教会前
「やったー!私の勝ちー!!」
教会の扉の前で満面の笑顔で僕にピースをするシャイラ。
「そりゃ…僕より…前にいて…僕より…先に…走り出したシャイラに勝てる訳ないよね??正々堂々って言葉知ってる??」
「私が知っているのは勝てば官軍という素晴らしい言葉だけ」
「それは素晴らしい言葉と記憶力ですこと…」
シャイラ主催の理不尽レースは、当然先手を打ったシャイラの勝利に終わった。
「お前ら急に走っていったと思ったら何してんだ?」
僕とシャイラのあとからやってきたリクは呆れたようにそう聞いてきた。
あくまでレースは僕とシャイラの勝負であり、他のみんなには関係がない、先に行っていたリクたちを追い抜いて死力を尽くしたがこの魔王には勝てなかった。
「ふふーん、あのねー私とユーリが教会まで競争して負けた方がみんなにお昼を奢るって勝負をしてたの!もちろん結果は私の勝ちー!!いぇーい!」
「マジか!でかしたシャイラ!たらふく食ってやる!」
「ナイスー!ユーリ君ゴチでーす!!」
「私の考えてる通りだと恐らくユーリ君に不利な状況からのスタートだと思うのですが…それはそれとしてユーリ君、ご馳走になります」
「お前らには人の情ってものがないのかぁああああ!!」
こうは言ったが勝負事に対してこの幼馴染たちは容赦がない。
たとえ棚ぼたであろうとも、自分に一切不利がない状況であるならば自分が関与していなくても利益があるなら享受することにためらいはない。
それが僕たち幼馴染の勝負である。
なぜここまで言えるかって?僕も同じ立場なら利益を受け取るからである。
グッバイ、僕のお小遣い。
ただまぁこの勝負は僕の負け確定の状況だったのだが、今回に関してだけは甘んじて受け入れよう。
「よっしゃ!!じゃあさっさと神託の儀を受けてユーリにメシ奢ってもらおうぜ!」
「リク君にさんせー!もちろん甘いものもいいんだよね!」
「甘いものもいいですけど食べ過ぎには注意ですよアミィ」
「行くよー!ユーリ!」
「はいはい、今行きますよー」
だってみんなから緊張が消えたのだから。