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銀河コンビニぎゃらくしぃ  作者: てらだ
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出港準備

 雄大はその後、二日間かけて民間武装商船「ぎゃらくしぃ本店」のスペックを魚住と牛島、そして典型的な火星連合のフライトスーツに身を包んだラフタ・ク・ラフダという灰色の髪と瞳をした無口な青年整備士からレクチャーを受けていた。

 一口に火星連合と言っても、がめつい商売人と無駄話好きで有名な西部ウエストマーチャントと、潔癖症で無口そして極端な省エネと禁欲生活で有名な東部イーストマーチャントに大別される。

 ラフタはイーストマーチャントの出身らしく必要最低限の事しか喋らない。普通、商船に乗っている火星人はウエストと相場が決まっているものだが、と雄大は物珍しげにラフタを見るがラフタの方はあまり雄大に興味は無いようだった。

 そう言えば初日に食堂で火星出身ぽい感じの男を見掛けたがあれがこのラフタだったのだろう。

 話をしていてわかったがラフタは部分的にはAライセンス相当のスキルを有しているが操舵には積極的に携わる気はないらしい。故にBBライセンスのマーガレットと航海補助ロボットがぎゃらくしぃを飛ばしていたようだ。

 ちなみに。

 長距離貨物船のドライバーは荷や航路によって必要なライセンスがCC~Bまで上下する、おおすみまるクラスの客船や武装商船、警備会社の巡洋艦でBライセンス以上が必要となる。大体のパイロットはBまでの取得で満足するが宇宙軍内部で出世するにはAライセンス以上を取得しておくと艦隊勤務年数が軽減され有利になる。巨大航宙企業の銀河公社ですらA以上を持っているパイロットは30名ほどしかいない、しかも大抵はベテランになってから取得するのだ。雄大の年齢でAAAライセンスを持っているのがどれほど無駄に凄いかが伺い知れる。結婚適齢期に入った公社の美人受付嬢・都ノ城麻里ならずともその資格の持つエリート出世コースの匂いにメロメロになろうというものだ。

 マーガレットの持っているBBも十分に誇れる資格である。BとBBの間にある大きな壁はワープドライブのマニュアル操作に加えて亜空間航法や次元潜航理論などの難解な座学であり、普通に宇宙船を飛ばしている分には知る必要のない知識であり、相当な時間をかけて大学院レベルの専門的な勉強をしなければならない。

 AAAまでいくと惑星や恒星の構造とテラフォーミング、小惑星からの資源採取、外宇宙の未知の生命体についての最新学説、エーテル帆船理論、聖樹船学会への参加など最早パイロットというより宇宙開発技術者の領域に踏み込んでしまっている。

(オヤジが軍での出世に有利だから取れ、というから苦労して取ったはいいけど……よくよく考えたらAAまでで良かったような気がする。地球に生命をもたらしたのは外宇宙からやってきた聖樹船であるとかなんとか、少しオカルト入った学会の会員なんてちょっと気が滅入るよ)


 さて長距離航海中の操舵のシフトは雄大とマーガレット、そしてロボットの三交代制、ロボットがメインの時はサポートとしてラフタがブリッジに詰めるようである。ラフタは専門的な知識が所々抜け落ちているだけなので勉強して試験を受ければAライセンスが取れそうなほど宇宙船について詳しく航路についても色々と察しが良い。整備士としての優秀さは訓練航海や軍港での研修でベテラン整備士の仕事を見てきた雄大が保証する。

 何か深刻なトラブルがあった時に感情的かつ若過ぎるマーガレットだけだと多少頼り無いがラフタのような落ち着いていて無駄口を叩かない相方がいると心強い。ただ無口過ぎて少しコミュニケーション面で難がある。

 ラフタが「雄大」とファーストネームで呼ぶので雄大の方も「ラフタ」と呼び捨てにするべきかものすごく悩んだが結局ラフダさん、でお茶をにごすことにした。彼は鼻から下をすっぽり覆う大きな襟がついた服を着ているため口元が全く見えないし、眉毛も鬱陶しい前髪に隠れているので表情がわかりにくい。馴れ馴れしくし過ぎて機嫌を損ねるのは良くないが向こうが心を開いているのに此方がよそよそしいのも考えものだ。

 魚住に後から聞いた話だと年の頃が近い男性クルーが来てくれてかなり喜んでいたらしく、彼にしてはついつい興奮して喋り過ぎて、呼び捨てにしたのを雄大が怒ってないかかなり気にしていたそうだ。

 そうらしいが、雄大からみると素っ気ないどころかちょっとした軽口を叩いても全く興味を示してくれなかった。なかなかコミュニケーションをとるのは難しい内気系男子のようだ。


 いくらロボットのサポートがあるとはいえ比較的大型の巡洋艦であるぎゃらくしぃ号を少ない人員で動かすのはかなり骨が折れそうだ。マーガレットは口だけというわけではなく、支店が出来て魚住が本店から出て行った後のブリッジクルーの不足……雄大が来るまでマーガレットの踏ん張りでなんとかやりくりしてきたのだろうと雄大はその並大抵ではない苦労をおもんばかる。

(しかし。あの小娘がこうまんちきでムカつくクソ女で、この職場における俺の最大の敵であることには変わりはない)


 魚住からのメールがPPに流れてくる。支店が足で稼いできた情報を元に本店が動くシステムで、支店は人材を探しながら様々な情報を収集しているらしい。

「えーと……」

 魚住とユイ皇女が決めた次の営業航海はアラミス星系からサターンベースを通って木星にいたるというあまり気乗りのしないルートだった。アラミス星系を中心に商売をするのかと思っていたがそこは読みがはずれた。

 まあ勝手知ったる太陽系航路、楽が出来そうだと雄大は前向きに考える事にした

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