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熊と人間

熊と人間の対立した世界で繰り出される現実。

小熊のミッダは平和な暮らしをしていた。

ある時、『人間てどんな生き物なのかな?』と興味が湧いて――?

 僕はミッダ。お父さん、お母さんと洞窟でひっそりと暮らしている。お母さんのお話を小さい頃から聞いて育った。よく、私たちは人間と対立する存在だから、人間に心を許してはならないと教わっていた。人間からすると僕たちは、モンスター扱いされているらしい。それでも僕たちが今まで生活できていたのは、お父さんのおかげだ。お父さんは、森の住人であるクマ村長たちと、この周辺の森や洞窟といった地域を守ってくれている。


 そんなある日、森に人間が出入りしているという情報が入ったのだ。僕は人間を今まで一度も見たことがない。遠くからでもいいから、一度だけ見てみたい好奇心が勝ってしまい、見回りに向かうお父さんの後を追うのだった。洞窟から森へ、森から外まで向かう途中、僕はお父さんに気付かれないように、足音を消して歩いた。だんだん森から離れ、木々が無くなる場所まできたものだから、隠れる場所がない。仕方なく森の端っこで待機していた。

 そのとき、バァンという大きな音が鳴った。何の音か分かるまで時間はかからなかった。森の外のすぐ傍に大勢の人間が立っていた。お父さんは人間が持っていた銃で撃たれてしまっていた。咄嗟に僕は飛び出てしまった。


「お父さん!!」


 と必死になってお父さんの方へ向かい全力で走った。途中、バァンと何度か銃を撃たれたけど、それは僕には当たらなかった。お父さんの元へ駆け寄り、泣き付いた。お父さんの体からは真っ赤な血が出ていて、動けない状態になっていた。


「ミッダ!?どうしてここに?」


「ごめんなさい、人間がどんな生き物なのか見て見たくて、ここまで来ちゃった」


「そんな……いいから早く逃げなさい!!」


 お父さんの形相を見て、僕は反動で体が動いた。しかし人間たちに囲まれ銃を向けられている。どうしたものかと迷ったが、僕は人間を襲わずに逃げることにした。


「撃てーー!!」


「ミッダ、いいから逃げろ!!」


 人間の一人が大声を挙げて命令をした後、お父さんの声は聞こえなくなった。僕は無我夢中で走って、運良く逃げ延びることができた。いつもの洞窟へ向かいながらモヤモヤ考えた。


「(お母さん、悲しむかな……僕のせいだ……。でも、どちらにしろお父さんは人間に撃たれて……そして……。)」

 

 考えるほどに苦しくなっていくので、一旦止めた。そして森の村長様とお母さんに報告することにしたのだ。


「ミッダ!?どこに行ってたの?心配したじゃない」


「お母さん、あのね……聞いて欲しいことがあるんだ……」

 

 僕の話を聞いた途端、お母さんは大粒の涙を流して泣いていた。僕は胸が張り裂けそうになった。


「勝手なことをしてごめんなさい……」

 

 お母さんは涙を拭きながら


「村長様に報告しましょう」


 と言い、急いで村長の元へ向かった。


 その日の夕暮れ、森の住民たち全員が集まり、話し合いが行われた。それは今後の方針についてだ。心配や不安に駆られる住人の声が多く集まった。みんなで話し合った結論は、森を移動することだった。最終的な決定権は村長様にあったけど、やっぱり人間が森の近くまで来ている危機感を感じ取って、別の森で暮らす方向となった。


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