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寒さで目が覚めた。
朝露で体全体が湿っており、そのせいで体温が急激に奪われている。
寒さで強張った体を伸びをして解し、取り敢えず体を温める為にルミナスはその場でスクワットを繰り返す事にした。
移動した方が生産性が高いし、ここで無為に体力を消耗するのが得策では無いのは分かっているが、濃い霧が立ち込める森の中を何事も無く歩ける自信が彼女には無かった。
体がある程度温まってきては休み、また寒くなってはスクワットをするのを何度も繰り返していく内に少しずつ霧は薄くなり、やがて体の湿り気が乾く頃には完全に晴れていた。
「よし、出発よ!」
一先ず目指すは人里だ。
そう意気込んで歩き出してから早数時間、歩けども歩けども他の人の姿も誰かが通った様な痕跡も見えない。
イノシシから逃げる為に闇雲に走ったのが駄目だった。
ルミナスは完全に森の中で遭難していた。
幸いにもアケビのなっている木を途中で見つけたので、ありがたく収穫させて頂いた。
数個残して後は収穫してドレスを割いて作った布で包んで即席の鞄にし、腰に縛り付けて持ち歩いている。
ちゃんとした鞄も無いので袋でもあれば良いのだが無い物は仕方が無い。
これで明日までは凌げると安堵しているとお馴染みの音と共に『餓死エンドその1を回避しました∇』の文字が表示された。
(死亡エンドのレパートリーを増やさないで欲しい……)
げんなりとしながら文字を見つめ、溜息を一つ吐いてから気を取り直して歩き出す。
勘を頼りに道なき道を歩き時には獣道を進んでいると遠くからザアザアと音が聞こえ、その音を耳にしたルミナスは直ぐにその方向へと走り出した。
木が唐突に開け、走った先には予想通り川が流れていた。
「やったー!漸く水が飲めるわ!!」
周囲に危険な動物が居ないか確かめてから水辺に近付く。
両手に水を掬い、喉を潤すと久々に飲めた水の余りの美味しさに涙が出そうになる。
道中に見つけた蔓で縛った髪を後ろへと払い、川に顔を突っ込んで心行くまで喉を動かす。
「ぷっはぁぁぁぁ!生き返ったぁぁぁ!」
お腹がタプタプになるまで水を飲み、ついでに顔を洗うとかなりスッキリした。
毛布の裾で顔を拭い、ルミナスはこのまま川に沿って歩く事に決める。
川があるのであればその近くには人の営みがある物だ。
闇雲に森の中を彷徨うよりも人里に辿り着く可能性はぐんと高くなる。
漸く見えた希望の光に頑張るぞと意気込んでいるとそれを邪魔するかの様にけたたましい不安を感じさせる様な音がルミナスを襲った。
「うわぁぁぁ!!何?何?何???!!!」
思わず耳を押さえてしゃがみ込むルミナスの目の前に『緊急クエストが発生しました∇』と文字が現れる。
「はあ?緊急クエスト?」
ルミナスの声に反応する様に新たな文字が出現する。
『緊急クエスト:ジョンを救え』
「ジョン?いや、誰よそれ」
村どころかここには私しかいないんだけど、と思いながら周囲を見回すと目の前の川を人が流れて行った。
「ジョーーーーーン!!???」
毛布とサンダルを外し、慌てて川へ飛び込む。
ルミナスは元々、川の近くにある村で育った。
子供達の夏場の遊び場はもっぱら川で、そのお陰で多少動き辛さはあるもののドレスであろうが難なく川で泳ぐ事ができ、意識を失っている推定ジョンであろう人物を抱えて浅瀬へと上がる事が出来た。
濡れたドレスとジョン(仮)の体が重い。
ぜえはあと肩で息をしながら何とか寝転がっても死なない浅瀬まで川からジョン(仮)を引き上げ、彼の呼吸を確認すると浅いながらもきちんと息を吸っている。
「ちょっと、大丈夫?」
声を掛けながら頬を叩いていると、ジョン(仮)の意識が戻った。
「……めがみ、さま……?」
「あら、嬉しい事言ってくれるじゃない。残念ながら人間よ」
「ここ、は……?」
「さあ?何処かの森の中よ」
ぼんやりとしているジョン(仮)を取り敢えず横に向けて回復姿勢を取らせ、脱ぎ捨てたサンダルと毛布を回収しに戻る。
腰に付けていたアケビは残念ながら即席バッグと一緒に流されてしまったのでせめてこれ以上持ち物を無くさない様にしたい。
ドレスの裾を絞りながらジョン(仮)の元に戻るとどうやら意識がはっきりした様で彼もシャツを脱いで水を絞っていた。
戻って来たルミナスに対して彼は深く頭を下げる。
「俺はジョンと言います、この度は助けて頂きありがとうございました」
どうやら彼がジョンで合っていたらしい。
「どういたしまして、ジョンは何で川を流れていたわけ?」
「その、狩りの途中で足を滑らせて崖から落ちたんです」
「狩り?て事は近くに住んでいるの?」
「はい」
ルミナスはジョンの手をがっしりと掴んだ。
「住んでいる所に案内して!」
✻✻✻
「ジョン!無事だったか!」
「ああ、この人が助けてくれたんだ」
あの後、ジョンに案内されて彼が住む村へと辿り着く事が出来た。
村に足を踏み入れて直ぐ、ジョンが向かった先の家には顎鬚を生やしたおじさんがおり、ジョンを目にしたおじさんは駆け寄り彼をがっしりと抱きしめる。
二人の話を聞くに、彼と共に狩りをしていた人らしく崖から落ちたジョンを探す為に今まさに捜索隊を結成して出発する所だったらしい。
ジョンの紹介でルミナスの存在に気付いたおじさんは村には不釣り合いな夜会ドレス姿の彼女に目を見開く。
「こ、これはどこかのお家のお嬢様ですか?この度はうちのジョンを助けて頂きありがとうございます」
「お気になさらず、訳あってこんな格好をしてますが私もただの平民なのでそんなに緊張しなくて良いですよ」
「へ、へえ」
おじさんはジョンを引っ張り部屋の隅へと移動する。
(どうなってんだよジョン?)
(いや、彼女に助けて貰ったんだけど村に連れて行って欲しいって言うから)
(あの恰好だぞ?絶対に面倒な事になるに決まってる!)
(でも恩人だし……)
(いくら恩人でも面倒な事になる前に村から出て行って貰った方が)
「あのぅ」
「はい!!」
声を掛けられたおじさんが勢いよくルミナスへと向き直る。
「面倒事には巻き込みません、その代わりに彼を助けたお礼として着替えと何日分かの食料を貰えませんか?それを頂けたら直ぐにこの村から去りますので」
「わ、分かりました!」
ルミナスの言葉におじさんは直ぐに建物から飛び出して行った。
取り残されたジョンが気まずげに頬を掻く。
「ジョージおじさんがすみません、恩人に失礼な態度を……聞こえていましたよね?」
「まあ、こんな怪しい人間には仕方が無いわよ。お貴族様に関わったら碌な事にならないってのは何処の人間でも一緒なのね」
「はは……えっと、取り敢えずここに座ってて下さい、体を拭く物と何か飲み物をお出しするので」
「いただくわ」
肩からタオルを掛け、ジョンに用意されたお茶を飲んでいるとジョージと知らないおばさんが家に入って来た。
おばさんはルミナスの姿を見ると「まあまあまあ」と声を上げる。
「あんたがジョンの恩人さんだね、えらい美人さんじゃないか!」
「どうも、良く言われます」
「あっはははは!あたしはこのボケナス亭主の嫁のサーシャって言うんだ。ジョンを助けてくれて本当にありがとうね!」
椅子に座るルミナスの両手を握りぶんぶんと豪快に上下に振るサーシャにルミナスは目を白黒させる。
「話によるとあんた訳アリなんだってね?着替えと食料貰ったら出ていくって聞いたけど行く当てはあるのかい?」
「それは……」
言い澱むルミナスにサーシャはうんうんと頷く。
「村の外れの方なんだけど、誰も住んでいない家があるんだよ。あんたそこに住まないかい?」
「お前、それは」
「あんたは黙ってな!」
「はい」
サーシャに一喝されたジョージは直ぐに口を噤む。
「私としては助かるんですが、どうしてそこまで?自分で言うのもあれですけど私って滅茶苦茶怪しいじゃないですか」
「怪しくてもあんたはジョンの恩人じゃないか!それにあんたみたいな美人で若い子なんて格好の獲物、悪いヤツに直ぐに食い物にされちまうよ」
「まあ、それは、はい」
自分が若くて美人なのは事実なのでルミナスは頷く。
「ここはそんなに人も来ないし家は村の奥の方にあるから人目にも付きにくい。あんたにはぴったりじゃないかい?」
「ええ、まあ、願っても無いですが、どうしてそこまで……?」
「困っている子が居たら助けるのは当たり前だろう?それがジョンの恩人ってならなおさらさ!」
「それなら……お世話になります」
椅子から立ち上がり、頭を下げるルミナスの背を笑いながら豪快に叩いたサーシャは眉を顰めた。
「あんた良く見たらずぶ濡れじゃないか!これあげるから早く着替えな!」
✻✻✻
「ルミねえ、遊んで~」
「おーし、じゃあ鬼ごっこだ!私が鬼ね!い~ち、に~い」
「きゃーーー!」
村で生活をする様になってから早一ヶ月、ルミナスは馴染んでいた。
ジョンから人があまり来ないと聞いていたので閉鎖的な村かと思いきや、ルミナスの予想に反して以外にも直ぐに受け入れられた
村には若者が少なく、人手が足りていないからと若いルミナスは歓迎されたのだ。
他にも音と共に現れる文字で『クエスト:薪割りを手伝って欲しい』等、村人が手助けを欲している時が分かり、クエストを見かける度に手伝って行った結果、今では子供達に遊びに誘われる位には馴染んだ。
最近では二十年に一回行われると言う村の伝統のお祭りが近々あるらしく、それの手伝いに駆り出されている。
何なら、祭りの当日に村の神様へと祈りを捧げる時の神事の補佐まで頼まれている。
村に来て日が浅い自分がそんな大事な祭りに携わって良いのかと遠慮するルミナスの背をサーシャが『手伝ってもっと村に馴染むチャンスじゃないか!』と叩いてくれたお陰で気兼ねなく参加する事になった。
今日はお祭りで使う道具の手入れを手伝っている。
神事で使うのだと言うお面は茶色い染みが所々に付いており、中々の年代を感じさせられるがどのお面にも目の部分の覗き穴が無い。
それを不思議がるルミナスに『神様の姿を直接見ると障りがあるのよ』と一緒に手入れをしている村人が教える。
「見えなくても大丈夫なんですか?」
「さあ、私は儀式には参加した事が無いから分からないけれど大丈夫だから穴がないんじゃない?」
割と大雑把に行われている様だ。
大きな包丁や立派な穂先の槍等の物々しい道具は研磨されて鋭さを増し、太陽の光を反射して鈍色の光を放っているし、お祭りで着る衣装に使う専用の布が機織られて祭りの準備が進んでいく。
お祭りの為に特別に織られたらしい布はふんわりとして柔らかい綿素材で出来ており、お祭りの参加者はこれに伝統の刺繍をした物を着るらしい。
お祭りの当日には村の集会場となっている広場で大きな篝火が焚かれるらしく、広場の一角の物置小屋に薪が集められている。
役割によって衣装に刺す刺繍が違うらしく、村の女性陣に教わりながら自分の分の衣装に刺繍をしたり毎日現れるお祭りの手伝いクエストを熟しながら、ルミナスは想像していたよりも穏やかに村での日々を送っていた。
必要な物は村に唯一ある雑貨店で買い物をするか、村人の手伝いをすれば食料や日用品を分けて貰えるので生活にも困っていない。
偶にジョンとジョージにくっ付いて狩りの見学に行ったり川で釣りをしたり、子供達と森に山葡萄を取りに行ったりと気分転換も出来る。
その日も就寝準備をしてベッドへと入ったルミナスは暗闇の中で耳を澄ませ、他に物音が無い事を確認してから小さな声で「クエスト報酬」と呟くと彼女の声に答える様に暗闇の中でもはっきりと見える文字が現れた。
『クエスト報酬一覧
・薪を割ろう∇
・鬼ごっこをしよう∇
・畑を耕そう∇
・お祭りの準備を手伝おう∇』
表示される文字の横にある∇に触れると文字が変化する。
『薪を割ろう
報酬:銅貨五枚
受け取る・受け取らない』
受け取るを触ると布団の上に銅貨が降ってきた。
それをルミナスは拾って枕の下に隠していた革袋の中に入れる。
クエストを熟したら報酬が貰える。
それに気付いたのはサーシャにこの家に案内されてからだった。
案内されたのは想像よりもちゃんとした石造りの家で玄関から直ぐの居間と寝室、台所、トイレと区画も分かれており、本当にここに住んで良いのかと問うルミナスに「誰も使って無いんだから気にしないの!」とサーシャが豪快に笑う。
サーシャの言葉通り、誰も使っておらず厚いホコリを被っていた家の中をサーシャ達と一緒に片付け、何とか一晩越せる位には綺麗になった時には夕方だった。
食事を持って来ると言う三人を見送って休憩していた時。
「そう言えば、忘れてたけど緊急クエストはクリアしたって事で良いのよね?」
そう呟いたルミナスの目の前に『クエスト報酬を受け取りますか?』と文字が現れたのだ。
文字の下には『はい・いいえ』が表示されている。
「え、何これ」
取り敢えず『はい』に指を伸ばすと触れない筈の文字に触れる感覚があり、ドサッと音を立てて目の前のテーブルに革袋が現れた。
「え、何これ」
『クエスト報酬:魔法の革袋∇』
「魔法の革袋?」
文字に触れられる場所がある事が分かったので目の前の文字を指を這わせると∇の部分にだけ触れた感覚があった。
∇に触れると、
『魔法の革袋
袋の大きさに関係なくどんな物でも入れる事が出来る。その容量に限りは無い』
文字が変化した。
ルミナスにとって魔法なんて御伽噺の中の存在でしかない物だったが、国外追放が決まったあの日から目に見えているこの摩訶不思議な現象を思うと魔法か、そう言う物もあるかもね程度には認識が変わっている。
書かれている文字に目を通し、半信半疑に取り敢えず試しに袋に手を突っ込んでみると袋は見た目はルミナスの両手の平程の大きさしか無いのに肘まで中に入っていき、傍から見るとまるで腕が消えている様にも見える。
「え、何これ」
慌てて腕を引っこ抜くと何事も無かったかの様に腕は元に戻っている。
試しに家のテーブルを入れようとするとルミナスがテーブルに手を当てた瞬間に彼女の身長と同じ程の幅を持つテーブルが一瞬で消えた。
慌てて袋の中に手を突っ込むと木の感触があり、それを掴んで引っ張ると袋の大きさとまるで合っていない大きさのテーブルがズルリッと引きずり出され、ガタンッ!と音を立てて元の場所に戻る。
「え、気持ち悪っ」
質量や物理法則を無視した出方にルミナスが恐怖を覚えていると家のドアが勢い良く開かれる。
「何の音だいっ!?」
「わっ!」
咄嗟にポケットに革袋を隠して振り返ると籠を持ったサーシャがドアを開けて入って来る所だった。
革袋の事を話す訳にはいかないと考えたルミナスは咄嗟に眉を下げた表情を作る。
「テーブルを動かそうとしたんですけど、持ち上げた所で手が滑っちゃって……床に傷が付いちゃったらごめんなさい」
「何だ、そんな事かい。ここはもうあんたの家だから気にしなくて良いんだよ。テーブルを動かしたいんだったらうちの男共を使えばいいのさ!あんた達!」
「おうっ」
「はいはい」
ジョンとジョージが二人でテーブルを持ち上げる。
「何処に動かせば良い?」
「あ、じゃあここにお願いします」
部屋の真ん中にあったテーブルを少し奥の方へとずらして貰う。
「他に何か力作業とかで困った事があったらいつでも言ってくれて良いですよ」
「ありがとう」
斜め十五度、可愛く見える角度に首を傾げて笑顔でお礼を言うとジョンが顔を赤くして頭の後ろを掻く。
ジョージにも笑顔でお礼を告げると黙ったまま一つ頷いた。
「じゃあ、一緒にご飯にしようかね!」
三人が持って来た食事を一緒に摂りながら村の事を聞いたのだった。
そんな初日から一ヶ月程が経った訳だが、この村での生活に慣れた頃になってからルミナスには一つ悩みがあった。
それは、村を散策している時や住んでいる家で寛いでいる時、不意に視線を感じる事があるのだ。
そりゃあ、村を散策していれば村人はいるし、そこに余所者の自分が居れば見るのは分かる。
だが、家の中に居ても感じる視線はどう考えても可笑しかった。
窓ではなく、壁から視線を感じるのだ。
気になったルミナスが調べたところ、石造りの壁の一部によく見ないと分からない程の大きさの覗き穴になる隙間があった。
ルミナスは自分で言うのも何だが美人だ。
ルックスとスタイルの良さはこの国の王子や高位貴族の令息を陥落させた折り紙付きで絶対の自信を持っている。
平民として村で暮らしている時もその美貌で幼い頃から村の男衆の視線を独り占めしていた事からルミナスは他者からの視線に敏感だった。
そしてルミナスはこれまでの経験から、羨望や好意や悪意と自身に向けられる視線に込められた感情も何と無くだが察する事が出来た。
生まれ育った村で暮らしている時にも家で視線を感じた経験は有り、そう言う時には好意や欲の籠った視線であるのが常であったが、この家の中での視線から感じる感情は無だった。
その視線はルミナスが家で寛いでいる時に強く感じ、彼女がお風呂に入っている時や着替えをする時にはまるで気を使っているかのように視線は無くなる。
村で誰かと一緒に居る時には視線は消え、一人でいる時だけ視線を感じる。
感じる視線が自身に対して好意を抱く物であれば納得出来るが、そう言った欲が一切感じ取れないのは、まるで監視されている様だとルミナスは奇妙な感覚を抱いていた。
今日も視線を感じながらベッドに入り、視線が消えたのを感じて暫くしてからルミナスは日課のクエスト報酬を受け取った。
鬼ごっこをしようでは傷薬を、畑を耕そうでは野菜の種を、祭りの準備を手伝おうでは煙玉がクエスト報酬として出て来る。
(なんで煙玉、何処で使うのよそんな物)
祭りの準備クエストは毎日発生しているのだが、その報酬は毎回決まって煙玉。
煙玉を使う機会なんて日常に無く、革袋の中にどんどん溜まっていく日々だ。
日課を熟したルミナスは出て来た物全てを仕舞ってから革袋を元の場所に戻して寝るのだった。
✻✻✻
「やっぱりこの村、変だわ」
日々感じる謎の視線はルミナスが村の出口に近付くと強くなり、決まって出口の近くで村人に手伝いを頼む声を掛けられた。
以前の様にジョンとジョージの狩りに付いて行こうとしたら『狩りよりも祭りの方が大事だからその準備を手伝って欲しい』と断られたり、川に釣りに行こうとしたら子供達に捕まったり、子供達に森に果物を取りに行こうと誘ってもそれよりの村の中で遊ぼうと提案されたりとまるで自分を村から出さない様にしているかの様な印象をここ数日でルミナスは抱いた。
一週間後に迫った村の伝統のお祭り、日々強くなる謎の視線、所々にある違和感。
(この村、どこか変……?)
そう思った時、ジョンを助けた時と同じけたたましい音が鳴り響き、緊急クエストと言う文字がルミナスの眼前に現れた。
『緊急クエスト:因習村からの脱出∇』
「……ほーん?」
なるほどねっとルミナスの背を脂汗が流れる。
これは断罪返しをされて国外追放されたルミナスが突如現れる文字を駆使して困難を乗り越え、安住の地を得るまでの物語である。




