転生前に過酷すぎる!!
僕、峯岸義和は今、人生の分け目にいると言っても過言ではない。
なぜなら今日、僕は、なんと社内で1番可愛いと言われる、愛理さんに昼食に誘われたからだ。
今日は朝から髪の毛を整えて、香水もつけてきたぜ。
「あ、愛理さん。き、今日はなんで僕を?」
目の前で小さなラーメンを啜る愛理さんに勇気を出して聞いてみる。
「え〜? それ聞くんですか〜?」
すると愛理さんは、バッと僕に近づいて耳元で囁いた。
「もちろん、先輩のことが好きだからですよ」
え!? ま、まじで?
これはきた、23歳にして、ついにモテ期が…!
「へ、へえ」
僕は自分の太ももをつねり、なんとか平静を装った。
愛理さんのやけにキラキラした瞳が僕をのぞいた。
「それじゃあそろそろお会計にしましょう」
「あ、うん」
ここは僕が奢らないといけないやつだよな。
「ここは出すよ」
「え! うれしいぃー!」
僕が会計の人を呼ぶと、やけに早く出てきて値札表をくれた。
なんかこの人ゴツいな。
「ええーと〜、1000万ねー……1000万!?」
あー、これぼったくりバーってやつだ。いやラーメン屋だからぼったくりラーか?
ここ愛理さんの行きつけって聞いてたんだけどな。ていうか1000万はぼったくりすぎだろ!!
「あ、あ、愛理さん?」
「あは、あはははは!!
あんたなんか、本気で好きになったと思ったの?」
愛理は堂々とは足を机に乗っけると、大きく笑った。
「ほら早く払えよ!!」
そのまま自分の食べていたラーメンを、僕に向かって足で蹴った。
あつっ!
くそ、なんで僕がこんな思いしなきゃいけないんだ。
まあ所詮ただのぼったくりだし、警察に通報でもすれば解決かな。
「うるさいんだよ、クソ女」
僕はラーメンの皿を優しく投げ返した。
普段は温厚な僕だけど、こういう時はキレたふりとかしとかないと、舐められるからね。
「いた……あんたふざけんじゃないわよぉ!!」
女はキレて立ち上がり、僕の胸ぐらを掴んだ。
お、結構パワーあるなぁ。
とりあえず顔にビンタしておいた。
「あんたぁ! あんたねぇ〜!! もういいわ、こいつやっちゃって」
女は顔面を崩壊させながら、感極まった様子で叫んだ。
やべ、こっちのでかいのはさすがに無理だ。
まあがんばって、警察に通報したりすれば……。
「ぐがぁ!!」
は?
なんだこれ、僕の……血?
「あ、あ……」
「あんたが悪いのよ! この私に逆らったんだからね」
頭を踏みつけられた。
ただ、そんなのはどうでもよかった。
なぜなら僕のお腹にはナイフが刺さっていたからだ。
「うあぁぁ!! 痛い、痛いぃ!!」
「おら、情けない!」
そこからはもうよく覚えていない。
頭を蹴られ、追加で刺され、罵倒され、謝らされ、死ぬまでそんな感じだったと思う。
あのクソ女だけは、いつか絶対復讐してやりたいな。
*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*
「目覚めるのです」
女の人の声。
目を開けると、そこは車の音も、上司の怒鳴り声もしない、辺り一面真っ白い空間だった。
「こ、ここは?」
「と、その前にあなた、大丈夫ですか?」
そのまるで天使のような女の人は、心配そうな様子でしゃがみこみ、僕の顔を覗き込んだ。
「まあ、あんな拷問みたいなことされたら、そんな顔になりますよね」
そうだ、そうだった。
あのクズ野郎に僕はボコボコにされたんだった。
「ああ、まあ、そうだね」
その女の人は大丈夫そうですね、と言うと少し残念そうな顔をして立ち上がった。
なんなんだこの人。
「それじゃあそろそろ本題に入りましょうか。なんとなく察していると思いますけど、今からあなたには異世界へ転生してもらいます」
「え? えぇ!?」
異世界、転生……。
「訳あって私たち神々は新たな世界、ヴァサーニスティリアを創造しました。そこであなたには、はじめてのプレイヤーとして、転生してほしいのです」
「ま、まてまて。まずまずなんで僕なの? そこら辺にいるただのオタクだよ」
すると女は一瞬ニヤリと気持ち悪く笑い、すぐに戻した。
「それはお教えできません」
「話を続けて」
女はこくりと頷いた。
「その世界は魔物の蔓延る危険な世界。魔法技術が普及しており、文明発展度はバラバラ。そんな世界の大貴族の1人、オカネ・モーチ。オカネ家の第三子として転生させましょう」
おおー! めっちゃ金持ってそうな名前!
「と、特別な力とかは?」
「もちろん、とてつもない加護を与えます」
一瞬この人がめっちゃ悪い顔したように見えたけど、気のせいか…。
「やった! 早く転生したいなぁ!」
「いいでしょう。長々と説明しても時間の無駄ですからね。それでは目をつぶって3つ数えてください」
三つ数える? まあいいか。
「3、2、1」
僕は勢い良く目を開けた。
「ここが異世界!」
そこは美しい草原も、美人なお母さんも居なく、真っ暗闇だった。
え、異世界は…?
「うっせーぞ!!」
その時頭を硬いもので、思いっきり打たれた。
僕はその場で倒れ、ガタガタ揺れている中で意識を失った。




