表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/28

8.なるほどです

「もう! るり姉どこにいってたの!」


 VRゴーグルを外すと、隣で琥珀が頬を膨らませながら起こっている様子でした。


「どこって、ゲームの中ですが?」


「んー! そういうことじゃなくて!」


 琥珀が周りに気遣って小さな声で私に訴えてきます。


「では、どういうことですか?」


「私は聞いてきてって言ったのに、ぜんっぜん戻ってこないんだから!」


「ごめんなさい。そのまま遊んでしまいました」


「……んー」


 琥珀は眉を下げて何とも取れない表情を浮かべると、ふうと息を吐きました。


「戻ってきてねって言わなかった私も悪かったし、この話はこれで終わりにしよっか」


「ありがとうございます。琥珀」


 琥珀は手元のコードを指でいじりながら、


「遊んできたってことは、陣営変える気はないんだよね? るり姉はこれからどうするの?」


「そうですね。明日はセナさんはゲームをしないそうなので、ひとりで遊ぶことになってしまいました」


「えっそうなの?」


「そうなのです。そこでなのですが、私一人ででも遊べるようにする方法を教えていただけませんか?」


「あーなるほどね。るり姉だけで、ねえ。そういえば、初心者をナビゲーションしてくれるなにかがあるって聞いたよ。たしか、ナビゲーション妖精、だったかな? それがあれば、るり姉だけでも遊べるかも」


「なるほど。わかりました。調べてみます」


「うん。じゃ、今日は帰ろっか」


 ナビゲーション妖精、ですか。言いづらいですね。ピクシーではダメなのでしょうか?



▼▼▼▼▼



「ふう」


 私はタブレットの画面を落として、息を吐きます。

 もう夜も随分更けてしまいました。暗い中で電子機器を触るのは行けないとわかってはいますが、どうしても調べたいことが多いと時間も忘れてしまいます。


 目を閉じ頭の中で、先程まで調べていたハイド・アンド・シーク・オンラインについてまとめます。

 ゲームの中では不甲斐なくもセナさんに頼りきりだったので、ある程度の知識は入れようと調べてみました。


 まずはこのゲームで大事なのはやはり陣営のようですね。陣営が変わるだけでだいぶ遊び方が変わってしまうようなのです。

 まだハイドについてしか調べていませんが、ハイドで一番重要なのは"隠れること"だそうです。

 シークを倒すときに見つかってしまえば、あちらから与えられるダメージが一気に増えてしまうと書いてありました。

 あとは、クエストですね。セナさんも教えてくれようとしていましたが、思わぬシークとの遭遇によりその詳細を知ることは叶いませんでした。

 なので、今得たばかりのネットの知識を。

 クエストというのはシークとハイド両方が取り組めるものなのだそうですが、その内容は全く違うそうです。

 シークがモンスターを倒すものが多く、ハイドはお手伝いだったりシークを倒しに行ったりといった感じですね。

 なんでも、ハイドはモンスターを倒せないだそうです。ハイドとモンスターは仲間なのだと記されていました。

 でも殺せないことはないらしく(その辺はよくわからないですね)、万が一傷つけたり殺してしまったりした場合は、グレーとなって一定期間ハイドではなくなってしまうのだそうです。

 元に戻るためにはモンスターを殺した数の倍のシークを殺さないといけないのだとか。

 モンスターを殺しても利益はないので、殺さないのが得策ですね。


 クエストはNPCという方からもらえるのだそうですが、その方がもう色んな場所にいて、地図を見た瞬間気が滅入ってしまいました。

 これではどこに行けばいいのかわからないので、明日が不安です。


 実は私、明日もあのゲームで遊ぶことになったのですが、明日はセナさんは来れないのだそうです。

 セナさんには、「俺がいない間にレベルを上げててくれ」と言われたので、一人でも遊ばなければなりません。

 そこで困ったのが、私の知識の不足です。私はにゅーびーなのでゲームのことを全く知りません。

 そこでネットで調べてみたのですが、わからない用語も多く思ったよりも時間がかかってしまいました。

 でも、琥珀が教えてくれたナビゲーション妖精というのも見つかりました。明日はこの子を購入してみるとしましょう。


「ふわぁ」


 そろそろ眠くなってきましたね。今夜はもう寝ましょうか。明日は9時からネットカフェですし。



▼▼▼▼▼



「るり姉、ホントに大丈夫?」


 VRゴーグルを手に持つ私を琥珀が心配そうに見つめてきます。

 本当に、この子は心配性ですね。


「んー。少し不安も残りますが、きっと大丈夫です」


「でも、ひとりなんだよね?」


「ええ」


「やっぱり不安だよ……」


「では、琥珀が教えに来てくれるのですか?」


「いやいや。すぐ殺されちゃうし場所わかんないって」


「私は大丈夫です。幸い、昨日良い情報をネットで見つけましたし」


「ほんと?」


「私を信じてください。もう琥珀に頼ってばっかりではいけませんから」


「それならいいけど……」


「では、行ってきますね」


 私はまだ不安を残す様子の琥珀を横目にVRゴーグルをつけました。

 もう目を開けばそこはゲームの中です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ