第二話:ギルドへ
出発して、体感3時間ほど歩いた。
道中はモンスターがほぼいないので、俺はじっくり話を聞いてみた。
わかったことは大きく四つ。
一つ、大方の予想通りエルフやドワーフ、魔物や魔人といった概念はバチコリといるらしい。
二つ、魔法を使える人は5〜6割。あとメイは使える側の人間。
三つ、モンスターを倒すとレベルが上がる、実際さっきのゴブリンを倒してレベルが1から3に
上がってる。ステータスも指数関数的な伸びだ。さすが異世界チート。
四つ、この世界において黒い髪は結構稀で、大半の人が何かに秀でているらしい。
俺はなんだろう、床○ナくらいしか思いつかん。
とまあこんな感じ。
いわゆる異世界って感じだな。
そのほか色々と聞いた話を整理しながら歩いているとメイが何やら指を刺した。
街だ。
石壁で囲まれていて、入り口では門番らしき屈強そうな兵士が持ち物チェックと通行料の徴収をしていた。
ん?通行料?金なんて持ってないけど…。
「考えがあるから私に任せて」
俺の不安を感じ取ったのだろうか。
そう言うとメイは何やらゴソゴソし始めたが、よくわからないので任せよう。
そしてそのまま、俺たちは入場待ちの列に並んだ。
「次!手荷物を出して両手を上げろ」
前の人通り、門兵に従い両手をあげる。
手荷物はないのでポケットとか、最初から腰についてた短刀とかを調べられた。
メイも難なく突破した模様。さて問題は…、
とその時、メイが門兵に体を寄せ何やらメモのようなものを渡し、
ローブの隙間から、これはこれはたわわに実った胸の谷間を見せて、小さく何か囁いた。
これはあれだ…、『体で払う』ってやつだ!!
むっふふ〜、異世界一発目のズリネタ提供、感謝感謝。
落ち着けよ相棒、すぐに楽にしてやっから。
無事、町に入ることができた俺たちは、とりあえず街の様子をぐるっと見て回ることにした。
「それにしても、大丈夫なの?あんなおっさん相手に、その…」
流石に気になったので聞いてみた。
「大丈夫、紙に書いた情報は全部嘘だから。
あと、あのアホが胸に釘付けになってる間に、他の人が払った通行税を少々拝借してきたの。
今日の宿代とご飯代ゲット!」
こっわぁ…。
ハニートラップからの窃盗をするヒロイン、大丈夫かよ。
でも確かに困ってたから今回は目をつぶろう。
一通り街を見終わった後、いい感じの宿があったのでとりあえずチェックインだけして
近くの酒場で今後について話し合うことにした。
「あの、俺は朝イチでギルドに行ってみるけど、君はどうするの?」
THE・異世界の飯って感じの骨付き肉を食べながら聞いてみた。
「私も行く!ずっと冒険者に憧れてたんだもん!
だからその…、私もついて行っていいかな」
おっとっと、理性の壁崩壊、東西統一の予感。
メイの頬は赤らんで、完全にメスの顔をしている。
やっぱツラがいいとこんな簡単にモテ期が来るのか……、真理だな。
「いいんだけど…、俺特に戦いのスキルとか能力ないんだよね。メイちゃんは
魔法使えるってことは、魔法使いで行くの?」
この世界は、ギルドカードに職業を自分で登録できるようで、
適正試験とかも特にないから、上級職以外なら自由選択とか。
「一応そのつもり、かな。パンチしたりキックしたりはあんまり自信がないから」
魔法か。
んー、俺のスキルを使えば人のステータスとかも見れるんだろうか。
勝手にのぞいてみようーー
お、どうやら見れるっぽい。
体力や素早さは普通だ、でも魔力量が多い。異世界補正がかかってる俺より高い。
それにステータスの伸び代値がすごい。
あとは…、Gカップ。なるほどえっちな情報も見れるのか。
透視と併せて、今後とんでもないことに使ってやろう。
「ルインは? 何か得意なこととかあるの?」
どぎつい妄想をしているとメイが聞いてきた。
得意なこと……、床○ナマスターとか言う職業無いかな。
学生時代はずっと文化部だったし、運動は嫌い。
でもぶっ壊れステータスとスキルが確約されてるわけで、決して弱いわけじゃない。
「無難に剣士かな。うまいこと魔法も組み合わせて魔法戦士とか目指したいな」
別に職業なんてなんでもいい。
この世界に来た明確な目的がない以上、今のとこのんびり旅をしたいし。
「そっか、とりあえず今は新しいパーティの結成に乾杯でもしましょう!」
そういうメイの顔は、酔っているのか既に赤い。
まさか初日から推しそっくりのチョロインが仲間になるとは異世界も捨てたもんじゃないな。
あれ、ていうかこの流れ。
お持ち帰りコース確定じゃないか?木下翔24歳……ついに、ついに童貞をーー
*****
ーーギルドへーー
美少女ヒロインお持ち帰り。
なーんてことはなく、昨日はあの後別々の部屋で寝た。
ま、まあ? 女の子にも色々と? タイミングがあるんだろう? 知らんけど。
とにかく今日はギルドへ行く日。
まがりなりにも冒険者としての門出だ、自然と気合が入る。
身支度を終えメイと合流し、街の中心部の丘にあるギルドを目指す。
改めて、初めて見る街並みは圧巻だ。
石畳が丁寧に敷かれた道に、色鮮やかな家並。澄んだ川が街中に通っていて、
町全体から朗らかな雰囲気が漂っている。
テレビで見たイタリア辺りの町にそっくりだな。
ギルドまでは、道中腹拵えをしたりしてゆっくりと向かった。
しばらく歩き、緩やかな長い坂を登り終えると、大きな建物。
看板には『エアスト ギルド』と書いてあるっぽい。
分厚い扉を開けて中に入る。
これあれだ、『ガキが何しにきやがった!』みたいな流れだろ。
でも、行くしかねえーー
恐る恐る中を覗くと、いかにも冒険者って感じの
ガチムチマッチョでごった返していた。
そして最悪なことに、そのうちの一人と目が合ってしまった。
そのマッチョは立ち上がってこっちに向かってくる。
「おい、にいちゃんや」
「ひ、ひゃい…」
肩をおもいきり掴まれ、思わず目を瞑る。
あ、詰んだ。どうしよう、エリンを差し出して逃げたいーー
「もしかして、駆け出し冒険者か!? 入れ入れ!
カードは持ってるか?ないならあそこの受付でだなーー」
あっれぇえ、完全に予想と違う流れ。
最低な方法で逃げようとしてたカスはどこの誰でしょう…。
予想外の歓迎を受け、するするっと中に入れてもらった。
受付には、メイド服っぽい女名の人が立っていた。
「あのー、ギルドカードの登録をしたいんですけど…」
「新人冒険者さんですね!少々お待ちくださいね」
そう言うと一瞬席を外し、奥の部屋から何か持ってきた。
「ではこちらにお名前と希望する職業を記入してください
それが完了したら血判を捺していただきます」
手渡されたのは、新品のギルドカードと一本のペン。
このカード、不思議な材質だ。
木みたいな柔らかみがあるけど、鉄やコンクリみたいな頑丈さもある。
エリンが俺より一足先に書き終え、血判を捺した。
すると、魔法陣のようなものが浮かび上がってきて、そのままカードに刻印される。
なるほど、あれで正式登録完了らしい。では俺もーー
………。
おかしい、魔法陣が出てこない。受付の姉ちゃんも戸惑っている。
その刹那、俺の書いた職業欄の”剣士”の文字が消えた。
そして浮かび上がる”自殺者”の文字ーー
「あ、あの…、職業はこちら、でよろしいのでしょうか?」
苦笑いで聞かれても困るわ、これしか選択肢ないっぽいんだもん。
なんだよ”スイサイダー”って、ニチアサか?
現実逃避戦隊スイサイダーってか?
「それで、大丈夫です」
俺は諦めて全てを受け入れた。
その後あんまり職種は関係ないとか、必死のフォローが入ったがショックでよく覚えてない。
早いとこ、ダー○神殿的なやつを探そう。
その他、小一時間ほど冒険の際の注意や万が一の際の対応といった講習を受けた。
あと、初期装備的なやつをもらったり。
俺は刀があるので、革製の防具っぽいやつだけ。
メイは、某魔法映画そっくりの短杖をもらっていた。
そしてそれが終わると完全自由。
早速クエストを受けてもいいし、後日改めてでもいいらしい。
なので、クエストは数日後に受けよう。
今日はこれからやるべきことがあるからな。
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