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19.馬が合わないようです

「るり姉! 大丈夫だった? なんかすごい音したけど……」


「ええ。大丈夫でした」


 短剣を腰の鞘にしまいながら、走ってくる琥珀を迎えます。


「あっ。バー黄色くなってるじゃん。ごめん、ライア! 回復お願いできる?」


「わかりました」


 同じく駆けつけたライアさんが杖を構えて何やら唱えます。

 すると、みるみるうちに右上に見えていた黄色の四角が伸び、緑色になりました。


「そういえば、この四角いものはなんなんです?」


「あ、それはね、ヒットポイントバーって言って、残り体力を表してるの。それが黄色くなると警戒で、赤くなると危険。なくなると、死んじゃうの。死ぬと色々大変だから気をつけてね」


「わかりました」


「それより、先程の銃声が心配です。クロエさんを殺ったのがその音なら、私たちも早く隠れないと」


「──いえ、その必要はないと思いますよ?」


 多分セナさんは私だということに気づいていましたし、殺すならもうとっくに殺されているはずです。

 私は朽ちかけたビルを眺め、その屋上に彼の姿がないことにやや目を見張りました。

 後で会いに行こうと思っていましたが、いなくなられてしまいましたね。ここは建物が多いので探すのは苦労しそうです。困りました。


「どうしてそう思うの?」


「それは──。あっ」


 琥珀の質問に答えようとしたところ、彼女の後方から黒い人影が覗きました。

 身長は私と同じぐらいで、黒髪に血の気のない白い肌。──セナさんです。


「よぉ。久しぶりだな」


「お久しぶりです。今までどちらに?」


「あー、そのへん? 最初は砂漠にいたぜ。あんたは?」


「なに、あの人! すっごいかわいいのにすっごい口悪い! るり姉、知り合い?」


「こら、いけませんよ。琥珀。彼は、にゅーびーだった私に良くしてくれた、セナさんです。琥珀にも話をしたでしょう?」


「え、あの人!? あ、私はこは……じゃなくて、アンバー! よろしくね!」


 琥珀はしゃがんでセナさんの手を掴み、ブンブンと振りました。


「私はライアです」


 ライアさんはセナさんの手を握る琥珀の横で、ペコリと腰を折りました。

 セナさんは琥珀の手から解放されると、二人を交互に見遣り、


「よろしく。アンバー……さんは、こいつと知り合い?」


「るり姉のこと? そう! というか、姉妹!」


「え゛。あー、なるほどね。どーりで」


 セナさんは私たちの顔を見比べ始めました。

 そんなに似ているのでしょうか。現実ではある程度似ているとは思いますが、さすがにここはゲームの中。私は似ているとは思いませんが。


「マヌケな顔がそっくりだ」


「なにをう!」


「ちょっと、琥珀! いけませんよ!」

「アンバーさん!」


 琥珀がセナさんに襲いかかろうとしたので、慌てて私とライアさんで抑え込みます。

 といっても私は小さいので、ちょっとも力になってはいませんが。


「っと。のんびりしてる場合じゃないぜ」


「そうですね」


「るり姉はこっちもリアルも超絶可愛くてマヌケなんかじゃないんだからね!」


「まだやってるんですか。行きますよ、琥珀」


「もう! るり姉も何か言ってよ!」


「そうですね。私はともかく、琥珀はこっちも現実も可愛いですよ?」


「もう、るり姉ったら〜」


 琥珀が私の頭を小突いてきたので、その手を掴んで引っ張ります。


「ほら、行きましょう。セナさんを見失ってしまいます」


「ふふふ〜」


 琥珀がすごいにやけています。何がそんなに嬉しいのでしょうか。


「一気に2人の妹ができたみたい!」


「え、どこにいるのですか?」


「るり姉と、セナさん! ……ん、ちゃん?」


「どちらでもいいかと。……あと、私は姉ですよ? 妹ではありません」


「いいのいいの! みたい(・・・)なんだから! 2人とも喋ったらアレだけど、見た目はすっごくかわいいんだからね!?」


「……さ、行きましょう。あちらです」


「ちょ、無視しないでよ! もう! るり姉? るり姉ー?!」


 後ろが騒々しいですが、無視です。

 私はすたすたと先を急ぎました。



▼▼▼▼▼



「これからどうするんですか?」


「あ゛? あー」


 ガラスの割れた窓から双眼鏡で外を監視していたセナさんは、太い声を出して双眼鏡から目を離します。


「俺は優勝を目指す。あんたらはそれを手伝ってくれるだけでいい」


「それって」

「分かりました」


「あっ。ごめんなさい、琥珀」


 意図せず声が被ってしまいました。


「何を言おうとしていたのですか?」


「ううん、なんでもない」


 琥珀は微笑んで首を振ります。


「なら良いのですが……。セナさん、お手伝いとは、具体的に何をすればいいのですか?」


「俺が撃ち漏らしたプレイヤーを処理して欲しい……って言いたいところだが、あんたにはやってほしいことがある」


「それを聞いているのですが?」


「そうはやるなよ」


「それって、るり姉だけ? 私とライアは?」


「あんたらじゃ実力不足だ。こいつにしかできないことがある。あんたらは俺の援護でも、こいつの援護でもどっちでも構わねえよ」


「……わかった」


 琥珀はやや不満そうに唇を尖らせて頷きます。


「さぁ、本題だ。あんたには俺の優勝のためにひと仕事してもらう」


 セナさんは勿体ぶるように一呼吸置くと、にやりと笑って言いました。


「現状ハイド陣営ナンバーワンのメーラ。あんたの仕事はそいつの討伐だ」

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