▽第0話 終末の世界、上書きの光の中に消える魔王
初めてのファンタジー作品です
ラブコメ要素とSF要素とファンタジー要素をコンクリートミキサーで混ぜてぶちまけた作品ですが、よろしくお願いします
人類が極致に至った世界。
宇宙の全てを統一出来た、12000年代。
それは極致に至ると同時に異世界勢力と果てしない戦争をする時代。
「俺がこの世界を平和にしてみせる」
この世界に生まれ、戦争の悲劇を見ながら育った彼は答える。
異世界勢力との戦争、人類同士の内戦、終わらない戦火がもたらす悲劇を目にしてきた彼の決意は強かった。
決意が行動へと変わる時、彼は十四歳と若くして軍学校に入った。
「俺はこの世界を平和にするために、兵士になった」
彼は車イスに乗った友人に戦う理由を告げる。
そんな戦う理由と戦う決意を胸に、彼は魔法の源──マナの適合者として魔法兵となった。
彼は期待されていた。魔法の才能も戦いの才能もあり、十六歳の時点で既に最強レベルの魔法兵だった。
そして十八歳で軍学校を卒業した彼は最強の一人として、いつしか魔王と呼ばれるようになった。
だけれども異世界へ続くゲートを通って戦場に立った時、彼はようやく気付く。
「戦火を広げていたのは俺たちだった……?」
誰が戦いの原因か?
魔王の肩書を得た彼に、腐敗した神たちが手を伸ばす。
神と軍に命じられた異世界への侵攻。自軍による略奪と搾取、差別と虐殺がどこまでも続く。
そこに大義なんてものはない。
息絶えた親の横で子供が泣く光景。親が泣きながら殺された子を揺さぶる光景。
かつて見た悲劇を自軍が起こし、異世界勢力の報復がかつて見た悲劇を再現する。
こんな悲劇を起こす原因は侵略を仕掛ける魔王の側にあった。
では裏切るか?
彼は裏切れなかった。
強く信頼してくれる仲間に背けず、残虐な異世界侵攻をする軍の命令に反対出来ない空気感が出来ていた。
反対を言えば、粛清という形で家族から親戚まで皆殺しにされてもおかしくなかった。
だから彼は命令に従い続けた。
どこまでも、心身を擦り減らしてでも、従い続けた。
「俺が、みんなを……殺した……」
そして騙される。
事前情報なしの命令に従い、自分の仲間を、自分の家族を、魔法で焼いてしまった。
彼が放った魔法は異世界勢力の攻撃と脚色され、侵攻の更なる口実となる。世界を平和にしたくて鍛えた彼の魔法と戦技が権力を奪い合う内戦への引き金ともなる。
「俺は……」
神の手によって彼の戦う理由は汚された。
家族を失い、仲間を失い、人の悪意がひたすら顔を出す。
喪失感と共に脱力していく。
自分の命も、願ったことも、全て無駄だった。
≪魔王、君の力を借りたい。この宇宙全ての戦火を消すために≫
それでも彼は終わらなかった。
「悲劇はもういらない。繰り返させない」
反乱勢力のメッセージに耳を貸した時、彼は軍を抜けた。
これ以上の悲劇を繰り返させまいと、伝説的な艦隊──黒炎艦隊を筆頭とした反乱勢力の一人として再び戦場に立った。
そこから始まる戦いはどこまでも長い戦場、果てしない宇宙の端まで行き渡る終末戦争の戦火。
「悲劇は俺の分だけで充分だ」
彼は、魔法は、もう一度平和を願って戦い続ける。
戦場で無数に散る命と機械。傷付き、もげて、治療を繰り返す身体。何度でも立ち上がる気力。命を削り続ける魔法。宇宙に広がる戦火の輝きを消すための戦技。
おびただしい数の血肉と鉄塊で彩られる戦場。
星々と銀河が次々に破壊されていく終末戦争。
その末に機械に覆われた人類の故郷──地球から光が広がる。
暗い全宇宙を真っ白に上書きする破滅の光。
宇宙再誕の光。宇宙の上書き。
魔王は戦い続ける。今を生きる人々を、共に戦った仲間を、星々を、異世界へ逃がすために。
上書きの光の中に消えるまで、彼は戦い続ける。
既存の宇宙は終末へと向かう。
だけど彼の運命は終わらない。
破滅の光に上書きされて全てが終わる時、彼は異世界へ召喚された。
────
──
「……?」
「召喚の義、成功です!」
「明確な意思疎通が可能なようです」
「よろしい」
宇宙が上書きされていく終末の世界ではない場所。
謁見の間と思しきところで、彼は異世界の人間に囲まれている。
しかも理解出来る言語を話しており、なにを話しているか理解出来る。
「ようこそ、ルセーレ王国へ。新しい勇者殿?」
「え……?」
魔王は勇者として異世界へ召喚された。
それでも戦う理由は変わらない。
「早速だが、このルゼン王から直接魔物と魔王の討伐を君に依頼したい。我が王国を守ってくれるか?」
「……はい!」
彼は戦い続ける。今度も平和を願いながら。
私の過去作と若干の繋がりがありますが、気にしないで気軽にお読みください
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