02 ボストロニック
「おい、そこの君。」
オークらしき魔物が私に話しかけます。
私、魔物の言葉がわかるんです。
これも転生特典でしょうか。
「あの・・・襲わないでください・・・」
「なんだ俺が怖いのか。君は襲わないさ」
「ほ、本当ですか?」
「本当だよ」
「俺はブラジェイだ。種族としてはオークだ。」
やっぱりオークなんですね。というか魔物に名前があるなんて。
「はい、私は高遠絵美と言います。もちろん人間です。私、最寄りの町に向かいたいのですが。」
「エミか。俺はこれから西にあるボストロニックに向かうんだが」
「はい、連れていいてください」
なんと、馬車に乗せてもらいました。
この世界の魔物は人間の敵ではなかったようです。
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それにしても、私の格好は学校の制服という、異世界としては異色を放っていると思うんだけど、ブラジェイさんは何も突っ込みません。
もしかして衣装が近いのでしょうか?
でもブラジェイさんは明らかに異世界風の服だし・・・謎ですね。
ところで今の時刻はどれくらいなのかを聞いてみました。
「すみません、今の時刻はわかりますか?」
「時刻?街にいないとわからないな。街にいると6時、9時、12時、15時、18時に鐘を鳴らしてくれるんだ」
「はい、ありがとうございます。」
そうですよねー、異世界に時計というものはまだなさそうでね。
でも、24時間制であることは助かりました。
これでいつでもスマホで時計を見れます。
日が沈み始めました。
すると、街が見えてきました。結構大きい街のようです。
「ここがボストロニックだ」
東門から入るようです。
「そういえばこの門で身分証明がいるが、君は国民証かギルドカードを持っているのか?」
「私、国民証もギルドカードも持っていないんですけど。」
「ちょっと待ってくれ。国民証も持っていないということは・・・他国の者か?」
「はい、日本」
そうか、ここは"異世界"だった。
「・・・いえ、言っても知らないほどとっても遠い国から来ました。」
「ニホン?と言ってたな。確かに聞いたことがない。よほど遠い国なのか、いや、敵対していない国でよかった。しかしなぜ・・・」
ブラジェイさんに今までの事情を説明しました。
ブラジェイさん、内緒にしてくれるようでよかった。
先ほどは魔物というだけで警戒してすみません。中にはいい魔物もいるんですね。
「・・・そうなるとここのお金も持っていないのか?」
「はい・・・」
「それなら俺が通行料を払う。生活のためにはお金がいるが、君は何か金目のものはあるのか?」
「はい、一応」
私は財布の紙幣や小銭を見せました。ブラジェイさんは小銭に反応したようです。
「貴重な金属を持っているな。ギルドカードを作るときにギルドでこれを売ればいい。そうすることで当面は生活できるお金になるだろう。」
思わぬところで小銭が役立ちました。
「すみません。ギルドに行けば誰でもギルドカードを作れるんですか?」
「そうだ。俺もギルドに用があるので、せっかくなので案内しよう」
東門で、ここでブラジェイさんは私の分の通行料も払ってくれました。
さてと、ボストロニックに到着しました。
やっぱり結構大きい街ですね。
それにしても、これにはびっくりです。
なんと、普通に魔物と人が共存しているんです。
オークみたいに話せる種族がほとんどですけど。
しかも人種も様々です。
私みたいな人間はもちろん、エルフやドワーフも。
なんなら魔物と人の混合種と言える魔人も。
人間の肌の色も様々で、白人や黒人、私みたいな黄色人種も。
(あ、私の肌は日本人としては白いほうですよ!)
そして気づいたこと。
服装や容姿が性別に全く関係ないことでした。
例えば女性だと思っていた方が男性だったり、その逆も然り。
普通の日本人の感覚だったらおかしいと感じると思います。
まあ、私は・・・私のお下がりの服をよく着てた弟のおかげもあり、"女装男子"には慣れていますから。
そして人間のみなさんかなりの割合で脱毛しているんです。
体毛がある人をほとんど見かけませんでした。
この街の人は若く見せるなど肌の手入れをきちんとしていますね。
コーン、コーン・・・
鐘が鳴りました。
スマホの時計は・・・18:00。
とりあえずは時刻調整しなくても大丈夫そうですね、
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「ここがギルドだ」
ギルドの建物大きいですね!
まずはギルドカードを作ります。受付嬢に作りたいことを伝えます。
受付嬢の方はドワーフの女性でした。
「では、あなたの名前をこちらに書いてください。」
見たことがない文字。でも私は即座に理解しました。これも転生特典?
そして私の名前を、見たことがない文字ですらすら書いていきました。
「はい。コーエン・エミさんですね。あとは住所をこちらに書いてください」
「実は住所がまだ決まっていないんですね」
「承知しました。後で住居を探してくださいね。これで登録する内容は以上です」
「あの、本当にこれだけなんですか?」
「そうです。ここは性別も人種も、なんなら種族も一切関係ありませんので」
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