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【AI】KU-BOU ~あなたの望み叶えます~  作者: 葉柚


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2/17


 しとしとと雨が降っている。もう一週間ほど雨が続いている。

 3月だというのに冬用のコートが手放せそうにない。


 「まったく。嫌な雨だ。それもこれも、すべてはあのいけ好かない部下の所為だ。あいつが来てからすべてがうまくいかなくなった。」


 男は真っ黒な傘を差しながら独り言ちた。

 歩くたびに跳ね上がる雨がスーツの裾を濡らす。男はその感覚に眉をひそめた。

 男はこの不快な状況を一刻も早く脱したくて、家路を急いだ。

 家に帰れば男の完璧な妻が出迎えてくれるだろう。

 【佐々木】と書かれた表札がかかっている家のドアの前に男が立つと、中からドアが開けられた。

 家の中の暖かい空気と暖かな光が男に安心感を与えた。

 

「お帰りなさい。今日は雨だから寒かったでしょう。お風呂を沸かしてあります。お食事の前にお風呂に入りますか?」


 男の妻が柔和な笑みを浮かべながら男の帰りを迎える。


「『今日は』じゃないだろう。『今日も』雨だ。ああ、そうだな。風呂に入ってあったまってくる。すっかり冷え切ってしまったからな。」


 男は雨でしとったコートを妻に渡すと、風呂場に向かって一直線に歩いて行く。男から受け取ったコートを見て、妻は一瞬だけ表情を消した。

 男は妻を顧みることなく、風呂場に行くとおもむろに来ていたスーツを脱ぎ捨て、さっさと浴槽に浸かる。

 男の体重で溢れ出したお湯がザバァーっと勢いよく溢れた。


「ふぅ……。」


 お湯の温度は男が一番心地よいと思う温度に設定されていた。

 冷え切っていた男の身体が湯につかることで次第に温まっていく。

 身体が温まっていくと次第に頭も動き出した。


「そういえば、華蘭(からん)のやつ、なんで俺が帰ってきたのがわかったんだ?」


 男が帰宅した際の妻である華蘭の様子に引っかかりを感じた。

 男は華蘭に何時に帰るとも言った覚えがないし、チャイムを鳴らした覚えがない。

 いつもなら男がチャイムを鳴らしてから華蘭がドアを開けるが、今日に限っては男がドアの前にたった瞬間にドアが開いた。

 まるで男が帰ってきたのがわかっていたかのように。


「まぁ、いいか。」


 男は華蘭の出迎えが不満だったわけではない。むしろ、完璧なタイミングでの出迎えにいたく感動をしていた。

 やっと華蘭が自分の思い通りに動いたような気がしたのだ。


「あなた、着替えをおいておきますね。」


「ああ。」


 男が身体を洗っていると、華蘭が男の着替えを持って脱衣場にやってきた。そして、脱ぎ捨てられているスーツを見て眉をしかめた。けれど、華蘭は何も言わずしっとりと濡れているスーツを手に脱衣場を後にする。

 男はなにも気にせずに風呂を満喫した。

アルファポリスにて先行公開中です。

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