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第五話 アーサー・モリス

「ありがとう、アーサー」

 ジョージは震える声でそう伝えた。

「……ジョージ、俺と会うときは、ロンドンの西側って決めたのを忘れたのか?」

 アーサーはすごい剣幕でジョージを責めた。次のターゲットはお前だ、と言わんばかりの迫力だった。

 ジョージは肩をすくめた。

「ごめんごめん、どうしても直ぐに会いたかったんだ」

 アーサーは仕留めたゴロツキを道の端に寄せた。相当慣れた手つきで、彼にとっては日常茶飯事だと言うようだった。

「……警察を、呼ぼうか?」

 ジョージは悲惨な光景をあまり見ないようにしながらそう伝えた。

 アーサーは()()と聞くと、眉をひそめた。

「いや、放っておけ。警察なんてあてにならねえよ」

 アーサーは冷たい声でそう言うと、こう続けた。

「ところでジョージ、お前、何しにここに来た?」

「……約束の絵を届けに……」

 ジョージは言いにくそうにそう言った。というのも、実はそれはかなりの建前なのだった。

「おぉ、そのためにか……悪かったな」

 アーサーはジョージの手荷物を見てその建前を信じたのか、申し訳なさそうにそう言った。

「アーサー、約束していた絵だよ、上手く商売に使ってくれ」

「……ぁあ、ありがとうよ」

 どう反応したらよいか分からなくなったアーサーは、ジョージが手渡した絵を受け取ると、艶やかな前髪を右手でかき分けた。

「あと……」

「あと?」

 アーサーは青色の瞳をスッと細めた。

「……アーサー、こんな噂を知っているか?」

 ジョージはそのアーサーの目をじっと見つめた。

 ジョージはアーサーに、最近話題になっている例の噂話について話した。

「その噂の絵画についてなんだけど」

「断る」

 アーサーは間髪入れずにそう言った。

「って、早くない!? 俺、まだ何も言ってないんだけれど!!」

 アーサーは深いため息をついた。

「ジョージ、俺はお前の動機や行動パターンは痛いほどよく知っているんだ。どうせその噂の絵画が気になって夜も眠れないから、一緒に探してほしい。 その絵画を手に入れるために、協力をしてほしいって話だろう?」

 アーサーがスラスラと暗唱するように言う一方で、ジョージはうなだれた。

 それを横目で見つつ、アーサーは続けた。

「俺は仕事が忙しい。お前も知っているだろうが、弟の病院代を稼がなきゃいけねぇ。そういうことに付き合っている暇はねぇんだ」

 他を当たるんだな、とアーサーはそっぽを向いた。

(やっぱり)

 ジョージは嫌な予感が的中した。アーサーには病気の弟がいる。それを理由に断られると、絶対に思っていたのだった。

(ならば……)

 ジョージはアーサーをキッとにらむと、こう言った。

「じゃあアーサー、契約しよう。一週間でこれくらいの額はどうだろう?」

 ジョージは懐から財布を取り出し、そう告げた。

 アーサーはそれを見ると、目の色を変えてこう言った。

「……お供いたしましょう、ご主人さま!!」

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