表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【サメ映画和風アレンジ】デス畳 - DEATH TATAMI -  作者: 七谷こへ
第三章 兵器の起動・最終決戦
44/56

第43話 兵器の起動、最終決戦1


 “わけ知り顔”は、新デス畳の〈畳は時に局地災害デス・ダブルタイフーン〉によって吹き飛ばされていたとき、この屋敷へ来てからのことが脳裏をかけめぐるのを感じていた――


(これが、走馬灯でしょうか……。聞いたことはありましたが、実際に体感することができるとは……)


 まさしくB級ホラーに出てきそうな、山奥の屋敷を見たときの高揚感。

 デス畳に仲間たちが殺されていく絶望感。

 地下を捜索するときの、場違いながらリアル脱出ゲームでもしているような、かすかなよろこび。

 「兵器」の正体がメカ畳と知ったときの驚愕。

 いぐさを収集し、地下へおりたあと、“びびり八段”と手近な部屋へ隠れてデス畳たちを()き、そのあとで研究室へもどるまでのあせり――


 つぎに気づいたとき、自分は床に横たわっており、メガネが壁にぶつかって割れていた。

 また、“びびり八段”が少し先で尻を丸出しにしながらたおれていた。その頭のまわりには、赤い血がにじんでいる……

 ピクリとも動かない。


 短いあいだ、意識が飛んでいたようだった。

 遠くで会話が聞こえ、そちらへどうにか目を向けると、デス畳がメカ畳を破壊せんと迫っていたため、思わず声をあげる。


「ま、まってください……」


 まってもらったところで、どうしようという考えがあるわけではなかった。


(どうしたらいい、どうしたら……)


 とにかく思いついた言葉を口から出しながら、一方で頭をフル回転させた。

 痛みにあえぐふりをしながら周囲に目を走らせると、先ほど収集してきたいぐさの袋がないことに気がついた。


(袋はどこに……?)


 疑問に思ってメカ畳のほうへ目を()らすと、なんと、ミニ畳がよいしょよいしょと懸命(けんめい)に袋を運んでいるではないか!

 ちょうど、デス畳の位置からは死角になっており、自分に注目させていればひとまずは見つけられる心配はなさそうだ。

 よく見れば、メカ畳が()えられている機械の裏側に、まるで掃除機のようないぐさを吸引する装置が床と接していた。

 袋から中身を押し出して、ミニ畳はそこへせっせと入れているようだ。

 “わけ知り顔”は、ふと、


『その得体(えたい)の知れないバケモノは、必ずおれたちに災いをもたらすよ……』


 という、予言じみた“ゲス野郎”の警告を思い出す。

 これでは、災いをもたらすどころか……


「救世主ではありませんか……」


 と、思わずほほえんで声をもらした。


 とはいえ、ミニ畳には手があるわけではないので、スムーズに装置へいぐさを流すことができず、かなり時間がかかっている。

 ミニ畳が必死に動いてくれていることは理解しつつ、せっかくデス畳に長く話してもらうことができたのに、まだひと袋目も途中である模様だった。


(ええい、ままよ!)


 一か八か、ゴロンと転がって、まったく関係ない話をしてみる。

 少しでもデス畳をまどわせることができないかと、あえて「ふふ」と晴れやかに笑ってみせた。

 その長広舌(ちょうこうぜつ)が意外にも(こう)(そう)し、話し終えるころにはようやくミニ畳がふた袋目に突入していた。


「そうですか……それは、残念ですっ!」


 いましかないと、割れて飛んできていたレンズの破片を手にとり、デス畳へと投げつけて走った!

 とにかく気をそらし、一秒でも時間が稼げればそれでかまわない。


「行っけぇぇぇぇ!!」


 メガネを拾ったあと、あらんかぎりの力で、袋の尻をぶったたいてなかのいぐさを押し出した。


(本当は、もう少し、彼と会話してみたかった……)


 そう、少しの感傷が脳裏(のうり)をよぎると、阻止するために俊敏(しゅんびん)に追ってきた新デス畳の畳によって、せっかくかけ直したメガネとともに“わけ知り顔”はふたたび壁へとはじき飛ばされた。

 今度こそ、彼の象徴であるメガネのレンズはこなごなに割れてしまった。


 ギヌロンと、デス畳は状況を把握してミニ畳をにらむ。

 ミニ畳はおびえたようにふるえ、ふにゃふにゃと表面が波打っている。

 しかし、もはや袋のなかにほぼいぐさは残っておらず、ズモモモと激しい音を立て、すでにメカ畳の体内を()くかけめぐっているところであった。

 そして――


〈マッタタミエネルギー、チャージ完了。イグーサマッソーファイバー、8725本損傷ゼロ〉


 機械につけられた数々のランプが激しく点滅し、続々と赤から緑へと変じていく。

 密封していたなにかの気体を開放したらしく、周囲にスモークが噴出(ふんしゅつ)され、(ひろ)がっていった。


〈システム、オールグリーン〉


 高速で演算をすませてゆく電子音のうなりがひびき、機械音声が、ついにメカ畳の準備がととのった旨を、告げる。


『メカ畳、起動します』


 閉じていたひとみをカッと見ひらき、ついにメカ畳が据えつけの機械から立ちあがる。

 同時に、少し離れたところから、爆発音がとどろいた――


「……タミィィィ」


 研究室の入口を激しく破壊しながら、旧デス畳が、どこか昂奮(こうふん)したようなようすであらわれたのである――



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ