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「部長っ!?……華蘭さん、ちょっとここにいてください。私は中の様子を確認してきます。」
久保は華蘭を外壁に寄りかからせると、家の中へと足を踏み入れた。
家の中は昼間だというのに照明がついていないからか薄暗いが、意外にも綺麗に整理整頓されており、ゴミが散らかっている様子もない。
嫌な臭いも家の中からは感じなかったが、もわっとした湿った空気が久保の身体にまとわりつく。
思わず久保はブルっと身もだえ自分の身体をギュッと抱きしめた。
久保は目を大きく見開きながら、家の中を隅々まで確認するようにあちこちに視線をさ迷わせる。
家の中は薄暗いだけで、異様に静まり返っている。久保の呼吸する音だけが大きく響き渡った。
二階に続く階段を一歩一歩登っていく。頭は興奮してさえわたっているものの、なぜか足に砂袋が巻き付いているかのようにひどく重い。
募る好奇心を抑え、一つだけドアが開けっ放しになっている部屋の中を覗き込んだ。
「……ひっ。」
久保は声にならない声を上げた。喉の奥がひりつき、胃の中から酸っぱいものが競りあがってきて、思わず両手で口を押えた。
「あ……あ……あ……。」
安原が部屋の入り口付近の壁にもたれ掛かるようにして、床に座り込んでいた。その右手は震えながら一手を指し示している。
その手が指し示す方向には、パソコンの光に照らされて薄っすらと青みを帯びている男の姿があった。
男は血走った目を大きく見開いて壊れた絡繰人形のようにケタケタと笑っている。その瞳はどこを見ているのだろうか。
頬はコケ、ところどころに血と思われる赤が散っている。
男の指先からは血がポタポタと床に落ちて、シミを作っていた。
ギョロリと男が久保をーー久保の後ろをみてニチャリと口を開けて笑った。




