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スワンの初恋  作者: えいぷりる
2/12

麻里子②

翌週の土曜日。午前中のレッスンを終えた私は、真野様から指定されたお店に向かう。あれから何度かメールでのやり取りを繰り返し、今夜のパーティーで、とりあえずのお試しをする運びになった。


小さく店名だけが書かれたドアを開ける。名前を告げて奥に通されると


「麻里子先生!」

「光希さん!」


光希さんと彼女のお母様…真野様のお姉様がいらした。


「麻里子先生と日本語でお話しするなんて、可笑しな感じがしますわね!先生、今回は愚弟の提案を受けて下さってありがとうございます。私でお力になれることがありましたら、遠慮なく仰って下さいね」


そう言うと、お店の方に指示を出された。このお店はお姉様のご紹介で、結婚式やパーティーなどに参加する方へ、ドレスのレンタルやヘアメイク等をしているのだという。今夜のパーティーの規模や会場、趣旨、参加する立場等を考慮して、その中から私に合うドレスを選ぶ。ドレスを選んだら、次はヘアメイク。ドレスに映えるパーティー用の華やかなメイクや髪型。私の意見を取り入れつつ、テキパキとお店の方と相談してお姉様が決めていく。頼もしい…。


エンパイアラインの膝下丈のドレス。色は淡いラベンダー。ふんわり巻いたハーフアップ。背が低くて丸みのない身体。実年齢よりも若く見られる幼い顔立ちの私を、大人の男性である真野様の隣に立てる大人の女性に仕立ててくれた。


「綺麗だ…」


ダークスーツでお店に現れた真野様は、私を見るなり褒めてくださった。海外生活が長いだけに実にスマートな対応だ。胸元のチーフをラベンダー色にして、カフスも私のイヤリングと同じサファイアに変える。あっという間にお揃いコーデの出来上がり。


「行きましょう」


スマートなエスコートに導かれて、タクシーで今日の会場へ向かう。都心のホテルの宴会場。フランスに本社のある商社の日本支社の創立記念パーティー。真野様がスイスで働いていた頃の同僚のご縁で参加することになったそうで、直接今の仕事に関係はないが、懐かしい知人に会うのと社交が今回の目的だ。


真野様…他人行儀なので名前で呼んでください…と言われ、「涼介さん」とお呼びすると「麻里子さん」と笑顔で返して下さる。今更なのですが…自分が男性とお付き合いしたことがないことに気づいてしまいました。ずっとバレエに夢中でしたし、怪我をしてからはそんな余裕ありませんでしたし、大学に入ってからもダンススクールの指導と専攻の勉強で忙しかったので…。どうしましょう…こんな素敵な人に大人のエスコートなんてされて、平常心でいられるのでしょうか…?


会場に着いて、先ずは主催者への挨拶。それから涼介さんのお知り合いを探して二人で会場を歩く。


「麻里子!」


聞き慣れた声がして見渡すと、いつもの薫りに包まれた。


「やっぱり麻里子だわ!どうしてこんなところに?」

「マダム・マフタン!」


外国語の先生であるマダム・レア=マフタンに抱きしめられていた。いつもと違い着飾っている私の全身を珍しそうにチェックして、素敵ね…と褒めて下さる。そして、突然私が抱きしめられたことに驚いている涼介さんを、お知り合い?と。


「マダム。こちらは真野涼介さん。私のお友達です。今日は彼のご縁でこのパーティーに来ました。

涼介さん。こちらはマダム・レア=マフタン。私の外国語の先生です」


私はフランス語でお互いを紹介した。落ち着きを取り戻した涼介さんも、名刺を出して挨拶している。


「そう…麻里子のお友達?初めてお名前を聞いたわ」

「最近、親しくなりました。私の姪がエマ・ダンススクールで麻里子さんの指導を受けていまして、年末の発表会で初めてお会いしました」

「年末…ということは、まだ知り合って一ヶ月ね?」


涼介さんのことが気になるマダムは、次々涼介さんを質問責めにしていく。


「レア?」


グラスを手に、一人の男性が近づいてくる。


「ムッシュー・マフタン!」

「おお、プティ・麻里子!今日は一段と可愛いらしい!」


そう言って私の頬に挨拶のキスをする。


「レア?こちらは?プティ・麻里子のボーイフレンドかな?」

「ええ…まだお付き合いを始めたばかりみたいですわ」

「おお!僕らのプティにボーイフレンドとは!!ちょうどいい、明日の午後は時間があるかな?麻里子と一緒にお茶の時間に遊びにおいで。麻里子、待っているよ!」


そう言うと、マダムを連れて、奥の方へと挨拶回りに行ってしまった。


嵐のような勢いで主導権を握り、去っていったお二人を見送ると、今度は涼介さんに声をかける男性が現れた。


「涼!ここにいたのか。久しぶりだな」

「ビル!今日はお招きありがとう。本当に久しぶりだな、元気だったか?」

「ああ、俺は元気だ。しばらく日本にいるからよろしくな!それより、ずいぶんな大物と知り合いなんだな!」

「大物?あちらは彼女の知り合いだ。紹介するよ。友人の飯田麻里子さん」

「はじめましてミスター。飯田麻里子です」

「はじめまして。ウィリアム=バリーだ。涼とはスイスで一緒に働いていました。涼にこんな愛らしいお知り合いがいたなんて知りませんでした。失礼ですけど、先ほどのマフタンご夫妻とは?」

「私の外国語の先生ですわ!小学生の時からご指導いただいているので、いまだに幼い子供の様に可愛がってくださいますの」

「外国語の先生…?失礼ですがフランス大使館の方だとお聞きしましたが…?」

「ええ、ムッシューが大使館関係のお仕事をされていたと聞いています。退職されて、日本が気に入ったからそのまま帰らずにいると…」

「そうですか…とても美しい方でしたので、ついつい尋ねてしまいました」

「本当に。私もあの様に美しく歳を重ねていきたいと思います」


涼介さんのお知り合いの方…ミスター・バリーにお会いした後は、声をかけてきた方とお話をしつつ、立食を楽しんだ。流石は琴子お姉様が選んだ服だわ。胸の下に切り替しがあるデザインなので、食べてもお腹が気にならないし、高いヒールも太めなので、立ちっぱなしでも足が辛くならない。招かれたパーティーを分析して、それに相応しい装いを選ぶのね。初心者には無理だわ。光希さんのお母様…涼介さんのお姉様にも「琴子お姉様」と呼ぶ様に言われ…お呼びすると、とても喜ばれてしまった。弟しかいないから、一度でいいから可愛い女の子に「お姉様」と呼ばれたかった…と。次にスクールでお会いした時、間違ってお呼びしない様に気をつけなくてわ!


またしてもタクシーで送っていただくことになってしまいました。まだ電車のある時間ですし、都心から高速を使ってのタクシー帰宅なんて、高額で申し訳ないのに、二人きりで打ち合わせも出来ますから時間短縮です!と言われてしまい、またしても押しきられてしまいました。


明日のマフタンご夫妻のお茶会へのご招待は、私の都合に巻き込んでしまったことなので謝ると、自分のお願いに付き合ってもらったことが、きっかけなのだから…と逆に謝られてしまった。尋ねられるままにマフタンご夫妻への質問に答え、明日の対策を練り、待ち合わせをして、お別れした。今回も玄関で両親に今日のお礼と明日の予定を伝え、迎えにくる許可も取り、帰っていった。本当に真面目な方だと思う。


着飾った私の姿を、兄嫁は「可愛い!」と褒めまくり、母からは涼介さんと二人並んだ写真を次回は必ず撮る様に言われ、さりげなくお揃いにしている上級コーデ術を絶賛していた。お店の方に教えていただいた方法でメイクオフし、ドレスも靴も教わった通りに片付けて、さぁ寝よう…と思って思い出しました。このパートナーのお約束は継続なのでしょうか…?

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