02 ウエスト・ノード
私が目覚めると、そこは見知らぬ部屋。
そしてそこにいるのは多数の魔物たち。
「ようこそ。私はウエスト・ノードの筆頭であるシャークだ。」
筆頭のシャークが、私の目の前にいた。
「えっと、私はさっきまでスーパーマーケットにいたんですが・・・」
「驚くのも無理はない。私が貴様を呼び出したのだ。我らウエスト・ノードは複数の国に探察隊を密かに送り込んだのだが、その中で、貴様には相当の魔力を持つ存在であると分かったのだ」
???
つまり、私はキャベツ型魔物、いや探察隊に見つかって、ウエスト・ノードに転送された、ということだよね。
でも私そんなに強い存在ではないよね・・・?
「ここに連れてきた目的だが・・・我らウエスト・ノードが魔族の頂点に立つためだ。そのための第一段階として戦力増強を行うのだ。貴様には是非ここの戦力になってもらいたい」
ふふ。
やっぱり魔王はいたんですね。
神様の言う通りでした。
でも・・・気づいてしまった。
私の勘では、このウエスト・ノードはあまり強くないと思う。
リーダー格で、かつこの中で一番強いと感じたシャークでも、ギルドの練習用ダンジョンにいた赤竜よりも弱い思う。
この弱い悪党が、そんなに強くない私と組んで世界征服なんて到底無理だ。
正直、まとめて私一人で倒せそうなレベルだと感じた。
世界征服を企んでいると言っていたし、いっそ倒してしまおうか?
でも待ってほしい。
もしかすると私がいるのはセント・ライズ国内かもしれない。
世界征服と言っている時点で悪党だけど、あくまで人の悪党と同じ扱いの方が良さそうだ。
倒すと逆に私が殺人罪で訴えられる可能性がある。
でも、倒さなくても私の睡眠魔法で眠らせることができるかも。
「・・・」
私は無詠唱で睡眠魔法を唱え、シャークをはじめとしたこの建物にいる全ての魔物たちを眠らせた。
みんな眠ってしまい、静かになる。
・・・これで一安心。
・・・この時、私の体に怪我はなく、手持ちのカバンも服も無事でした。
----
さてと。ウエスト・ノードの本部の外に出ます。
建物は意外にしっかりしてました。お城みたいでした。
さてと、ここはどこだろう。
スマホのGPSはあてにならない。あてになるのは時計と方位磁石だけ。
ちなみに現在時刻は11:00ごろ・・・
でも私はどっちに行けばいいんだろう。
とりあえず東に進みます。
30分程度歩いていると、軍隊の人が馬車で移動しているのが見えました。
セント・ライズ国軍・・・と思ったのですが、服が違います。
書籍などで見たマルス帝国のようです・・・ってマルス帝国軍!?
「すみません!」
あ、反応してくれました。
「どうした?」
「失礼ですが、私は今どこにいますか?もしかしてマルス帝国でしょうか・・・?」
「何言っているんだ。ここはマルス帝国だ。」
「そうなんですね・・・・」
やっぱりというかまさかというか。
私は西のマルス帝国に飛ばされていたのです。
「すみません、ボストロニックはここからどのくらい離れていますか?」
「うーん、かなり東に離れているな。足次第では10日以上かかりそうな距離だ」
これは帰るのに相当時間がかかりそうです。
(とても面接には間に合いませんね、就職先との面接は諦めました)
「すみません。ここから一番近い町はどこにあるのかはご存知ですか?」
「ここからなら、さらに歩いてしばらくしたところにネコニアという町がある。」
「ありがとうございました!」
さて、まずは歩いて街に行こう。
距離はどれくらいあるんだろう。聞けば良かった。
さらに歩いて2時間後。
あれ?先程の軍隊の皆さんが私の後ろにいた。
「ああ、君か。実は討伐対象の魔物のアジトが想定よりも相当早く片付いたので、今から戻るところだ。それでだ、ネコニアに行くなら君もネコニアまで馬車に乗せてあげるが、どうする?」
「はい!ありがとうございます」
----
「コーエン・エミか。ところで君はどこから来たんだ?」
「ボストロニックからです。」
(もう日本・・・異世界からとは言わない。もうボストロニックに住居があるのです)
「ああ、セント・ライズ王国から来たのか。それで今から帰還すると」
「はい、そうです。なんせキャベツ型魔物にボストロニックからここまで転移されてしまったので・・・」
「それは冗談だろ?そんな一瞬で移動できる魔法なんて聞いたことがない。そんな魔法があったらこんな移動の必要がないし、そもそもこっちも習得したいくらいだよ」
・・・え?そうなんですか!?
つまり、あのキャベツ型魔物が唱えた転移魔法、私たち人間にとって未知の魔法だったようです。
----
「それにしても今日の殲滅は楽すぎましたよ。あの前評判は一体・・・。」
「ああ、そうだな。対象は本来Sランクの魔物のはずだったんだが全く苦労せずに倒すことができたからな」
うんうん。
セント・ライズとは違い、この帝国にとって魔物は敵で、人間は魔物を攻撃しますし、逆も然り。
「ほんと、これだったらウエスト・ノードは冒険者ギルドに討伐依頼を出す程度で良かったと思う強さでしたよ。」
ウエスト・ノード・・・って私がいたところでした。
「いや、たまたま魔物が全て深く寝ていたからな。本当はもっと強かったぞ」
いや、ウエスト・ノードは本来は弱かったと思いますよ。
ランクEの私でもなんとかなるぐらいだったから。
でも、なんでウエスト・ノードはSランク相当だと思われていたんだろう・・・