プロローグ
「なっ! き、貴様。裏切るつもりか」
とある部屋の隅。立派な服を着た頭に王冠を付けた王様がそう怒鳴る。頭に血が上っているのか、顔が真っ赤だ。
「クックックッ……ご冗談を。先に裏切ったのは
貴方の方ですよ」
一方で王様に剣を向ける者は黒いフードで顔を隠し、素顔は見えないが笑っているようにも見える。
フードの者はジリジリと王様を隅へ追いやっていく。
「ぐうぅぅ……貴様、さては魔国の者か?偵察に来たのだろう!?」
「……さぁ、どうでしょう? でもこれから消える人に教えても意味はない。そうですよね」
いよいよ壁に追いやられてしまった。王様は恥も覚悟で魔の手から逃げようと必死に逃げる。その姿はもはや王様とは思えないような酷い有り様だ。
「これが一国の王とはね……ガッカリですよ。
ねぇ………聞いてますか?」
「ヒッ!」
這いつくばって逃げようとする王様の上にフードの者が乗っかる。そして未だ逃げ出そうとする王様を強引に仰向けにした。
「ゆ、許してくれっ……ヒッ!」
命乞いをする王様だがフードの者は持っていた剣を大きく振り上げるのを見て小さな悲鳴をあげる。
「……残される姫様と王子が気がかりだと思うけど諦めて下さいね」
「く…おのれぇ………魔国め。
裏切りおったな」
「………」
王様の最期の言葉を聞くと振り上げていた剣を勢いよく突き刺した。血が様々に飛び散るがフードの者は気にせず死体から剣を抜き去る。
「………ハァ」
そう溜め息を洩らすと窓の外を見た。
赤い血のような満月がこの状況を指しているようで不気味に感じた。
「さてと。後は異世界人に頑張って貰わなきゃね」
赤い月を見ながら微笑む。
これから起こるであろう改革に期待を込めて。