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属性判明

「冗談…」

 エドワードの真剣な視線から逃げるように視線を逸らせば、「冗談だったら良かったんだけどね」といいながら、エドワードが苦笑する。

「僕たちだって彼女のやったことの責任を向こうの世界の人々に取らせるつもりなんてなかった。だけど彼女のせいで失った戦力は今になっても完全には戻っていない。早急に戦力増強が必要だったんだ。これでも君に悪いとは思ってるんだよ」

 本当に申し訳なさそうな顔でそう言われてしまえば、反論の言葉も弱くなってしまう。

「でも…魔法も剣も使えない俺が戦力になるわけがないだろう」

「剣はこれから覚えてもらうしかありませんが、魔法の方は心配いらないでしょう」

「は?」

 ウォルターの指先が、ジェレミーが持ったままだった水晶を指さす。

「この水晶であなたの魔力の属性さえわかれば、魔力を解放させることができます」

「いやいやいや、無いものを解放しようったって無理だろ」

「ジェレミーは彼女の血縁者だよ?元々の魔力はあるに決まってるよ。向こうの世界じゃ必要がなかったから力を顕現させる必要がなかっただけだよ」

 水晶は魔力があってもなくても、持った人間に何らかの影響を与える。だがそのどちらの影響も感じられないとすれば、それは水晶の力が封じられているということだ。

「これまでその水晶からの干渉を全く受けなかった人物など存在していません。そのことからもあなたの魔力は相当高いと思われます」

 冷静に分析するウォルターの声を聞きながら、ジェレミーの背中を嫌な汗が流れる。このままでは本当にこちら側の戦いに巻き込まれそうだった。

「だからってこんないきなり…」

 現実逃避なのか頭の中をやり残した仕事が過る。明日の朝イチの会議の資料だってまだ出来上がってない。

「ダメだよ」

「え?」

 唐突な言葉に関係の無い事を考えていたジェレミーの意識がエドワードに向けられる。

「向こうの世界が気になる事はわかるし、強引に巻き込む事については申し訳なく思う。それでも君を向こうの世界に返すわけにはいかない。だから選んで」

「選ぶ…?」

「そう、ここで僕たちと一緒に戦うか、このまま一人で店の外へ出て命を狙われる日々を送るか」

 そう言ったエドワードの目は笑ってなどいない。

 微かに身体が震えているような気がして、ジェレミーは無意識に自分を抱きしめた。

 元の世界に戻る方法を自分が知らない以上、彼らと一緒に戦うという選択以外に生き残る道はない。

 だが戦いの中で命を落とす可能性だってあるだろう。

(それでも選べる選択肢は結局一つしかない…)


 一度、深呼吸をした。

 そして目を閉じて、一呼吸。


「…わかった。お前たちと一緒に戦うよ」

 その言葉を聞いたエドワードとウォルターがほっと安心したような表情になる。

「その代わり、ちゃんと死なない方法を教えろ」

「大丈夫、言ったでしょう?『君はこの世界の救世主であり、同時にこの世界を滅ぼす悪魔でもある』と。君の中にある力は、君が思っている以上に凄いんだよ」

 それを聞いてもとても信じられないといった顔をするジェレミーに、ウォルターが苦笑する。

「本当ですよ。あなたが我々の側につくと言ってくれなければ、ここで私が殺してました。その力を敵に渡すわけにはいきませんからね」

 とんでもないことをさらりというウォルターにジェレミーの顔が引き攣る。ここで一緒に戦う事を拒んだら、この店を出るまでもなく殺されていたかもしれないとは…。

「まぁ、ウォルターもそのくらいにして。時間がないんだ。早くジェレミーの魔力を解放しないとね」

「はい」

 エドワードはソファから立ち上がると、店の中央に立つ。

「水晶を持ったまま、エドワード様の前に立ってください」

 促されるまま、ソファからエドワードの前に移動する。

「水晶を両手で持っていて。絶対に離さないで」

 頷くと、エドワードの手がジェレミーの手に重ねられる。

「ウォルター、結界を」

「はい」

 ウォルターが二人を囲むように結界を張ると、エドワードがその内側に魔法陣を描く。透き通った青い光で描かれた魔法陣は、彼の持つ魔法が水の属性だからだろうか。

「今から水晶の力を抑え込んでいる君の力を一時的に止める」

 属性がわからない事には始まらない。そのためには水晶がジェレミーの魔力を正しく判定できるよう、一時的に魔力の放出を止める必要がある。

 しかしジェレミーの魔力量もわからない以上、何があるかわからない。

 だから、ウォルターの結界は万が一水晶またはジェレミーの魔力が暴走した時のための保険だ。

「この店の『場』は特殊だからね。上手くいくといいんだけど…」

 そう言いながら、エドワードはゆっくりとジェレミーの手に自分の魔力を流し込んでいく。

 そのまま数分間は経っただろうか…。やがてゆっくりと水晶が光りだした。

「…水晶が…」

「そのまま、まだ動かないで」

 言われるままじっとしていると、水晶が金色の光を放ち始める。だが光は安定せず、点滅を繰り返す。

「これは…」

 エドワードの表情がほんの少し曇ったのを見たジェレミーが「どうかしたのか?」と声を掛ける。

「いや…あとで話そう。それより、もう大丈夫だよ」

 エドワードが魔力を流すのをやめると同時に水晶の光も収まっていく。

 同時にウォルターも結界を解いた。

「ジェレミー。君の魔法属性は『光と闇』だ」

「え…?属性って複数持てるものなのか?」

「まれにね、そういう事もある。だけど光と闇を同時に持つ者は珍しいね」

 どう伝えるか少し迷っているかのような口調に、ジェレミーの心に不安が過る。

「何か問題でもあったのか?」

「…いや、君自身には何も問題はないよ。属性がわかればそれにあった方法が取れるしね。ただ…」

「ただ?」

「光と闇、この相反する属性を使いこなすのはとても難しい。特に君の力はとても強いから…どちらの属性にも傾き過ぎてはいけない」

 本来、光も闇も属性として問題があるわけではない。だがこの世界においては、この『場』を狙う敵に闇魔法の使い手が多いのだ。

 同じ属性の魔法はお互いに引かれ合う。

「わかりやすく言えば操られやすい、とも言えます」

「だから、しっかりと魔法が制御できるようにならないとね」

 にっこりと笑顔で言い切ったエドワードの言葉の裏に「スパルタ」という言葉を感じたのは気のせいではないだろう。

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