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マヌカン  作者: ハイダウエイ
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第3話

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挿絵(By みてみん)

大学1年最後の基礎ゼミでちょっとしたコンパがあった。

基礎ゼミと言っても夏休みには合宿を行うなど、イベント好きの教授のお陰で

数組のカップルも誕生している。智弘も一人気になる女子学生が居り、このコンパでは

是非仲良くなりたいと考えていた。この日は少々の酒も入り智弘も少し気が大きく

なっていせいだろうか、その女子学生に告白めいたことを言えたのであった。

彼女は中野和江といい 大学の近くに下宿していた。実家は静岡の農家で、みかんなどを

作っており、生活水準も智弘の家庭とあまり変わりなく話もよく噛み合っていた。

その後も何度かデートを重ね、映画を観に行った帰りに口づけをするまでの仲に

進展していた。そうなると若い男女の事であるから、少しでも長く一緒に居たいと

考えるようになっていた。和江は下宿に住んでおり門限がある。1年のうちに外泊など

とても無理だったが、智弘を自分の部屋に入れることは出来ると言い出したのである。

夜、寮母が寝た後なら裏口から入ってきてもバレ無いだろう。次の日は一日部屋に居り

また夜に帰ればよいという作戦である。

「でも、もし寮母にバレたら・・・君の両親に必ず報告するだろう? 大丈夫かな?」

「大丈夫よ。 絶対にバレ無いから!トイレは私の部屋の側だからお昼だって平気」

「なんだかスリルがあるなー 今夜でいいんだよな?」

「そうよ・・・・やっと、ずっと一緒に居られる」

その日の夜、11時過ぎに智弘は和江の寮を訪れた。予定どおり裏口の鍵はかかって

いなかった。ゆっくりとドアのノブを廻す・・・・身体が熱を帯びたような感覚の中

静かにドアを開けた。 既に口はカラカラだ。 部屋の明かりは小さなナツメ球のみ

である。

暫らくすると和江が階段を降りてきて、二人は泥棒でもするように静かに2階に上がった。

「ねっ? 大丈夫だったでしょ?」

「ああ・・・でも、まだドキドキしてるよ・・・見て・・・手のひら、ベタベタだ」

「あー スリルあるわねー・・・病み付きになっちゃいそう」

「君は根性があるなー 俺は喉が渇いたよ・・・・ジュースか何かあるの?」

「カルピスがあるわ。 下の台所で作ってくるから待っててね」

そう言うと和江は1階に下りていった。

「結構きれいにしてるじゃん・・・・」和江の部屋は4畳半ほどの和室で、小さな押入れが

ついていた。組み立て式の棚には食器類や漫画本などがきれいに整頓されている。

壁に打ち付けられた釘にハンガーが掛けてあり、学校にいつも着てくるコートが

ぶら下がっていた。部屋にはコタツが置いてあり、それが大半を占領するような状態だった。

「お待たせ・・・トイレはそこだからしたくなったら言ってね」

「わかった。ありがとう・・・・・・・美味い。やっと生き返ったよ」

「オーバーなんだから。 おミカン食べる?実家で作ってるの。美味しいよ」

「サンキュッ。いいなー、実家が農家なんて。羨ましいよ」

「全然羨ましく無いよ・・・恥ずかしいくらいなんだもん。クラスの女子はイイトコの子

ばっかりでしょ? かっこ悪くて・・・」

「確かにな・・・変な大学に来ちまったよ・・・」

「ラジオかける? 良い音楽やってるかも?」

「そうだな・・・それいいじゃん・・・サムテーラーか?」

「詳しいんだね・・・・あっ・・・・ダメだって・・・・・・・・」

数時間後、静まり返った寮の部屋に、二人の荒い息遣いだけが響いていた。

挿絵(By みてみん)



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