……弟子を取ったら色々と面倒くさい。




「ラフット師匠……僕はまだ未熟です。でもまだ僕は師匠の弟子です!」

「………ほらな、諦めな」




もはやラフットは諦めムードだ。でも俺は諦めない。弟子なんか俺には必要ない。




「……悪いな、ラビ。俺はラフットさんとは違うんだ。俺に弟子は必要ない…今のままラフットさんの所で料理を勉強してろ」




言った……ラビは?

振り返りざま、チラッと見ると口角を上げて笑っていた。いや、リアルに怖い。ヤバイ奴に関わってしまった。




「…ま、俺も大丈夫だと安心したが…三日だ。俺は三日で耐えられなくなった……ま、頑張れ」




何が頑張れだ。

俺はずっと逃げ切ってやるぜ。




振り返りざまのラビの顔を思い出してしまったがそれを振り切って席に着いた。



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