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リクの神託

「うんうん、みんな元気で何よりです。ユーリ君も言っていましたが、あくまでも神から与えれる職業は未来への可能性、そのほんの小さなきっかけに過ぎなのです。」


神父様は僕たちを見渡すとそう話しだした。


「魔王が復活して久しいこの時代、富や名声の為に冒険者を目指し、そのために戦闘系の職業を望む若者が多くなりました。

ですが例え非戦闘系であろうと戦えないということは無いのです。

皆さんも知っている通り、かの聖人マルバスは『木登り』の職種でした。

ですが彼は弛まぬ努力の結果、勇者様と共に当時の魔王を打ち滅ぼしたといいます。


非戦闘系の職業を発現した者の多くは戦場から離れると聞きます…

確かに、生死を賭ける以上不安を感じることでしょう。

ですがそれは望んだ職業を得られず、それを言い訳に自己研鑽を止め、流されるままになってしまっただけのように私は思います。

それは今までの努力を、夢を捨てるのと同義であると…

それは実に悲しいことです。

ですが、ここにいる皆さんは今までの神託の儀に望んだ方々と違い、希望に満ち溢れている。

例え望んだものであれ、また、望んだものでは無かったとしても皆さんが今までと変わらず大切な夢を叶える為に努力することを望みます。」


神父様が語り終わると僕たちは強く頷いた。


神父様はそんな僕たちをみて微笑むと。


「ではこれより神託の儀を執り行います。名前を呼ばれた者は神像の前に」

神父様の雰囲気が今までのものと違い、聖職者のものへと変わり一気に場の空気が変わった。


「リク=シルド前へ」


「んじゃ、行ってくるわ」

「おう!」

「いってらっしゃーい!!」

「アミィ、静かに…」

「それは無理でしょ」

「あはは!シャイラちゃんわかってるぅ!」

「お前らうるっせぇええぞぉおおおお!!!」


お前が一番うるせえよ。


神像の前に立ったリクはその場で片膝をつけ神への祈りを始めた。


リクが冒険者になりたい理由、それはリクの父親が冒険者だったからである。


リクの父は名の通った冒険者であり、小さい頃から話を聞いてきたリクは優しく偉大な父への、そして冒険への憧れを強く持っていた。


そして尊敬する父ですら届かなかった最上位冒険者になることを夢見てきた。


その為に努力をするのは当然のことであり、同じく冒険者志望である幼馴染たちと切磋琢磨してきたリクは、この運命の日に自分だけがもし戦闘系ではなかったら…と柄にも無く緊張していた。


だがその不安はもう無い。


職業は絶対ではないと。夢に向かって進むだけだと幼馴染が教えてくれた。


だから神託の儀も落ち着いていられる。


どのようなものであれ夢を諦めることはなく自分は冒険者になる。必ずなってみせる。


幼馴染に感謝をしながらリクは神像に祈った。




リクが祈り始めて少しして、神様の像が光り始めた。

「眩しいね…お兄ちゃん…」

アミィが小さく呟くと

「神さまがリクの祈りに応えてくれているんです…美しい光景ですね…」

ルドはこの光景に感動しているようだった。


「神託の儀ってこんなに綺麗なんだね…生まれてからずっといるこの町で、こんなに綺麗な光景があるなら…世界にはもっともっとたくさんあるんだよね…」

シャイラはこの神秘的な光景を見て、より強く世界を見て周りたいと思ったようだ。


「もちろん世界には見るのも辛かったり、立ち入りたく無いような場所もあると思う…でも、それでも私は自分の目で見て確かめたい…」


「出来るさ…みんながいれば…」


僕は心からそう言った。


「そうだよね…みんながいれば出来るよね…!」

「あぁ…!」


そうしているうちに光が徐々に小さくなり、リクの体に吸い込まれるように入っていった。

そして神父様が鑑定を行い、宣言を行う。


「リク=シルド、君の職業は…





『魔剣士』だ」



「よ…よっしゃやあああああああ!!」

「おめでとう!!」

「すごーい!リクおめおめー!!」

上位戦闘系職業、魔剣士。

有する能力は自身への属性付与、身体能力の超向上、傷つけた相手からのドレイン能力、武器の魔剣化、と攻防共に優れた職業である。

みんなの為に常に勇敢に前で戦い、みんなを守る為に傷ついてきたリクにふさわしい職業である。


この場にいる全員が心からリクを祝福し、そんなリクは満面の笑みを浮かべながら少しだけ、ほんの少しだけ涙を滲ませていた。

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