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ずっと行きたかったパンケーキ屋さんに(もうすぐ閉店と知って)行ってきました

作者: 庭咲瑞花

 最近、引っ越ししました。


 今日は引っ越し後はじめてのお休みです。何をするかといえば──








 それはもちろん「引っ越し後の片付け」ですよね?




 ……と、今日はこんな感じで一日の朝が始まりまして。最終的にパンケーキを食べて私が幸せになったという話をつらつらと書いていこうと思います。


 はい、ではまず今朝の私はといいますと、母と共に引っ越し前の家にまだ残っていたあれこれを分別したり、掃除したり、使えるものを新居に運んだり……としておりました。

 なお父は今回のエッセイには出てきません。


 そしてエアコンを新居に移してもらうための準備とか、住民票の色々とかで母と共に方々を回って……「午後からはゴミ処理場に行こう。その前にランチ何食べる?」という話になりまして。


 そこでたまたま、近くに前々から行きたかったパンケーキ屋さんがあったのですね。

 今まで一度も行ったことがなかったパンケーキ屋さん。どんなメニューがあるのかな、とスマホで検索してみたのですが。




 ──公式サイトに「閉店のお知らせ」が載っていたのです。


 で、よくよく読んでみれば閉店するのはこの春とのこと。その予定日まではもう少しあることがわかりまして……私と母は軽い気持ちでそのお店に向かったわけです。


 胸がときめく壮麗(そうれい)な外観の建造物の端で、ちょこんと営業しているパンケーキ屋さん。

 外に置いてあるメニュー表を──一応ネットでは軽く調べたけれど──確認して。うん、個数限定のパンケーキやっぱり美味しそう。ラストオーダーの時間も、ヨシ。


 意気揚々(いきようよう)とパンケーキ屋さんの扉を引き、私たち二人はお店に足を踏み入れました。


「いらっしゃいませ。何名様でしょうか? ──二名様ですね。ただいま席が埋まっておりまして……」


 ああ、やっぱり……。もうすぐ閉店というだけはある。仕方がないよね。


 そんなこんなで予約して、待合室的なところに案内された私たち。

 外観に負けず劣らず美しく、どうやら今日は結婚式があったみたい。名前も顔も知らないみなさん、おめでとうございます。


 ……といった感じで、通路を広げてサロンのようにした部屋の一角、横長のソファの上に腰掛けた私たち。クッションつきでフカフカ。上品な光沢のあるソファに座っているだけでテンションが上がって仕方がありませんでした。


 他の皆様が写らないように、と気をつけながら数枚写真を撮りましたが……。

 水を打ったように静まり返ったという言葉がピッタリなホール内に、私のスマホのシャッター音がやたらでは済まないレベルで大きく聞こえたので、二枚程度で私得な撮影会は中止しました。ハズカシイ……。




 しかし、私たちの戦いはここからでした。待てども待てども呼ばれない。十組以上の予約が入っていたのだから当然といえば当然です。母からは、


「本当はゴミ処理場に行きたかったのになぁ~」

「ラストオーダーまでもう三十分もないよ」


 ……などと言われてしまいました。

 (なお、後者の発言を聞いた時は私もガクブルでした)


 でもどうしても食べたかった(しかももうすぐ閉店してしまう&次予定が合うタイミングがわからなかったのだから仕方ないのです。……母にはちょっとだけ申し訳なく思っております)ので、心の中でドキドキしながらも、呼ばれるのをただひたすら待っていました。




 何組呼ばれたのか、何組キャンセルが入ったのかわからず、お店に立ち入ってから一時間弱ぐらい経った頃。


「二名でお待ちの庭咲(もちろん本当の苗字ではないので、呼ばれたのはそちらです)様~」


 私は待っていましたとばかりにスマホをスリーブさせて立ち上がり、母と共に再び店内へと向かったのです……!




 ふと、先ほど入店した時とは違い、内側の通用口から繋がった扉を開けようとしたその時、入口のメニュー表を見れば。


「えっラストオーダーまでの時間、外に書いてあるものよりも一時間以上長い……」


 そういうわけで、ラストオーダーまで一時間半ぐらいだと知って少しだけ安心した私。


 なぜ少しかと言いますと。ここまで盛況となってくると、個数限定パンケーキの在庫がない、という可能性が高いからですね。

 限定パンケーキなさそうだし何を注文しようかな、とちょっと諦めモードの私は通用口の扉を手前に引きました。




 先ほど入店した時には、ゆっくりと見ることができなかったそこ。

 見回してみると、暖色系の光で彩られた店内。奥には厨房がしっかり見えている店内の、真ん中辺りの真四角のテーブルへと私たちは案内されました。


 こんなにときめくお店が閉店してしまうなんて、とちょっとだけ残念に思いながらも、私はテーブルに置かれたメニュー表に手をかけます。本当に何にしようかな。


 ──と、ほんの少しだけネガネガしながらメニュー表を開くと、中には個数限定パンケーキが。私の心の中は期待一色に染まります。


 パンケーキを頼むとジュースが安くなる……というのを見て、注文する内容を決めて。母の注文するものも決まると、母がお店の人を呼びます。

 注文を聞かれて私は開口一番、


「この個数限定パンケーキって、まだありますか?」


 そう思い切って尋ねてみれば、返ってきたのは「あります」の答え。

 よかった。本当によかった今日は今月入ってから一番幸せな日かもしれない。


 そんなこんなで、そこから焼き上がりまでしばらく時間がかかるとのことで、私はスマホをポチポチしながら時間をつぶします。




 それからしばらく。まずは注文していたジュースが届きました。それからもう少しして、母のパンケーキが届きます。厨房の方を眺めていると、いよいよ()()がこちらへと向かってきます。


 コトリ、と机の上に皿が置かれると、店員さんがパンケーキの到着を告げます。

 これが小説で登場したならたぶんこのような感じでしょう(繰り返しますが、たぶん)。


 小ぶりな、けれど厚めでふわふわな二段重ねのパンケーキ。その上には半分にカットされたいくつかのいちご。さらに上にはソフトクリームのように盛り付けられた、真っ赤なパウダーが振りまぶされた生クリーム。

 そこには、クリスマスを想起させる小さな銀のチョコレートボールと、二枚のホワイトチョコレートの羽で形作られた、かわいらしい一羽の蝶々がとまっていました。


 隣には種々(しゅじゅ)の○○ベリーを添えた生クリーム。同じく(そば)に添えられていたストロベリーアイスの上にはこれまたストロベリーチョコレートで形作られた大きさの異なる二つのハート。

 最後に、そのアイスの横にさりげなく食用ハーブ(たぶんミントかな?)と皿の周囲にまぶされた白や淡いピンクの、宝石の欠片のようなチョコレート。


 ……とまあ、こんな感じの見た目をした、ときめき度がかなり高めのパンケーキです。小説なら「たぶんミントかな?」は入れないと思いますが。


 話を戻しますね。先ほどの店員さんが会計票を置いて厨房の方へと戻っていくと、私はいそいそとバッグからスマホを取り出します。


 パシャリ、パシャリ、とニマニマしながら私得な撮影会を終えると、フォークとナイフを机上のカゴから取り出して、ちょっと遅めのお昼を食べ始めました。


 その食事シーンがどうだったかといえば。──上品さの欠片もない食べ方だったので割愛させていただきます。おほほほほ……。

 ひとまず、何度でも食べたいと思ってしまったということだけお伝えしておきますね。ちょっとお高いですが雰囲気代込みでこれならむしろお値段以上。閉店してしまうのつらい。




 と、そんなこんなで結局ゴミの処分に行く時間は残らなかったし、母にはチクチクと言葉の針で軽く刺されましたが、私はいたって幸せでした。

 はい、親不孝者でごめんなさい。


 けれど、ずっと前から食べに行きたいと思っていて行けていなかったお店に、その閉店直前に行けた上に「食べたい!」と思ったメニューを食べることができたのは奇跡か何かなのでは、と思ってしまいましたありがとうございます。




 最後に、このエッセイを読んでくださった読者の皆様へ。


 推しは推せるうちに推しましょう。パンケーキを食べ損ねないために。先生方が筆を折ってしまわないために。

 本エッセイはこれでおしまいです。連載小説の一話分レベルの長さのエッセイなのに、最後までお読みいただき、ありがとうございました。


 以前の異世界恋愛エッセイに比べたらだいぶ改行が増えた気がしますが、たぶん文体というか文章の書き方が変わったのだと思います。たぶん。

 ちなみに、このエッセイで書いてあるパンケーキの写真は作者ページにリンクが貼ってあるTwitterアカウントで「パンケーキ」と検索すると出てくるはずです。うまく描写できたか怪しいですが……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 心がホッコリしました(*^^*) 私もパンケーキ大好きです♥️
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