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第二話 とある噂

「あの噂って、()()()()の噂のことですか?」

「あぁ、そうだ!」

 ジョージは目を輝かせ、前のめりになってそう答えた。

 カーソンは顎に右手をあて、静かに思考を巡らせた。

「たしか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というものでしたよね」

「大筋はそんなもんかな。要約すると、ある洋館に人を喰う絵画があるらしい」

「三流小説家が書きそうな、ありふれたホラー小説の設定ですね」

 カーソンは鼻を鳴らした。

「そんなこと言うなよ……」

 ジョージは眉をハの字にして、しょんぼりとし、続けた。

「この絵画の作者は不明。収蔵場所はおろか、その絵画が何枚存在するのか知る者は誰もいないんだ」

「……ずいぶんと熱心なんですね」

 カーソンは訝しそうにそう言って、続けた。

「それが真実だとしたら、絵画に出会った人がいなくなっているのに、なぜその絵画の存在が巷に広がっているのです?」

「それはおっしゃる通りなんだけどさ」

 カーソンはため息をついてこう言った。

「ジョージさま、そんなことに気を遣う暇があるのでしたら、コンクールに集中してください。大学を中退してもう一年になりますよ! はやくコンクールで入賞して、何かしらの成果をお父さまにご報告しなければ」

(分かってるよ、カーソン……)

 今度はジョージがため息を吐く番だった。

 カーソンはこう続けた。

()()()()()()のこともありますし……。私は、心配しているんですからね!!」

「悪い悪い、ちょっとした冗談だよ、冗談!!」

 ジョージは困ったように眉を下げて笑った。

 カーソンとジョージは二つ違いの年齢差で、使用人と主人という身分の差はあれども兄弟のように育ってきた。カーソンはジョージのことを主人というより、手のかかる弟のように接している。

「まったく、ジョージさまったら……」

 そうブツブツとつぶやくと、カーソンは部屋を出ていこうとドアの取っ手に手をかけた。

(ふぅ、危ない危ない)

 ジョージは内心ヒヤヒヤしていた。この先の話を、カーソンにしなくて本当に良かったと胸をなでおろした。

 笑顔で彼を見送っていると、カーソンは、くるりと振り返ると厳しい顔つきでこう告げた。

「そうだ、ジョージさま。その絵画を探すために、()()()の力を借りよう……なんて、考えてませんよね?」


――ギクリ!!!


 ジョージの笑顔が強張った。


「そ、そんなわけないじゃないか!! もうあいつとは関わらないって約束しただろう」

「……ならいいんですけれど」

 カーソンはそう呟くと、部屋をあとにした。


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