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マヌカン  作者: ハイダウエイ
11/35

第11話

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挿絵(By みてみん)

なかなか洋服の代金について納得しなかった佳代子だったが、どうしても値段を

言わない智弘に負け、ある提案をしてきた。

「じゃあ智弘君、飯食べていってよ!それなら良いでしょ?」

さすがにこの提案には頷くしかなかった。むしろそう言われて嬉しかった。

話している間に益々彼女の魅力に吸い込まれていくような感覚があり、佳代子の事を

もっと知りたいと思ようになっていたからだ。

佳代子は大型冷蔵庫から食材を取り出し、手早く料理を作り始めた。

「口に合うかしら? どうぞ召し上がって」

テーブルにはスパゲティと野菜サラダ、それに良い香りのするパンが並んでいた。

「このパン美味しい・・・・なんだろう?」

「ああ、それ? ガーリックトーストって言うの。ニンニクオイルを塗って焼いたのよ」

「このスパゲティも初めて食べた・・・何の味かな?」

「ペペロンチーノって言うの。すごく簡単に出来るのよ。あまり日本では作らない

料理かもね。ニンニク嫌いな人多いから」

「佳代子さんはどこで習ったんですか?こんな料理・・・」

「父がねパイロットなのよ。それで家族を時々海外へ連れて行ってくれたのその時に・・」

「そうなんですかぁ、羨ましいな。一度も行った事ありません・・・これからだって

行けるかどうか・・・」実際、大卒の初任給でも海外旅行となれば2~3ヵ月分は必要だ。

「これからは日本人も海外へ進出する時代よ。智弘君だってこんなに素晴らしい服が

作れるんなら、きっと海外でも成功すると思う」

そんな事を真剣な眼差しで話す佳代子を、ボーと眺めていた。お世辞とは分かっていても

気分がいいものである。

「このマンションもね、父の会社の物なの。以前はここから通ってたんだけど・・・

今度千葉に国際空港が出来るでしょ? 今向こうに行ってるの。父の会社って変なのよ

パイロットは役員だとか言って、いろんな仕事をさせられてる・・・」

「じゃあ、お母様も大変だね」智弘がそう言うと、少し暗い顔で佳代子が答えた。

「母は居ないの。私が14歳の時亡くなったわ。心臓の病気だったの・・・・

原因がよくわからなくて、何も出来ないまま死んじゃった」

「そうだったんだ・・・ごめん、思い出すような事言って」

「いいの・・・もう10年も前の話だもん」その言葉を聞いて智弘はびっくりした。

10年前14歳なら現在24歳ということだ。自分と同じ年齢だったのだ。

顔はあどけなさが残っておりどう見ても10代だと思っていた。確かに話し方は

かなりシッカリしており、智弘の事を「君」と言っていたあたりに年齢から来る自信が

見えていたのかもしれない。

「佳代子さん同じ年なんですね?」

「えー、そうなの!24歳?・・・・智弘君なんて言ってたわ。私・・・ゴメンなさい。

年下だと思ってたの。20歳位かなって・・・ホントごめんなさい」

「仕方ないですよ・・・大学も行かずに遊んでますから」

「大学に行ってたの?」

「入学だけはね・・・慶早に2年の春まで在籍してました」

「へー、頭良いんだ。何で辞めちゃったの?」

「何でかな?・・・・自分に合わなかったんだと思います」

「それだけ?何かもったいないわねー。私、受験したのよ。落ちたけど・・・」

「そうだったんですかぁ・・・・代わればよかったですね」智弘はそう言って少し笑った。

「ねえ、智弘君・・・あっ!また君って言っちゃった。なんかその敬語みたいな

話し方やめない?同い年なんだし・・・友達みたいな感じでいいじゃない?」

「そうですね・・・・ちがう、 そうだね。これでいい?」

「ねえ、お昼食べたら映画に行かない?すごく観たいのがあるんだ。父の会社の

タダ券もあるし。嫌かな?」

「嫌じゃない・・・・・佳代子さんは今日は仕事とか無いの?」

そう言って智弘は内心「しまった!」と思っていた。彼女の仕事を夜の仕事だと

思い込んでいたから出た言葉だったが、どうも違うようである。

「私ね・・・・仕事して無いの。去年までは銀行に勤めてたんだけど・・・

身体を壊しちゃってね・・・行けなくなっちゃった」

「重い病気なの?身体壊したって・・・・・」

「そんな事無いよ。もう治ったんだけど・・・・なんか今更・・だから、時々父の

会社でアルバイトしてるわ。海外のお客様集めてパーティーした時のコンパニオンとか

そんな仕事・・・」

それを聴いて智弘は先日の光景を思い浮かべていた。あの格好はパーティーのドレス

だったのだ。自分の思い込みが馬鹿げていことが少し恥ずかしかった。

「観たい映画って何なの?」

「O嬢の物語・・・・・知ってる?」

「ごめん・・・わかんない」

「ふふふ・・・良かった。じゃあキマリね!」

何か隠しているような素振りで、楽しそうに笑う佳代子が少し眩しく見えた。

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挿絵(By みてみん)


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