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第三話 出発

(あっぶなかった)

 カーソンが部屋を出て行ったあと、ジョージは冷や汗をぬぐった。

(まさかそこまでお見通しとは……)

 ジョージは考えていたのだ。あの男とこの噂の絵画を探し出そうということを。

 ジョージはあの噂を耳にしてから、夜眠れなくなっていた。心臓がドキドキして、まるで子供のころに戻ったみたいに好奇心が刺激されていた。あまりにも寝付けなくて、屋敷の中をグルグルと徘徊した。そのせいで一時期カーソン以外の使用人に本気で心配された。

 

 話は変わるが、ジョージにはある弱点があった。

 それは片方の耳が聞こえづらいということだ。

 ()()()()()()()()

 もうジョージは受け入れてしまっているが、外に出て奇妙な探し物をするとなると心許(こころもと)なかった。

 そのため、()()()に頼ろうと思ったのだ。


 ジョージは座っていた椅子から立ち上がると、窓の外を眺めた。

 ジョージが暮らしている田舎とは違う、あの丘の向こう側にある世界。

 ロンドンの雑踏の中にある、誰も寄り付かない世界。

 貧民街――そこに彼は暮らしていた。

 ジョージには、彼を説得するある策があった。策と言っても、そんな大それたものではないのだが。

(明日の早朝、出発しよう)

 ジョージは決心した。

 明日にでも彼に会いに行こうと。


〇●〇


 その晩、ジョージは寝ずに過ごした。寝坊したら困るからだ。

 絵を描きながら馬車を待っていると、とうとう東の空が白んできたので、ジョージは出かける支度を始めた。当然カーソンたちは眠っているから、なんとなく自分で選んだ服を着こみ、そして最後に母の形見であるペンダントを首からぶら下げた。

 部屋の窓を開けると、とても寒くてジョージは白い息を吐いた。月の光を反射して、ペンダントの宝石がきらりと光る。

 目を凝らして外を見ると、馬車が待機していた。

(そうだ、あの絵も持って行かなくちゃ)

 ジョージはその男に渡すと約束していた絵を数点まとめた。


(――さて、出発だ)


 ジョージは分厚いコートをさっと羽織り、彼のもとへと出かけた。

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