第十五話 帰らずの森
「まぁ、それはさて置き。お前さん達は依頼で来たんだったなぁ」
「はい。確か依頼は四葉のクローバーを探すんでしたよね?でも何で四葉のクローバーなんですか」
「ふん、お前達みたいな子供に私の偉大な研究が分かるものか」
依頼を確認した草部だが依頼者に馬鹿にされ今にも襲い掛かりそうだったが間一髪で鷹広が止めた。
それにしてもこの依頼者が変わり者と呼ばれる理由が分かる気がする。
「…ふん………ん?お前さんは確か………秋哉と言ったか?」
「…そうですが」
「……そうか、やはりな。道理で似てると思ったわい」
「…はぁ。そうですか」
似てる?
誰に似てると言うんだ。元の世界ならともかく、こっちの世界ではありえない。それに心なしか依頼者の表情がとても悲しそうだ。
「コホン。それで博士、その四葉のクローバーはどこにあるんです?」
「あぁ、お前達は帰らずの森というのは知っているか」
こっちの世界に来たばかりの俺達は十分に地形を把握している訳じゃないし帰らずの森という言葉すら聞いた事がない。
「その顔は知らないようだな…仕方ない、これを見るんだ」
博士は巨大なモニターを操作すると上の画面が切り替わり何やら地図が映し出された。
「これは…」
「ネフィヤ周辺だな」
画面には大きな城と森しかない。城は俺達が居るネフィヤで森はギルド精霊の長靴がある。ネフィヤ周辺はほとんど森のようだ。
「そうだ。これはエルボーの言う通りネフィヤ周辺の地図だ…そして大半を占める森に帰らずの森と呼ばれる区域がある」
なるほど。
森全部が帰らずの森という事じゃないんだな。
「その森で探すのか」
「そうだ。最低でも一人一つは持って来て貰うぞ」
一人一つか。
でも依頼者が言うんだから文句は言えないな。
研究所を後にした俺達は城の外に出て街の外に出る。街の外は左右森に囲まれていた。地形も分からないまま入れば迷ってしまいそうだ。
「ネフィヤを出るとこんな風に森に囲まれてる訳だ。で、ここから丁度西側に行くと帰らずの森と呼ばれる区域に行けるぞ」
西側を見ても見渡す限り森だ。
「エルボー君、帰らずの森って何でそう呼ばれてるの?」
お、良い事を言ったぞ文乃。
それは俺も気になった。
「昔からの言い伝えだと、その森に入ると自らの過去に囚われ魅入られ本来の目的を忘れてしまい帰れなくなるという話だ」
「自らの過去に囚われる?」
過去…か。
まさかな、俺は大丈夫だ。
「さぁな。森で暮らしてた俺達ですら帰らずの森に近付かないようにしてたんだ…実際に入ってみないと分からない
」
「そっか。でも行ってみようよ!ここで立ち止まってても仕方ないし」
「ま、そうだな。じゃあついて来い」
俺達はそれぞれ胸の奥に不安を抱えたまま帰らずの森と呼
ばれる区域に向かうのだった。




