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第九話 黒い影

 そこには、すでに見知らぬ黒い影があった。

 その黒い影が持っていた銀のナイフが明かりに反射して、冷たくギラリと光った。それに気づいたアーサーは威嚇するように叫んだ。

「お前、何者だ!!」

 その声で、ジョージの心臓が跳ね上がった。黒い影も一瞬ビクリと震えたのが分かった。

 アーサーは杖を構えながら、じりじりと距離を詰めていく。

 相手はしばらく身構えていた。ジョージは黒いその影にじっと見られているような気がした。

 しばらく臨戦態勢が続いたが、その黒い影は突然、くるりと踵を返して逃げ出した。

「どこに行く気だ、待ちやがれ!」

 アーサーは持っていた杖を放り投げて、明かりを持ち直すと、部屋を飛び出した。ジョージも後に続いた。

 廊下に出ると、端に寄せてあった小机の上に花瓶が置かれていた。アーサーはその花瓶を引っ掴んで、そのまま黒い影に向かってぶん投げた。

 その影はぐらりとよろめく。

「やった! 当たったぞ!!」

 ジョージは歓喜の声をあげた。

 

○●〇


 この屋敷はそれほど広くないので、二人はそのあとすぐに黒い影を壁まで追い詰めることができた。

 黒い影は観念したのか、銀色のナイフを地面に置いて遠くに蹴飛ばし、かぶっていた帽子を脱いだ。

 そして、両手を高く上げて言った。

「ひぃっ、命だけはご勘弁を、黒髪の旦那。それからお付きの人も、それで刺すのはやめてくだせぇ……」

 そう言いながら、ジョージが持っていた火かき棒を指さした。

 その人物はジョージとそんなに年が離れていないように見えた。茶髪の巻き毛が汗に濡れてべったりと額に張り付いている。よくみると、そばかすだらけの顔をしていた。背はジョージと同じくらいだが、ガリガリに痩せている。

「お前、何しにここに来た?」

 アーサーは今にもとびかかりそうな勢いだ。

「俺はあれを……」

 そばかすの彼は口ごもったあと、意を決したような表情で言った。

「旦那たちも()()()()の在処を探しに来たんでしょう?」

「さぁ、どうだろうな」

 アーサーがしらばっくれた一方で、彼は続けた。

「俺は、あの絵画の探し場所が書かれた()()()を探していたんだ」

 彼の声は恐怖で震えていた。

「案内状だと?」

 何言ってんだコイツ、とアーサーは肩眉を吊り上げた。

「旦那たちがどこまで噂を知っているのかは俺には分からないが……ゲホゲホッ」

 彼は息を整えながら言った。

「ただ一つ言えることは、ここに噂の絵画は無い、ということだ」

 ジョージはもう我慢できなくなり、無理やり会話に入り込む。

「それは、いったいどういうことなんだ?」

「簡単な話さ。この家には、あの絵画の隠し場所が書かれた()()()があるんだ。その隠し場所で盗賊たちは姿を消すんだ……。旦那たちもその噂を聞いて、ここまで来たんでしょう?」

(案内状……?)

 ジョージは顎に右手をあてた。


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