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銀河コンビニぎゃらくしぃ  作者: てらだ
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ブリジット対マルタ騎士団

「団長、エンデミオンの大将聞いてるか? こちらフランコ、宮殿の調査を終了したぜ。英国王室には無許可の禁忌技術(タブー)は無いね。綺麗なものさ」

 マルタ騎士団のフランコは塔の天辺からロンドンの夜景を眺めた。迷彩を解除すると異形が姿を見せる。

 ライトグリーンのスカウティングアーマー『ヴェルデ・アルマデュラ』は独特の形状をしていた。騎士が着用していたような板金鎧に無数の吸盤のような軟質の輪っかが付着している。三角形のヘルメットと腰の辺りから生えている尻尾のようなロボットアームと相まって直立歩行するカメレオンのような外観をしている。

『そうか、よくやったフランコ』

 騎士団長エンデミオンは抑揚のない合成音声で部下の労をねぎらった。

「じゃあ引き続き警護任務に移るか、団長もこっちにきて俺達と合流して休憩でもしてくれ」

『その必要はない』

「ん、アレッシオの警護はもうしなくていいのか?」

『アレ、シオ? いいかねフランコ、あの方はもはや陽気な修道僧アレッシオ・フランチェスコーニではない、即位されて聖人となられた。公的にはイノケンティウス18世ローマ教皇聖下、だ』

「はいはいイノケンねイノケン、でそのイノケン聖下さまのお身辺警護はおやりにならなくても良くなったのでございますかよ」

 今夜のバッキンガム宮殿の外環はテランガードの戦車と対空砲、内環は英国王室の近衛兵ロイヤルホースガードと、対テロチームのMI-5、応援のMI-6諜報員などなど、衛兵とエージェントで溢れかえっていた。ホールの中にも諜報員達が変装した紳士淑女が大勢紛れ込んでおり、厨房に至っては本物のシェフよりエージェントの方が多い有り様だった。

『この目で確認するまで信用はしていなかったが、この警護体制ならば教皇聖下を任せても良いだろう』

 本日の式典の警備はエンデミオンから見てもほぼ完璧に近い万全の体制と言える。この囲みを破れるのは唯一、マルタ騎士団だけだろう。

「──地球閥の威信回復をはかるための外交イベントだからな、気合いも入ってるってワケだ」

『彼等の邪魔になる前に引き上げた方が気が利いているかもな──私も別に用事が出来たことだし……』

 フランコは大きく舌打ちした。

「チッ! ユイ・ファルシナ暗殺計画やらマグバレッジJr.が地球閥の幹部級を粛清するかも、なんていうから! わざわざ英国くんだりまで出張ってきたのによう。消えたまま帰るのもつまんねぇ、土産の一つでも欲しいもんだ」

『そういうだろうと思ってな、狩りの獲物を見つけておいた。この狩りを成功させることが諸君らに与えられる新しい任務(クエスト)だ』

「そりゃあいい! 獲物は何だ?」

『木星帝国の用心棒、ブリジット。どのような理屈かは知らないがヴェルデ・アルマデュアの迷彩が通じない、先ほど遭遇した際に此方を視認したような動きを見せた』

「へえ! あの昼間暴れてた赤毛の女、気にはなってたがやっぱりミュータントか?」

『わからん。だが常人の領域を遥かに凌駕する超感知能力(ハイパーセンス)を持っているのは確かだ。未登録の禁忌技術を使用した強化人間かサイボーグ、優性遺伝子人間、の亜種、の疑いがある。各種スキャンデータに加え細胞のサンプル、出来れば血液を採取したい──』

 フランコと呼ばれた中年男は下卑た笑いを浮かべた。

「その任務(ミッショーネ)、喜んで拝領する、へへ」

『中庭に誘い込むから上手くやってくれ。私はそのまま離脱する』

「大将は狩りに参加しないのか」

『ああ、私はとある用事でこれから月に向かわねばならない』

「月だって? 何でまた──冗談だろ」

 聞き間違いかと思うほど突飛な場所だ、フランコが混乱するのも無理はない。

『────フ、ラ、ン、コ?』

 ゆっくりと名前を呼ばれたベテラン団員は軽く身震いした、エンデミオンの合成音声には感情が入り込む余地などないはずなのだが、不思議と冬のロンドンの外気より冷たい感じがした。

「月か、お月様ね。了解だ大将、ごゆっくり」

『数日あけることになるが、ゆっくりするつもりはない』

 フランコはそれ以上の詮索を止めた。エンデミオンは重要な任務にあたる時は騎士たちを連れずに一人で行動することがある、自分達のような足手纏いを庇う手間を省くためだ。エンデミオンが話したくないことは詮索してはならないし、彼を疑ってもいけない。それがマルタ騎士団暗黙のルール。

 通話は唐突に切れる。

「大将どうしたって?」

「──月に行くんだとよ」

「わけわかんねえな」

「相変わらずの秘密主義だ」

 マルタ騎士団の三人は顔を見合わせ小首を傾げた。

「まあ、これでしばらくは羽根を伸ばせるってもんだ……野郎ども、指定されたポイントで獲物を待ち構えようや」

「ミケーレ了解」

「マルチェロ了解……」

 フェイスガードが降りて密閉状態になるとヴェルデ・アルマデュラの関節やそこらかしこのリング状のパーツの隙間から透明な糸のような空気の膜が放出される。その薄い膜は周囲の色彩情報を取り込んで不格好な鎧武者を擬似的な透明人間へと変貌させていった。



「くそっ、鼻詰まりじゃなきゃなぁ……匂いで追えるんだけどなぁ」

 ブリジットはクンクン、と鼻をひくつかせて天井付近の残り香に近い匂いを探した。

 仮にブリジットの鼻の調子が百パーセント万全だったとしても正確に追跡出来たかどうかは微妙なところだ。

 何故なら宮殿の中は様々な強い香りで溢れかえっているからだ。鼻腔をくすぐる料理の匂いは言うに及ばず御婦人方のまとった主張の強い香水、そして一人一人の参加者が放つごく僅かな体臭までもエンデミオンが残した匂いを追うのには大きな障害となったことだろう。

「ま、まったくわかんない……」

 ブリジットがウロウロしていると前方からやってきた着飾った老婦人の一団がブリジットを見て軽い悲鳴を上げる。

(こ、この方──昼間の)

(銃で撃っても倒れない──)

(木星帝国の怪物!)

「あのさぁ、おばさんたち何か天井這い回ってる変なやつ見なかった? こっちの方に来たと思うんだけども」

「ひっ……」

「近寄らないでちょうだいバケモノ!」

 老婦人達は先を争うように血相を変えて駆け出した。

「なんだよもう、オバケ探してるのはあたしの方なのに」

 廊下をうろついていると首筋に冷たい風が当たる、ごく僅かな変化だがどこかで窓か扉が開いて外気が入ってきたことを示していた。見失っていた手掛かりが向こうから勝手に転がり込んでくる。

(バカなヤツ! このリンジーちゃんの追跡能力を舐めたらいかんよ!)

 ブリジットはその空気の流れの元を辿ると、すぐに開け放たれたスイングドアを発見する。

 宮殿の中庭はちょっとした森林公園のようになっており、様々な種類の花や常緑樹が計算された間隔でもって配置されていた。

(あれ──なんか増えた)

 ブリジットの耳がわずかな音を拾う。

(大きいのが、2匹? そして小さいのが1、2──)

 自分が追っていた獲物は仲間と合流した、そしておそらく自分はこの庭園に誘い込まれた、ということをワイズ伯爵の弟子は瞬時に理解した──頭ではなく感覚で。

(こいつら……暗殺者か何か? まさかユイ様を狙ってるんじゃないだろうな?)

 ブリジットは手近な庭石を二つ拾いあげると敢えて見当違いの方向に歩を進める。何者かの気配は一定の距離を保ちながらブリジットを囲み、観察している。

 急に片膝を付くように身をかがめると、身体を捻り砲丸投げの要領で後方、斜め30°ほど上空の空間へと右手に持った庭石を投擲した。続けざまに大きく回転しながら左手で植え込み目掛けて水平に平たい庭石を投擲する。

 バガン、グワシャ! と景気の良い音がすると何も無かったはずの空間から突然火花が散り石と一緒に石畳に落下する。茂みの方からも小さな明かりと白煙、断末魔のようなモーターの駆動音がする。

 近寄って仕留めた獲物を確認するとサッカーボール程の大きさの球体型ドローンに庭石が深くめり込んでいた。

「あっ、ハズレ引いちゃった」

 ブリジットは大きな方の獲物を狙ったつもりだったが初手で仕留められたのはどうやらオマケの無人偵察機だったらしい。石畳の上に転がるドローンを踏みつけて粉砕する。

 彼女を取り囲んでいた気配が俄かに動く速度を増した。

(本体が来たな?)

 ブリジットは舌を出して唇を濡らした。わずかな風の流れの変化を少しでも敏感に感じるために。

 そして全身の感覚を研ぎ澄まして来るべき襲撃に備えた。


 ◆


 フランコ、ミケーレ、マルチェロ。マルタ騎士団の三人はコムリンクで会話しながらドローンが命懸けで撮影した映像を何度も繰り返し再生していた。

「なんだこれ……冗談だろ。造園用の石で装甲ドローンを破壊しやがった」

「アーミーの迎撃ミサイルよりも精度高そう」

 衝撃を逸らすのに適した形状である球体のステルスドローン『ルナ』に石をめり込せるのは至難の技だ、真ん中に当てないと衝撃が受け流されてしまう。たとえルナが空気の膜をまとっておらずライフルで狙ったのだとしてもそうそうど真ん中、ピンポイントに命中するものではない。浮遊しているドローンの装甲を撃ち抜くには何より一定以上の速度が必要だ。そういう意味で赤毛の大女の投石は射程距離以外の威力、初速、命中精度の三点において対ドローン用の小型ミサイル発射システム『ロングボウ』並みの高性能だと言える。

「完全に見えている、というわけでもないらしいが……」

「目測で投擲するより精確に命中させる? まぐれ当たりにしちゃ出来過ぎだ、あの女、なんかの探知機でも内蔵してんの?」

 破壊されたルナもヴェルデ・アーマーもそこらに出回ってる熱源探知機には引っかからない。マルタ騎士団の装備を上回るセンサーは『異端』として教会が制限しているのだから当然だ。

「……何にせよまともじゃねえ、おいミケーレ分析結果はまだか」

 ミケーレは冷や汗をかきながらブリジットのスキャンデータを分析する。

「せ、センサーの類、サイバネティクス・オペレーションの痕跡は認められず──ワオ! フランコ、こいつマジで俺達と同じ普通の人間(ヒューマン)だぞ、驚いたな」

「まあサイボーグじゃないのならヴェルデの対人兵器でも何とかなるだろうぜ。俺が仕掛けたら三秒で左からミケーレ、一秒おいて右からマルチェロが順番に攻撃だ」

 不可視の騎士達が辺境生まれの天然児を包囲、最適のアタックポジションを確保する。

「さあ巨乳(テットーネ)ちゃん、大人しくネンネしような」

 フランコは植え込みの影からブリジットの正面に飛び出すと電磁ネットを射出した。

 その瞬間、フランコ目掛けて巨大な鉢植えが飛んできた。それは電磁ネットを巻き込みながら此方に戻ってくる。

「うぉっ!?」

 枝葉が軽く焼けバチバチと光りを放った。鉢植えと捕縛用のネットは砂利と土とを撒き散らしながらフランコに覆い被さる。

 ブリジットの蹴飛ばした大きな鉢植えは電磁ネットから逃れるだけでなく格好の目眩ましの役割も果たしている。

「失敗した、ミケーレ、マルチェロ、頼む!」

「フランコ!?」

 思わず飛び出したミケーレの足元の砂利が動く、その細かい変化をブリジットは見逃さなかった。

 斜め後方から襲いかかる予定だったミケーレは反対に脚取りのタックルを受けていた。

(なんで足の位置が正確にわかる?)

 ひっくり返されたミケーレの胸にブリジット渾身の踏みつけが突き刺さる。ヴェルデアーマーは装着者を守ったがその代わりに迷彩の機能を失った。

「あれ、四つ目のヤツじゃないのか」

「──!」

 ヴェルデ・アルマデュラのヘルメット、カメレオンの口が開いて隠し武器のスタンロッドが飛び出した。ブリジットは身をよじってそれを交わすと右足でミケーレの頭部に強烈な蹴りを入れた。合金製のヘルメットに窪みが出来るほどの衝撃、麻痺(スタン)させるつもりが反対にミケーレの方が意識を失ってしまった。

「あっぶねえなこいつ、内蔵型の武器か──」

 油断したブリジットの後ろから三人目のマルチェロが襲いかかる。ブリジットの背中に組み付くと羽交い締めにして自由を奪おうとする。

「わっ!? なんだ? 三人もいたのかよ!?」

「コイツ! 大人しくしろ!」

 ヴェルデの腰から伸びるロボットアーム型の尻尾がブリジットの股の間から伸びる。その先端、瘤状の球体が開いて中から注射針とレーザーメスが出てきた。レーザーメスは器用に動いてブリジットのスーツの上着を裁断する。

「下手に動くと怪我するぜ」

「ちょっ──な、なにこれ! あんたたちもしかしてプロの痴漢?」

 ブリジットが血相を変えて大声を出した。

「動くな、血をもらうだけだ」

「痴漢、変態! 人でなし!」

 注射針がブリジットの腕に迫る。

「変態じゃねえ、人聞きの悪い!」

 土を払い落としながらフランコがブリジットの正面にやってくる。手間かけさせやがって、と呟きながらミケーレの状態を確認する。

「マルチェロ、黙らせろ」

 マルチェロのヴェルデからカメレオンの舌が伸びてブリジットの肩にスタンロッドが押し付けられる。電流が流れるたびにブリジットは甲高い悲鳴を上げる。数回の通電の後、ブリジットは力無くグッタリとうなだれて動かなくなってしまった。

「ようやく動かなくなったな……ミケーレは?」

「無事なことは無事だろうが──コンピュータの簡易診断だとこりゃ首をヤッてるな、鞭打ち症だろうぜ」

「おお怖い! まったくよ、とんでもない女だぜ」

 マルチェロは気絶したブリジットから血液を抜き取るとグッタリとした彼女を石畳の上に横たえた。

「サンプル採取……完了だ」

「なあマルチェロ──コイツ結構ソソる身体してると思わないか、へへ。五分、いや十分……二十分ほど楽しんでいこうぜ」

「は? 本気かよおいブラザー? マジか」

 武装化を解除してヴェルデを脱ぎ始めるフランコにマルチェロは呆れ果てたような声を上げて非難した。

「任務中だぞ!」

「大丈夫だって。宮殿の警護してる連中の監視ドローンは俺らが掌握してるし──スタンロッド当ててる時の悲鳴、めちゃくちゃセクシーで可愛い声だったろ、なんかもうたまんねえのよ、へへ」

「女の悲鳴で興奮するとかサディストかよ。これじゃホントに痴漢しに来たみたいだ」

「言ってろよ、お前後悔すんなよ?」

 フランコはアンダースーツ姿になると両手の指をわきわきと動かしてブリジットにのし掛かるとタンクトップを剥ぐ。

「すげえ、おいマルチェロ見ろよこれ、この胸すげえぞ、マジではちきれそう!」

「天下のマルタ騎士団が情けない──見なかったことにしてやるよ」

 マルチェロはフランコに背を向ける。煙草を取り出すとロボットアームのレーザーメスを使って器用に火を点けた。

「おい見ろって、こいつこうやって大人しくしてるとかなりの上玉だぞ。こりゃあエンデミオンの大将に感謝しなくちゃな」

「俺はね、女はしおらしいのが好みなの。そんなアマゾネスだかバケモノだか相手によくそんな気になるなフランコ……さっさと終わらせろよ、ミケーレも運ばなきゃならんし、何かの間違いで警備に見つかったらどうする。俺達はハイテク強姦魔として指名手配だぞ?」

「んな殺生なこと言うなよ、こんなの見せられて今更やめられっか。それにな、これはミケーレの敵討ちでもあるんだぞ、うん」

 フランコはブリジットのショーツを乱暴に引き裂く。

「テットーネ、俺のボインちゃん! 待ってな、今からたっぷり可愛がって気持ち良く昇天させてやるから」

 マルタ騎士団は修道士の中で素行に問題がある人間がぶち込まれる更生施設という側面も持っている。禁欲的で堅苦しい生活を送っているため、こういう理性のタガが外れた時の反動も激しい。

「何が敵討ちだよまったく──団長や副団長が居ないとこれだからなぁ」

 兄弟子にあたるフランコは女絡みの醜聞があまりにも多い。こういう暴走も取り立てて珍しくはないが──マルチェロは渋い顔で煙を吐き出す。

「いただきまーす──おっ、おっ……」

 フランコの声の調子が変わり大人しくなった。

 あまりにも静かなのを訝しんだマルチェロは横目でチラリとフランコの方を見ると兄弟子の足がバタバタと激しく動いている。

「ん?」

 違和感を感じたマルチェロが身体ごと向き直ると──素っ裸に剥かれた赤毛の女の太腿がフランコの頭を挟み込んでギリギリと締め上げている真っ最中だった。恥ずかしそうに歯を喰いしばっていた女が「えい!」と声を上げるとフランコの首のあたりからコキャッと小気味良い音がする。

「わっ、わっ? おまえ?」

 マルチェロが慌てて左腕の電磁ネットを射出すると、女はフランコを身代わりにしてその場から脱出した。兄弟子の身体に電流が流れてビクビクと激しく痙攣する。

「ひ、ひえええ? お、俺がやったんじゃないぞフランコ?」

 フランコの顔は弛み、だらしなく涎を垂らしていた。マルチェロの声などもはや聞こえてはいないだろう。

「こ、このクソアマ~! 狸寝入りしてやがったのか」

「何度も何度もスタンガン押し付けやがってこのやろう! やっぱり婦女暴行目的だったんじゃないか変態トリオ! ぜっ……たい! 許さないかんな!」

 ブリジットは羞恥に頬を染め上げ内股になって前を隠す。

「と、トリオにするなよ、変態はソイツだけだ!」

 

 不意にスイングドアの向こうから数人の足音が聞こえてくる。


 マルチェロがコントロールを奪った監視カメラの映像を出すと、少し前にブリジットとすれ違った老婦人達が、2人のロイヤルホースガードを連れてこちらへ向かって来ている。

「げえっ!?」

 大変不味いことになってしまった。

 一般招待客にこの状況を見咎められればマルタ騎士団がユイ皇女の側近に暴行を働いたことが明るみになってしまう。騎士団と教会の名誉が丸潰れになるばかりか、外交問題に発展しかねない。

 マルチェロはアイクリック入力で対装甲兵装を呼び出した。

「グレネード・セットアップ!」

 背中からスライドしたグレネードボム射出口がブリジットと脱ぎ捨てられたフランコのヴェルデアーマーを狙う。

「えっ?」

 シュコン、シュコン、と続けざまにグレネードが四発。次々と爆発して石畳を吹き飛ばした。内の一発は煙幕弾だったようで中庭には爆風と共に濃い黒煙が吹き荒れた。

「クソっ、最悪だ……!」

 マルチェロは補助アームと腰の尻尾状のアームを駆使して意識の無いフランコとミケーレの二人を抱え上げて跳躍した。宮殿の壁に吸盤で張り付き、這うように壁を登っていく。

「ま、待て! そうだこの石で──」

 ブリジットが庭石を投げて追い打ちをかけようとしたところにスイングドアが開いてロイヤルホースガードの青年達が中庭に飛び込んでくる。

「うわっ?」

「んマァ! 信じられない! なんて破廉恥な!」

 素っ裸のブリジットを見た衛兵と老婦人達は驚いて顔を強ばらせた。

「な、何だよあんたたち?」

 ブリジットは突然わいて出て来た衛兵達にびっくりして石を取り落とすと胸を隠して内股でしゃがみ込んだ。

「き、キミィ! 女王陛下の庭園で何をしているのかね!」

「近付いてくんなバカ! エッチ!」

「あ? いやスマン? じゃなくてなんで裸なのか説明しなさい!」

「み、見るな変態! ムッツリ! あっちいけ!」

「先ほどの爆発はキミの仕業か!?」

「こんなカッコで爆弾持ってるワケないだろ!」

 ホースガード達が近寄ろうとするとブリジットは手当たり次第に物を投げて妨害した。

 この不毛なやり取りはしばらく続いたようでグレネードの爆音はメインホールにいる招待客達には余興の花火が手違いで先に打ち上がったものである、と伝えられた。


 




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