04 ネコニア
国軍の馬車に乗って数時間後。
ネコニアに到着!
国軍の皆さんとは門付近でお別れ。
南のケイトスペード方面へ向かうそうです。
もう夕方になりそうなのにここで泊まらないの?と疑問には思いましたが、何やら事情があるのでしょうか。
街の門はギルドカードで通過しました。
持ってて良かったギルドカード。
それにしても、もう夕方ですね。
とりあえず、宿を取りましょう。
「あ。」
宿屋の近くに来て、私、思い出してしまいました。
・・・ギルドカードに入っているお金はセント・ライズでしか使えないことを。
今の私は無一文と同じです。
うーん、どうしよう。
ギルドカードに入っているお金を金貨に変換できればいいんだけど。
あ、ちょうど私のいる位置の目の前に冒険者ギルドがあるから、そこに寄って聞いてみよう。
確かに他の国では、ギルドカードに入っているお金はそのまま使えないというのは知っている。
でも、お金を引き出すことぐらいはできるかもしれない。
「すみません、相談したいことがあるんですが。」
「はい。どのような要件でしょうか。」
「それがですね、ギルドカードに入っているお金を引き出したいのです。」
「はい。自国内の通貨でしたら問題ないですよ。」
「実はセント・ライズのものですが、それはできないのでしょうか」
「あー、他国のやつですか・・・流石に無理ですね・・・」
「やっぱりそうなんですね・・・困りました、今全財産ギルドカードの中に入ってしまっているんです」
コーン、コーン・・・
鐘が鳴りました。
ということは18:00?
「すみません、そろそろギルドを閉める時間帯なのです。」
そうか、ここのギルド、営業時間が6時までなのか。
(ボストロニックのギルドは・・・この時間でもまだやっていたので、閉めるのはずいぶん早いです)
私が困った顔をしながら、諦めてギルドを出ようとした時。
「・・・あの、あまり大きな声で言えないことなのですが・・・」
「は、はい。」
「・・・私の家に泊まってもいいですよ」
「え、いいんですか?」
「はい、近くの噴水で待ち合わせしましょう」
ということで、私はギルドを出て、今は近くの噴水にいます。
もう日が暮れて夜になろうとしています。
しばらくすると。
あ、受付嬢の女の子がやってきました。
私と同じくらいの年齢だと思いますが、背が私より小さいです。
(あくまで私の背がかなり高いだけで、平均以上はあると思います)
「改めまして、アリシア・シェリーです。・・・こう見えてあなたより年上ですので」
私より年上だった。失礼しました。
「あの、あなたは赤の他人の私を泊めてくれるのでしょうか・・・」
「それはですね、今のあなたが昔のわたしと被るような感じがしました・・・つまり直感です。そうそう、なぜエミさんはこの国のお金がない状態でここまで来れたんですか?」
「それがですね・・・」
ここに来るまでの経緯をいろいろ話しました。
「なるほどねー、魔物に転移されたのね。それも遠い場所に転移させられるなんて」
「ほんとそうですよ。ボストロニックにいたのが、あの魔物によって一瞬であのウエスト・ノードに移動させられるなんて・・・」
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アリシアさんの家に到着後、夕食などを一緒にしながら話していくほど、アリシアさんタメ口になり馴れ馴れしくなっていました。
「そうそう、やっぱりボストロニックに戻るの?」
「はい。とりあえずボストロニックに戻るつもりでいます。あそこには私の住居がありますので。」
ひとまずはボストロニックには戻らないといけないです。
仮に「ボストロニックよりネコニアに住みたい」とした場合でも、です。
なぜかって?理由は家賃です。
最初は3ヶ月一括払いでしたが、ボストロニックの家賃は原則月払いで自動更新。
万が一引き落としに失敗した場合、未払いとなって全世界のブラックリストになりかねません。
そのため、仮にずっとネコニアにとどまったままだと、将来的に私の生活に影響してしまうからです。
「将来的にはここの魔法学校に入学したくて・・・」
「なるほど、あそこの魔法学校に行きたいのね。ここネコニアにも魔法学校があるけど、まあボストロニックの魔法学校も個性のある学校だからね・・・」
納得した感じのアリシアさん。
「それで、ボストロニックに戻る方法はもうわかっているの?」
「はい。まずはセント・ライズ王国の国境近くの街まで馬車で向かうつもりです」
「そう・・・国境近くの街だとイーストウッドね。でも、そのイーストウッドもここからだとかなり遠いから」
はい、まずはイーストウッドに向かうんですね。
「しかも、イーストウッドまではここネコニアからだと1週間に1本しか馬車が出ていないの。」
え・・・馬車ってそんなに少ないんですか?
例えば「前世」の私が住んでいたところでさえ1時間1〜2本電車が走っていた。
東京なんて数分おきに電車が来るよね。
馬車駅があったので、そんな感覚と思っていたのに・・・
これだったら国軍の馬車に乗せてもらったほうが帰る時間が早かったかもしれない。
「まあ、帝都のケイトスペード行きなら毎日出ているけど、帝都まで6日かかるし、帝都とイーストウッドは方向が違うから遠回りになってさらに時間がかかるからね。」
「・・・そうなんですね。」
これは戻るのに相当時間がかかりそうです。