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教会への道

この世界、アルテシアには15歳になると神様から職業をいただける神託の儀というものがある。


無条件で軍に歓迎されるような戦闘系、人々の生活に欠かせないないような一般系、歌や踊りに絵描きなどの娯楽系など様々な職種がある。


中には神様、一体どうすればいいんですか?と聞きたくなるような不遇職もあるにはあるが。


「神より与えられる職業を蔑む者は、神を蔑む者と同義である」

という国王陛下並びに教皇猊下のお言葉により表立って不遇職を蔑む者はいなくなった。


まぁ「表立って」というだけで差別自体が無くなったわけではないのだが。

人の意識というのはなかなか変わらないものである。

差別が酷かった時代を知る人からすれば少しずつ良くなってきている、ということなので僕がこの世から去る頃には差別自体が無くなっていることを願うばかりである。


それに僕、ユーリ=イルマは神託の儀の結果について不平不満を言うつもりはない。

どんな職業をいただいたとしても僕の夢に向かって努力し続けるだけなのだから。


「ユーリさぁ…教会に着いたら神託の儀だっていうのに全然緊張してないよね?」

隣を歩く幼馴染のシャイラは若干呆れたような目でそう話しかけてきた。

彼女は僕の家のお隣さんで、幼馴染たちと行う狩りでは弓を使い牽制と本命を絶妙に使い分け、僕たちが動きやすいようにしてくれている、みんなのまとめ役みたいなポジションである。

狩りのとき邪魔だから!という理由で長かった黒髪をボブまで切ったのだが正直僕の好みどストレートです。本当にありがとうございます。



「緊張する必要無くない?」

「いやいや普通は緊張するでしょ!?だっていただける職業によってはこの先の人生変わっちゃうかもしれないんだよ!?」


そう、神様から与えられる職によっては確かに人生が変わる人もいる。


例えば剣を握ったことも無い農民が『聖騎士』の職を授けられることにより、剣の達人となり一騎当千の活躍をし賞賛され勲章を得ることもある。


逆に生まれてからずっと剣と共に生き、将来を嘱望されていた剣士が『農民』の職を授けられ剣士としての未来が閉ざされ、農家になることもある。


後者はそのまま剣士を続けるという道もあるが、やはり戦闘系と非戦闘系の違いにより周囲との実力に差がつき心が折れてしまう、という人が多い。


故に15歳の神託の儀は「人生が決定される時」として多くの人は程度の差はあれど緊張するものである。


「ユーリ以外みんな緊張してるだよ?ほらルドやアミィ、普段俺様のリクも吐きそうな顔してるじゃん!!」

そう言われて他の幼馴染の顔を見てみると、なるほど確かにみんな普段と違う様子だった。


リクは僕たち幼馴染の中で一番身長が高く、鍛え上げた身体を活かした両手剣がトレードマーク。

せっかく美少年なのに顔に傷が…という人もいるが、それは彼が狩りでは誰よりも前にいてみんなの剣であり、みんなの盾となってくれている…そんな仲間想いの本質を示す証である。

口は悪いが困っていれば「んだよ…しゃあねぇなぁ…」と助けてくれる…お前はツンデレか?


そんなリーダー気質のリクも緊張しているようだ。

「誰が吐きそうな顔だ!!いいか、俺は冒険者になるって夢を叶える為に今まで頑張ってきたんだ!神様だってそれを見ていてくれてるんだから今更緊張なんてするわけねぇだろ!」


リクはそう言っているがやはり不安はあるのだろう、若干声を震わせながら前へ進んでいった。


その後ろにいるのは双子のルドとアミィ。

ルドはアミィより先に生まれたお兄ちゃんとして、妹のアミィをいつも心配していた。

アミィが冒険者志望ということでルドも冒険者になるために努力してきた。

線の細い、常に笑顔を絶やさない美少年。という印象を与えるが誰よりも芯が強く、魔法の知識も大人顔負けである。

後方からの魔法にいつも助けられているし、なによりルドの作るご飯は美味しい。毎日毎食ご飯作って下さいお願いします。



妹のアミィはいつも元気な、ルドの…というよりはみんなの妹みたいな感じである。

狩りの最中では後方にいることが多いが、常に周囲の状態に目を向けて誰も怪我をしないよう注意してくれている。

仮に怪我をしようものならすぐに駆けつけて治療をしてくれるのだが…とにかく治療をしててもうるさい。

リクの残っているキズもアミィがうるさいので余程のもので無い限り治療から逃げる為である。

もう少しだけ本人に静かにしていただけると見た目はお淑やかそうな美少女なのだが…まぁアミィには無理だろう。うん、無理無理。


…てゆーか改めて考えると僕の幼馴染は美少年と美少女しかいないのかよ…理不尽すぎるだろ…


「私たちも冒険者になる為に今日まで頑張ってきたので神様は応えてくれると信じています…ね、アミィ」

「うん、冒険者になって一攫千金するために!!だから神様お願いしますぅうううう!お兄ちゃんとアミィちゃんを冒険者にしてくださぃいいいいい!」

ルドとアミィも緊張を誤魔化すように仲良く手を繋いでリクを追いかけていった。


僕の隣を歩くシャイラにも世界中を見て回るという夢がある。


そう、僕の幼馴染たちはみんな冒険者志望なのだ。

小さい頃からずっと冒険者になるために努力し続けてきた仲の良い幼馴染たち。


「あいつらでも緊張するんだな…」

「普通は緊張するものなの…ユーリがおかしいだけ」

「今日のシャイラは辛辣だなぁ…やるべきことはやってきた!例えどんな職でも夢に向かって進むだけさ!

だから緊張する必要がないだけだよ」

「そりゃまぁユーリが頑張ってるのは知ってるけどさぁ…少しくらい緊張してもいいんじゃない…?

ていうかユーリだけ将来の夢を教えてくれてないけど、いつ教えてくれるの?」

「前から言ってるけど神託の儀が終わった後教えるよ、それまでは内緒。お楽しみは最後の方が楽しいでしょ?」

「お楽しみって…まぁ剣や弓、魔法や冒険者としての知識を身につけてる時点で大体想像できてるんだけど…?」

ニマニマしながら僕の顔を覗き込んでくるシャイラ、いくら幼馴染とはいえ顔を近づけられると少し恥ずかしい。

少しは彼女も緊張がほぐれたようだ。

「ノーコメントでーす。正解はあとからのお楽しみ!」

「はいはい、わかったわよ…」

シャイラは苦笑しながら前に出て、そのままなぜか走り出したと思ったら

「もう少しで教会だから競争ね!負けた方はみんなにお昼を奢ること!ヨーイ、ドン!」

満面の笑顔でそんなことをいい全力疾走を始めやがった。


「ちょっ!?走りだしてからそれ言うのずるくないシャイラー!!」

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