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第十一話 宿屋①

オリバーに別れを告げたジョージとアーサーは、近くの宿屋で一泊することにした。二人一部屋で部屋を借りた。

 軽めの夕食を食べた後、部屋に案内された。

 ベッド二台と小机以外何もない、殺風景な部屋だった。二人が部屋に入ると、ジョージは足元に何か虫のような黒い物体を見つけたが、すぐにベッド下に隠れてしまって、害虫なのかどうかは分からなかった。


〇●〇

(埃臭い宿屋だ。それに、布団が固い……)

 そうジョージが思う一方でアーサーはこう言った。

「布団が、柔らかいなぁ……」

(柔らかいだって!? アーサーはどんな寝床で寝ているんだ!?)

 ジョージは若干のカルチャーショック的なものを感じながら、思いっきり布団に寝っ転がった。

 ジョージはしばらくベッドに寝っ転がっていたが、ふと思いついたことを口にした。

「オリバーは、仲間思いなんだな」

「そうかぁ?」

 いつの間にかベッドに腰を掛けたアーサーは、渋い顔をしていた。彼はあまりオリバーのことをよく思っていないみたいだった。

「ジョージ、そう簡単に人を信頼するなよ」

「……でも、実際そうじゃないか。あんな不気味なところ、俺だったら絶対に一人で行けない」

「それはお前さんがヘタレなだけだ」

「なっ、失礼な!?」

 ジョージは、そんな弱くないぞというようにむくりと起き上がった。

 それとは反対にアーサーはベッドに横になった。

「……今日は早めに寝ようぜ? 明日朝一であの別荘に向かうんだからな」

 そういうと、アーサーはさっさと部屋の明かりを消してしまった。


 一方でジョージはまだ眠れなかった。日中のあの廃墟での出来事が、頭から離れなかったからだ。

 ()()()()()()()はジョージには全く聞こえなかった。

(アーサーがいなかったら、俺はあのナイフでずぶりと刺されていたかもしれない……)

 明かりにギラリと反射したナイフを思い浮かべて、ジョージはそう思った。もし自分が一人だったら……。そう思うとジョージは背筋が凍って眠れなかった。

「そういえば、ジョージ」

 アーサーの寝ぼけた声が聞こえた。

「……何だい?」

「お前、精神的に参っていないか?」

「…………何が?どういうこと?」

 全く思い当たる節がなかったので、ジョージは聞き返した。

「ジョージ」

 くるりとアーサーがこちらを向く音がした。シーツと布団のこすれる音が、静かな夜に響く。

「廃墟でのお前は、明らかにおかしかったんだ。オリバーから噂の絵画の話を聞いたあたりから、なんだか別人のような気がしてな。なんだかその……」

「……もしかして、心配してくれてるのか?」

 ジョージは驚いて尋ねた。

「……んなことはねぇよ。ただ、雇い主の気が触れたら困るから、聞いただけだ」

「……へぇ」

 ジョージはニコニコとしながら答えた。

「それで、本当に()()なんだろうな、お前さんは」

「あぁ、問題ない」

 アーサーの声が不安そうに闇夜に響く一方で、ジョージは力強く答えた。

「なら、別にいいんだが……」

 アーサーはそういうと、本格的に眠りについた。

 ジョージはというと、アーサーの言ったことを胸の内で反芻していた。

 確かにオリバーから噂の絵画の話を聞いたとき、自分自身の様子がおかしかったことは認める。

(でもだからって何だっていうんだ)

 ジョージは噂の絵画について、気になっているんだから、あれくらいの反応は普通だと覆った。

 そう自分に言い聞かせ、深呼吸する。

 その日の疲れがたまっていたのか、ジョージはすぐに深い眠りについた。


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