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マヌカン  作者: ハイダウエイ
19/35

第19話

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挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


雑誌が発売されてまず一番驚いたのは「月刊スタイルナウ」の編集部だった。

南沢佳代子に対する問い合わせが殺到していたのである。

彼女のルックスが愛らしく、女性だけではなく男性からの電話も多かった。

その中で「週間フレッシュボーイ」からの問い合わせは前代未聞の事だ。

なにせ「月刊スタイルナウ」の親会社は「理想社」という出版業界では名門である。

それが「講文社」を親会社に持つ「週間フレッシュボーイ」からの問い合わせとあって

編集部は騒然となった。「理想社」と「講文社」は犬猿の仲で、何度も裁判沙汰に

成りかけたことがあっほどだ。

「絶対に彼女のプロフィールは言うなよ! 高木!専属契約を直ぐに結んで来い!」

「分かりました編集長・・・・月のギャラは・・・・」

「雑誌1冊10万だ!とにかく 専属になってもらえ。ゴネるようなら電話して来い」

すぐに佳代子に電話が入った。が、智弘に相談すると言って直ぐには返事をしなかった。

夜になって佳代子のもとに智弘から電話が入った。

「とんでもない事になってるの・・・私じゃ返事できなくて・・・・」

「凄いじゃん! 決めればいいのに・・・そんなに貰えるんだったら」

「でも・・・・モデルなんてしたいと思わないもん」

「じゃあ断ればいいじゃん?」

佳代子は電話をしながらも悩んでいた。もし、モデルの仕事を請ければ智弘の

デザインを世間に知ってもらうことが出来る。そうすれば必ず企業からのオファーが

あるだろう。でも、モデルの仕事って何をすれば?

それほど自分に自信があるわけでも無いし、年齢だって24歳だ・・・・

翌日、佳代子は「月刊スタイルナウ」の高木に電話でこう伝えた。

専属契約にはサインするかわりに、智弘のデザインした服を必ず掲載して欲しい・・

高木の答えは即答でイエスだった。佳代子は知らなかったが今回の件では

智弘にも注目が集まっていたのだ。「月刊スタイルナウ」の大手クライアントの

大半が智弘へのアポイントを高木に要請していたのである。

どのメーカーもフリーの智弘に興味を抱いていたのだ。

その中でも日本最大手の繊維メーカーをバックに持つ「ファーレン」は、直ぐにでも

専属デザイナーとして起用する意思を伝えてきた。連絡先を佳代子の自宅にしていた

ため、「ファーレン」からの電話を佳代子が受けた。

「智弘やったわね!「ファーレン」なんて凄い会社からデザインを依頼されるなんて」

「うん。自分でも信じられないよ・・・明日の2時にあのビルに行くんだ・・・」

「大丈夫よ! 大会社ですもん。向こうの言うとおりにしてればきっと上手くいくわ」

「なんだか怖いよ・・・俺スーツも持って無いし・・・」

「バカね。就職じゃないんだから」そう言って佳代子は笑った。

智弘も急に可笑しくなり公衆電話の中で大声で笑っていた。

翌日、新宿にある「ファーレン」本社ビルの受付で智弘は自分の名前を告げていた。

ジーンズにセーター、それに安っぽいコートを着た智弘の格好はファッション業界の

トップを行くこの会社の雰囲気からはかけ離れていた。

「ご用件は?」

「あの・・・・本田部長さんに会いに来ました・・・」

「少々お待ちください・・・・」

受付嬢は場違いな智弘を嘲る様な眼差しで、事務的に対応していた。

「それではそちらのエレベーターで35階へどうぞ」

「35階・・・・ですか?」そう言いながら智弘は緊張の限界に達していた。

身体から脂汗のような物が出ていた。

35階フロアーは1階ロビーよりも更に豪華な作りだ。

「ようこそ、横内さんですね?こちらに・・・・」

案内された部屋は20畳ほどありそうな応接室だった。

「私がマネージャーの本田です。どうぞお掛けください」

スーツ姿のその男性は年齢は40代前半だろうか?どことなく俳優の倉石ケンに似た

美男子だ。

「早速契約についての説明と、仕事内容をご説明いたします・・まず、1着あたりの

ロイヤリティの件ですが・・・・・」

智弘は緊張からか、ほとんど相手の言っている意味が理解出来なかった。

約1時間の話し合いの後、数十ページにも及ぶ契約書を渡され本社ビルを後にした。

挿絵(By みてみん)

智弘はそのまま佳代子のマンションに行き状況を説明した。

「ダメだよ・・・・何を言ってるのか分からなかった・・・・」

「契約書をよく読めば分かるんじゃないかしら?見せてくれる?」

佳代子は渡された書類に目を通しため息をついた。

「何のことだかサッパリ分からないわ・・・・智弘の言う通りね・・・・」

「どうすればいいんだろ? 契約すればいいのかな?」

「月刊スタイルナウの高木さんに聞いてみればいいんじゃないかしら?そうよ!

あの人結構いい人みたいだし・・・」

「そうだな、そうしよう。彼の会社は何軒もスポンサー持ってるし・・・佳代子・・

俺・・・・なんだか怖いんだ。働くのって嫌いじゃないけど・・・・」

「大丈夫よ。大企業だもん・・・・変な事にはならないって。大丈夫・・・・」

そう言いながら智弘を抱きしめた。

智弘は甘えるように佳代子の胸に顔を埋めた。

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