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魔王の異世界戦記~その最強の実力は願った平和を求めるために~  作者: D-delta


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▽第11話 侵略の始まり

体を壊してしまって……更新が遅れてしまった

がんばろ

 ロミ大臣が提案した、お茶会。

 今度はロミ大臣、各領主と各貴族を加えて、再び庭園にて始まった。


「今日は賑やかだな、ロミ大臣よ。久しぶりに顔を見た者もいる」

「私が誘いました。今度いつ顔を見られるか分かりませぬからな」


 ルゼン王とロミ大臣は紅茶を嗜みながら周りを見る。

 お茶会の出席者は同席しているユウとルーシー、そして四人の領主と貴族。

 ユウとルーシーが紅茶を飲んでいる後ろで、四人の領主と貴族は顔を合わせている。


「お久しぶりです、皆様方。今日の目的は全員同じ。我が鎧に対しての文句よりも目的の達成を優先しましょう」


 四人の集まりの中で最初に話の口火を切ったのは、色気がある壮年の男の声。

 声を出しているのは、細部に渡るまで装飾が施されたフルプレートアーマーを全身に纏う貴族──ジェズ・セグメンタ侯爵。


「分かってますとも。その贅沢の極みを尽くした鎧はいつも気になりますが、今は戦う準備がなによりも最優先です」


 次に口を開くのは物腰柔らかな印象の女性。紺色のショートヘアで豊満なバスト、四十六歳には見えない童顔の領主──マレイア・ビス辺境伯。

 全身鎧のジェズ侯爵とは対照的に、ビキニアーマーのような鎧を身に付けている。


「マレイア辺境伯……その格好が防具の供給不足を補うためとはいえ、こういう場での露出は控えたまえよ」

「こういう露出は普段からしてこそです。常に身を以て実践しなければ後から人は付いてきませんので、ポクニ公爵」

「そうかい。ワシは露出狂じゃないから分からんな」

「露出狂ですと?」


 マレイア辺境伯と口論するのは白い長髪の少女。元勇者の宮廷魔法使いで、ダブレメラズ魔法教団の当主──ポクニ・ドボルニンク・ダブレメラズ公爵。

 魔法で十代後半の年齢を保っている九十歳の老少女である。


「あ、あの、僕たちの目的は同じなんですから口論はなしにしましょう! ね?」


 口論がヒートアップしそうなマレイア辺境伯とポクニ公爵。

 その間に女の子の格好をした少年──リシタ・アルセイダ伯爵が割って入る。


「お二人共、良い年のレディなのですから若年のリシタ伯爵に言わせてはダメですよ」

「こほん、それもそうですわね」

「まぁ良かろう」

「それでは顔合わせはここまでにして、僕たちも向かいましょう」


 四人の領主と貴族は顔合わせを終えた。

 そこから四人揃ってルゼン王の下へ向かう。


「そちらの顔合わせは済ませたようだな」

「はい、ルゼン王」

「まぁ隣のテーブルにでも座って、紅茶を飲むと良い」

「ありがとうございます。我々も頂きます」


 ルゼン王と会話するジェズ侯爵を始めとして、四人は隣のテーブルの席に座る。

 メイドが出す紅茶。本題に入る前に、四人も香り立つ紅茶を飲む。


「これで揃ったな」

「本題かな、ロミ大臣?」

「そうです、ルゼン王。今こそ戦争に備える時です」

「ふむ。なにかあるとは思ったが、また戦争の話か」


 ロミ大臣が本題を切り出す。

 途端にルゼン王の表情は険しくなり、視線を自身の紅茶に落とした。


「ルゼン王、時間はあまりないかもしれません。侵略はあっという間です。場合によっては国民が絶滅に追いやられる可能性も否定出来ません」


 ユウは告げる。

 このまま備えず、侵略された場合に想定されるのは残酷な結末。

 ルゼン王は「絶滅か」と憂いた。


「ルゼン王、我々からもお願いです。そこの新しい勇者が言うような最悪の結果は招きたくありません。国防の強化は必要かと存じます」


 ジェズ侯爵が代表として四人の意見を告げる。


「初代魔王と同じことが起きるかもしれないのです、ルゼン王。戦時体制への移行が難しいのであれば国防の強化だけでも──」


 言いかけるロミ大臣に、ルゼン王が「国民の生活が変わるのだぞ」と言葉を刺す。


「王は国を動かす立場だが、国を支えているのは国民だ。戦時体制への移行にしても、国防の強化にしても、国民に変化を強いることになる。安易な判断は出来ない」


 ルゼン王は言う。

 戦時体制、国防の強化、戦争には多大なコストが掛かる。

 資源の消費増加、戦費調達、様々な要因で国民の生活に影響が出るだろう。

 国民のこと、国のことを想うルゼン王にとって判断は容易ではない。


「しかしながら国防は必要です。外敵の侵略に備えてこそ、国民は安心して生活出来るのですから」


 ロミ大臣は言う。

 コストが掛かろうとも国防は疎かに出来ない。安定した経済活動、人間として当たり前の日常生活は力によって保障されているのだから。


「国防も大切なのは分かっている」

「であれば……!」

「しかし対話で平和的解決が出来れば、国防や戦争のコストは抑えられるのだから──」


 ブオオオオオオオオオォォォォォォォォ!


 なんの前触れもなく突然訪れる怪音。

 ルゼン王とロミ大臣の口論を中断させ、その場の全員が頭を押さえる。


「うぇ、なにこの音!? 誰かクソデカいオナラでもした!?」

「僕じゃありません!」


 脳に直接響く終末音。

 しかしルーシーとリシタ伯爵の声は終末音に遮られず、誰の耳にも鮮明に聞こえる。

 それが意味するところは、これは音ではない。


「侵略が始まった」


 そしてこの音ではない音が侵略の合図。


「どういうこと?」

「この終末音は精神波状意識支配システムによるもの。生体兵器の制御に使われる。つまりは敵の兵器が本格的に動き出したということだ」


 ルーシーの疑問にユウは答える。

 この終末音は精神波状意識支配システムが起こす精神波の影響。耳で聞いているのではなく、脳で感じている音であった。


「ルゼン王! 大変です!」


 終末音の次は衛兵が来た。

 上がる息を整え、衛兵は「ドラゴンが来ます!」と緊急の報告をした。

 ルゼン王は目を見開く。

 その場の誰もが侵略の始まりを自覚していく。


「ルゼン王、今すぐ城の中へ! ロミ大臣も急いで!」


 ルゼン王とロミ大臣が城の中へ退避する時、既に影はやってくる。

 迫ってくる低音の咆哮。

 全長10mの敵が王都に影を落としながら、着地に丁度良い庭園に近付いてくる。


「来ましたぞ!」

「ドラゴンというよりはワイバーンですわね、あの魔物」

「マレイア辺境伯、ジェズ侯爵、ワシらは迎撃だ。リシタ伯爵は城の中へ隠れてなさい」

「は、はい!」


 その場の全員が敵を視認。

 戦闘が得意ではないリシタ伯爵も退避。

 ジェズ侯爵、マレイア辺境伯、ポクニ公爵は迎撃するために残る。


「ドラゴンだかワイバーンだか来るよ、ユウ君!」

「あれはスウォーム・ワイバーン。万から兆単位の数で運用する生体兵器だが……」


 黒く、赤い目の敵──スワォーム・ワイバーンが庭園に着地。

 牙が生え揃う口から炎を漏らし、ユウたちを視認する。


「全員、手は出さないでくれ。俺が奴に応じてみる」

「ちょっ、マジ!?」


 戦闘ではなく話し合いを選択。

 ユウは戦闘になっても真っ先に自分が狙われるように、敵の目の前に進む。


「応じるって、どうするつもりなんですの?」

「そもそも化け物が人間的に応じてくれるのだろうか」

「ともあれ今は新しい勇者、イサム・ユウを見守るしかありますまい」


 領主と貴族の三人は見守る。

 既に死と隣り合わせの状況。

 いつ戦闘が始まってもおかしくない。ピリピリとした緊張感が漂う。


「貴官、官姓名を答えよ。返答がない場合は撃破する」


 ユウは敵に話しかける。

 生体兵器には人間の意識が入っている場合がある。この行為はスワォーム・ワイバーンの中身に人間の意識が入っているかの確認も兼ねている。

 だが、敵は答えない。中身の意識は人間ではない。

 敵は精神波状意識支配システムに操られた、ただの生体兵器であった。


「了解した、撃破する」


 応じる口を持たず、敵は咆哮。

 直後、素早い動作で噛みつきに来る。

 ユウは回避をしない。自分以外に攻撃が向かないように、わざと自身の右腕に噛みつかせる。


「ユウ君!!」

「勇者殿!」


 一見して誰もが心配する光景。このまま右腕を噛みちぎられて当然の状況だが、ユウは顔色を全く変えない。

 その理由はマナ制御による身体強化。右腕の痛覚を遮断しつつ、敵の鋭い歯を食い込むだけに留めるほど肉体を強靭にしている。


「爆ぜろ」


 一言を発した直後、魔法のオーラを纏った右腕から思考型の爆発魔法を発した。

 敵の内部で起こる爆発。あまりの火力に敵は頭だけ残して爆散。

 辺りに外皮と肉、鮮血を飛び散らせる。

 目の前の敵は死んだ。戦闘はこの一瞬にして終わった。


「なんと……あれが噂の詠唱なしの魔法か」

「中々に興味深いですわね」


 ポクニ公爵とマレイア辺境伯の興味の目。右腕を引き抜き、無傷のユウに向けられる。


「ユウ君!」


 一方でルーシーはユウに向かって走り寄り、噛まれた右腕に触れた。


「すぐに回復魔法使うからじっとしてて」

「大丈夫だ、ダメージはない」

「あんな無茶して大丈夫って? ほら、大人しくしてんのよ」

「……分かった」


 言う通りにユウは大人しくなる。

 右腕に怪我はないものの、ルーシーの回復魔法を受け入れる。


「我の想いに恵みを与えよ、ヒール」


 現れる魔法陣。ルーシーの手から放つ回復の光がユウの右腕を包む。

 遮断した痛覚を元に戻しても痛みはない。回復魔法の効果が出ていた。


「痛みはどう?」

「取れた。それよりも……」


 スウォーム・ワイバーンの死骸を見る。


「スワォーム・ワイバーンがたったの一匹。これは威力偵察だ」


 ユウの中で広がる懸念。

 敵の次の出方は既に予測が付いている。


「次は本部隊がやってくる。戦争が始まる……いや、戦争が始まった」


 異世界侵攻の続き。神人類宇宙統一連盟軍の侵略が始まる。

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