表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の異世界戦記~その最強の実力は願った平和を求めるために~  作者: D-delta


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/14

▽第7話 星空の下で寝静まる魔王城

 焼肉というご馳走で賑わった夕食の後。

 夕食を食べ終えて満足した魔物たちは寝静まっていた。無防備で愛らしい寝顔を晒し、静かな寝息を立てている。


「ほわぁ~」

「寝るか?」

「うん、眠くなってきちゃった!」


 ルーシーがわざとらしいあくびを一つ。疲れたように目を擦って、全身から眠気を伝えてくる。


「あ、その前に防壁張らなくちゃ……防犯防犯っと!」

「すまない。ここの防壁、俺が破壊してしまっていたな」

「まぁまぁ、過ぎたことだから気にしてないよ」


 ユウが初めてここを訪れた時に破壊した魔法防壁。

 今は城の防御が無防備であり、眠たげなルーシーは魔法防壁の張り直しに取り掛かる。


「えぇっと……? 我の意思に頑強な防壁を以て応えよ、プロテクトウォール」


 ルーシーを中心にして展開される魔法陣。

 マナの波動と魔法のオーラを身に纏う、ユウの魔法とは違い、視覚的に魔法を使用していることがよく分かる。


「はい、これでオッケー」

「万全だな」


 彼女が窓から外を見て告げる。

 ユウも一緒に窓の外を見てみれば、薄っすらと見える魔法防壁が城を囲むように張ってあった。

 城の防御は整えられた。これで全員が安心して眠ることが出来る。


「さーて、寝よっか」

「そうだな」

「あ、こっち。一緒に来て」

「了解」


 ユウはルーシーの後を付いていく。

 ところところで眠る魔物たちを踏まないように通路を歩いて、階段を何段も上がる。

 着いた先は城の最上層。

 二人は最上層に一つだけある部屋の扉の前に来た。


「ここがアタシの寝室。いや、もうアタシたちの寝室になるかな?」

「それは一緒に寝るということか?」

「そういうことぉ! さぁ来て!」

「あぁ」


 寝室の扉を開き、入っていく。

 室内はお姫様の部屋という印象が強い内装。

 女性のルーシーには似合いの寝室だが、ユウには少し落ち着かない寝室だった。


「ユウ君、どう? 一緒に寝るにはいいでしょ?」

「そうだな、不満は……ないと思う」

「なにそれぇ、なんか含みがあるんだけど」

「こういう寝室は初めてで慣れないだけだ」

「あ、そういうやつ? まぁその内に慣れるよ♡」


 言いつつルーシーはベッドに腰掛ける。

 二人で寝るには充分な大きさのベッド。一緒に寝るのに不足はない。


「ともかく、まずはお着替えしようね」

「着替えか……」


 ユウに着替えはない。

 じゃあ、どうするか?

 魔法を使って着替えることにした。

 記憶から引き出し、自らの衣服を想像。魔法のオーラを纏う思考型魔法で、ユウは軍服姿からTシャツと短パンのラフな姿となる。


「おぉっ、ユウ君もそうやって着替えるんだ!」

「ルーシーも?」

「うん、よく見てな!」


 彼女も同じく魔法で着替える。

 ラフな姿となったユウはどうやるのかを見つめた。


「ドレスアップ!」


 ベッドから立ったルーシーを中心にして展開される魔法陣。衣服が光り始める。


「マジックステップ、スリープナイト!」

「!?」


 そして衣服の光が弾けると、ルーシーの姿が変わっていった。

 その様子は着替えるというよりも変身。

 衣服こそベビードール──セクシーランジェリーと呼称される分類に入るものだが、変身の仕方は完全に魔法少女であった。


「まるで魔法少女の変身だな」

「あ、分かる?」


 変身が魔法少女なだけではない。ルーシーは魔法少女という存在を知っていた。

 予想外のことに、ユウは「え?」と漏らす。


「この変身魔法、別世界から来た魔法少女のものなんだって! 別の大陸から渡ってきた本に書いてあった。キラキラしていてすごいでしょう?」

「あ、あぁ……」


 別の大陸に異世界の魔法少女が存在している。

 まさかの事実に、ユウは口を開けっぱなしで驚きを隠せない。

 同時に懸念が広がる。その魔法少女も転移者ならば、自分だけがこの世界に転移して来たとは限らないと。


「もし俺の世界の軍が来ていたら……」

「なーに? 変身ヒロインを目の前にして考え事?」

「すまない。色々心配事があってな」

「もうユウ君ったら……今はアタシだけを見て、心配事は一旦置いておいてさ」


 ルーシーは誘うようにユウの腕を引っ張り、引き寄せる。

 物理的に距離を縮めて二人はベッドに座る。


「さぁ、一緒に寝よ」


 そのままルーシーはベッドに横になる。


「そうだな。まだ脅威はない訳だし」


 懸念を頭の中から放り出し、ユウもベッドに横になる。

 そこから二人は一緒に一つのベッドに入った。


「えへへ……なんだか恥ずかしいね♡」

「俺に恥ずかしさはない。ただ人肌に触れながら寝るのは久しぶりだ……」

「ちょ、ちょっっ!?」


 ユウはルーシーの温もりを求めて抱き寄せる。

 ルーシーの予想を裏切る積極的な肌の触れ合い。顔を赤くしたルーシーの心音が、肌越しに伝わっていく。


「おやすみ、ルーシー」

「う、うん……お、おやすみね」


 彼女の心音と温もりを感じながら目を閉じる。

 ユウにとって母親、父親と一緒に寝た時以来の懐かしさ。

 ルーシーの目も閉じられる時、魔王城は健やかな眠りに満ちていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ