エピローグ
本日2話目の更新です。
目が覚めると、見覚えのある天井だった。
窓から差し込む光が、今は昼間の時間帯である事を知らせてくる。
(え…っと…ベイカー家の屋敷…?)
アンティークショップの自分の部屋ではなく、ベイカー家に来た時に使用していた客室だと気づく。
「目が覚めたか?」
声のした方に視線を向ければ、ベッドサイドの椅子にエドワードが座って自分を見ていた。
「エドワード…?」
起き上がろうとしたことに気づいたのか、エドワードが「まだ寝ていろ」と言って椅子から立ち上がると、布団の上からジェレミーの肩をそっと押さえる。
「ごめん、俺あのあと気を失った…?」
おそらくエドワードが運んでくれたのだろうと思い、申し訳なくなる。
「気にするな。むしろ最後まで持ったのが驚きだ」
本当ならレオンに勝った時点で倒れていてもおかしくなかった。
「あれからどうなったのか聞いても?」
「…身体は大丈夫か?あれから3日も目を覚まさなかったんだ。完全に回復してからの方が…」
「3日!?」
まさかそんなに寝ていたとはジェレミー本人が驚きのあまり絶句している。そんな彼を不思議そうに見ながら、エドワードは「あれだけ魔力を消費したんだから当然だろう」と言った。
「とりあえず色々気になるから、話を先に聞かせて欲しい」
思っていたよりもしっかりした声と口調に安心したのか、エドワードが「わかった」と言って再び椅子に座ると口を開いた。
あの後、ウォルターの指揮でレオン配下の者達を一斉に捕らえると、念のため全ての『場』に元の結界に重ねる形で結界を張ったという。
「ジェレミーがレオンに配下の行動を止めるように命令した時に、同時に全員をランガムホテルに待機するように指示するようにしてくれたおかげだ。助かった」
そうでなければレオンを失ったとはいえ、彼の思想に染まった配下の者達が再び場を狙う可能性もあった。
レオンやセルジュほどの力を持つ者はいないだろうが、エドワード側の陣営もこのタイミングで彼らの相手をできる余力はない。
「…役に立ったなら良かった」
ジェレミーがほっとしたように呟くと、エドワードも笑みを返す。
「現時点で全ての『場』で異常はないし、おかしな動きもない。当面の危機は去ったといっていいだろう。だが、これから先も平穏が続くとは限らない」
エドワードの言いたい事はジェレミーにもわかった。
連面と続く『場』を巡る攻防。
それは相手が変わるだけで、エドワード達がこれからも場を護っていく事に変わりはないのだ。
「大丈夫、俺も一緒に護っていくから」
あの日選んだ選択を自分は後悔していないのだと。そうエドワードに告げると、ジェレミーは小さく頷いた。
「そうか…これからもよろしく頼む」
安心したような表情のエドワードを見ていたジェレミーだったが、もう一つ気になっていた事を口にする。
「…それで…レオンとセルジュは…?」
絶命したのはわかっている。だがそれでもあの後の二人が気になった。
「『場』に関する戦いは一般には知らされない極秘事項だ。だから、あの二人やレオンの配下の者が表で裁かれる事はない」
この世から存在すら抹消されるのだと、そう言われたジェレミーの表情がほんの少しだけ痛みをこらえるようなものに変わる。
「ジェレミー、完全に回復したら一緒に行ってもらいたいところがあるんだが」
唐突に変更された会話の内容にジェレミーが怪訝そうな表情になりながらも「もちろん構わないが…」と返事をするとエドワードがほんの少し悲しみを湛えた瞳で行先を告げる。
「…古い、友人の墓参りに」
ふわり、と窓のカーテンが風に揺れる。
その風に乗って運ばれてきた花の香りを感じながらジェレミーが答える。
「花は俺が買うよ」
「…ありがとう」
暫くの間、二人の間に沈黙が落ちる。やがてエドワードがポケットから懐中時計を取り出した。
「ジェレミー、これは君に返そう」
差し出された懐中時計を見たジェレミーが再び身体を起こそうとしたのを見たエドワードは、今度は彼の上半身を支えると、その背にクッションを当てて支えてやる。
そうして懐中時計を受け取ったジェレミーが「いいのか?」と問いかけると、エドワードが「いいんだ」と答える。
「この先…この懐中時計の時間を合わせるのはジェレミーがいいと思って」
この世界から離れても、それだけは放棄しなかった祖母の姿を思い出したジェレミーが、懐中時計を両手で握りしめる。
「わかった…これも、俺が護る」
「頼んだ」
たとえこれが束の間の平穏だったとしても、今は失ったもの達に少しだけ寄り添う時間が欲しい。
そう思う二人はジェレミーの手の中で動かない懐中時計の針を静かに見つめるのだった---。
End.
やっと完結しました!途中長期で連載を止めてしまった時もありましたが、何とか最後まで書けて良かったです。
執筆中に苦労したのはやっぱりバトルシーンでしょうか…。個人的にはバトルシーンとか好きなんですが、今回は設定的にあまり書いた事のないお話だったので、ちょっと(いやかなり?)苦労しました(苦笑)
なにはともあれ、読んだ方に少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです♪
読んでいただきありがとうございました!




