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【サメ映画和風アレンジ】デス畳 - DEATH TATAMI -  作者: 七谷こへ
第三章 兵器の起動・最終決戦
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第40話 “わけ知り顔”、瀕死の問いかけ


 ブォンブォンと大型の扇風機のような音がじょじょに静まり、奥義によって室内を蹂躙(じゅうりん)しつくした二枚の畳はまたひと組へと戻った。

 直立すると、大きな目が、畳のおもてへと浮かびあがる。

 研究室では、三人の人間が血を流してたおれており、動くけはいもない……


「……疲れる、な。即殺(そくさつ)も、できぬし」


 新デス畳が、ひとりごちる。

 そのまま、からだをメカ畳のほうへと向けた。


「……おまえか?」


 メカ畳へと、語りかける。

 先ほどデス畳の半身(一畳)から一撃を見舞われたメカ畳であったが、一見したところ破損(はそん)のようすは見られない。


『おまえとは、どのバージョンのことを指しているのでしょうか。ワタシは、7代目メカ畳であり、あなたとは、初対面デス』


「まあ……そうか。たしかに……死んだはずだ」


『あなたが言っているのは……6代目メカ畳のことデスか? ワタシと6代目は、エネルギー源以外は同じ構造をしています。6代目と、誤認したのではありませんか。ただ外観に関しては、3代目をのぞき、歴代のメカ畳でそう大きく異なるものではありませんでしたが……』


「何代目かなど……知らん。似たようなのを、叩きつぶした記憶は何度かあるが……。ふりかかった火の粉を、はらっただけだ。まあ……アイツはそのなかでも骨があったが……」


 低い声で、デス畳はボソボソとつぶやく。

 メカ畳はおだやかな、抑揚(よくよう)のない声で宣戦(せんせん)布告(ふこく)する。


『デス畳……ワタシはあなたを、あなたたちを殲滅(せんめつ)しますデス』


 デス畳は、鼻で笑うような音をもらした。


「そのざまでか……? その機械から、動けないのでは、ないか? たしかパワーだけあってのろいヤツもいたが、おまえはそれにも劣る……。先ほどの一撃程度ではさほどダメージを受けていないようだが、(オレ)の本気の、一撃をくらっても……同じことが言えるかどうか」


 二畳が組み合わさったデス畳は、筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)たるプロレスラーが音高く両腕を胸筋へぶつけるがごとく、バフン、バフンと両の畳を叩いて腕鳴らし――いや畳鳴らしをしてみせた。


 メカ畳は、挑んでおいて動けぬその身を嘆くようすも、身じろぎするようすも見られぬ。


 そのとき――ピクリと“わけ知り顔”の指が動いた。


「ま、まってください……」


 デス畳の視線が、瀕死の虫のように床でピクピクとのたうつ脆弱(ぜいじゃく)なる人間のほうへと向く。

 “わけ知り顔”は、メガネがないままメガネをクイッとあげるような動作をして、眉間に流れる血をぬぐうと言った。


「新デス畳氏――いえ、兄デス畳氏。私が見たところ、弟は好戦的で、私たちをひとりでも殺そうと積極的にせまってきていましたが、あなたは同族である弟のピンチのときや、われわれが逃走しようとしたときなど、なんらかの理由があるときが中心で、『人を殺すこと』そのものが主目的であるようには思えませんでした。もしかしたら、あなたは本当は……人を殺したくないのではありませんか? おだやかな、畳としての一生を望んでいるのでは……」


 力をふりしぼってデス畳を凝視(ぎょうし)し、相手の反応を懸命(けんめい)に観察しながら、いとぐちを探るようにゆっくりと語りかける。

 しかしデス畳はなんらの感情もおもてに出さず、答えた。


「しゃべるのは……得意では、ない。ただ、キサマら人間を積極的には殺さぬのは、そう、ここの娘……名をなんといったか、もう思い出せぬが……あの人間と同じような理由だ」

「……?」

「娘が、和室に大きな虫が出たとき、ほかの人間と話していた。『ここで殺すと体液が飛び散ってきたない』と。それと、同じことだ……」


 “わけ知り顔”は、要領を得にくいその説明に息をのみ、あらためて意を問うた。


「つまり……人間を殺すと血や肉が散って、きたないから、だから積極的には殺さないだけ、だと……?」


 デス畳は無言にて肯定した。

 “わけ知り顔”は(げき)して、床を叩いて吠える。


「人間を……なんだと思っているのですか……! そんな、そんな理由しかないのですか。死ねば、その人の人生は、そこで終わりなんですよ。みな、まだこれからの人生があった人ばかりなのに、あなたはその程度の認識で……!」


「……キサマは?」


「……え?」


「キサマら、人間は、なにを思って畳のことを踏みにじる? よごしたときなにを思う? 廃棄のたびに……涙を流すのか。いずれどうでもいいことだが、つまり畳も、人間も、等しく大したモノ(ヽヽヽヽヽ)ではない(ヽヽヽヽ)……」


 “わけ知り顔”は言葉につまり、こぶしを握った。

 ちらりとメカ畳のほうへ目をやり、それでもとしゃべりかけつづける。


「私たちを……殺すのですか」


「……そうなる」


「あなたたちに、これ以上手を出しません。すぐにここから出ていきます……それでもダメでしょうか」


「せっかく無人になって、しずかに眠れていたのに、またやっかいな刺客でも呼ばれると……こまる。呼ぶか、呼ばぬかわからぬが、殺したほうが、早い」


「決して呼びません……とは言っても、信用してはもらえないのでしょうね……」


「まあ、女、といったか、その種類の人間はわからん……。弟は、ここの娘のような、女をもとめている。(オレ)はめんどうだから殺してしまいたいが、起きてしまっているいま、殺すとうるさいからな……」


「娘というのは、このお屋敷のお嬢さんのことでしょうか……? もしかして、そのお嬢さんにこうなった原因が……?」


「あれは、かえすがえすも、阿呆(あほう)なことだった……」


 と、新デス畳が訥々(とつとつ)と語ったところは、“わけ知り顔”を驚愕させるに十分な内容であった――


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