◆シェフ・ラビットちゃん ドラゴンにボコボコにされる その1
感想、購入報告ありがとうございます
めちゃめちゃ嬉しいです
えー、そんなわけで。
幽神霊廟100階層攻略チャレンジを始めることになりました。
カメラとマイクを装備して、コメントは読み上げ機能を使ってリアルタイムの配信とコミュニケーションしながらダンジョンを攻略してくって感じだね。
『マジかwwwww』
『生きて帰れるの……?』
『アリスみたいな1億超人パワーの持ち主ならともかく、檀鱒ちゃん一般人でしょ?』
あっ、配信中はシェフ・ラビットちゃんでお願いします。
自分がアラサーおっさんという事実から目をそらしてください。
ボクも逸らしてます。
っていうことでー、がんばっちゃうよ! よろしくね♪
『プロだ。プロがいる』
『バ美肉する方法ほんと知りたい』
『男だけじゃなく女もケモミミ美少女になりたい』
気持ちはわかるんだけど、これペナルティみたいなもんだしなぁ……。
ボクと一緒に、地獄に付き合ってみる?
『あっ、ごめんなさい』
『目が死んでいる』
『おっさんという事実から目が逸らせてない』
そっ、逸らしてるもん!
ところで今ボクは、ガーゴイルくんのいる霊廟の地表部分にいるよ。
ここがスタート地点ってわけだね。
「うむ。勇気ある冒険者よ。地下百層まで目指して努力するがよい。セーブしておく?」
どっちかっていうと昔ながらのJRPGよりもオートセーブ方式のオープンワールドRPGに近いんじゃないかなぁ……。あるいは、マップを埋めて魔物に倒されてトライアンドエラーをするハクスラっぽいというか。
「難易度高そうじゃのー。まあ実際高いんじゃけど」
それをスタッフ側に言われるとつらいよ!
「セーブしておく?」
二回も言わなくていいよ!
ともかくここから階段を下りて、地下5階層まではレンガ積みのお城っぽいところだね。幽霊を倒しながら地下に進む感じになりますっ。
『幽霊……倒せるの?』
『というか戦闘能力そのものがあるの?』
あ、そうそう。この体に憑依している理由の一つなんだけど、ちょっとしたバフが掛かってるんだ。
この耳はハンターラビットってウサギ型の魔物の耳らしくて、これがついてると敏捷性とか筋力とか勇猛がパワーアップするらしいんだって。実際、ちょっとテンション高めなのもこのおかげかな。
『あ、じゃあ女の子っぽい振る舞いもウサミミのおかげ?』
『それなら納得する』
オスのウサギのミミだから特にそういうのはないかな。
『ないんだ……』
『業が深い』
『オスとオスが合体してなんでメスになるの?????』
★☆★天下一ゆみみ:それがいいんじゃあないか \30,000★☆★
あっ、虹スパありがとうございます!
い、いいのかな……?
『バ美肉ガチ恋がこれ以上増える前にさっさと百階層まで到達してくれ! 俺も我慢できない!』
う、うん。なんかごめん。
あと最後にもうちょっとだけ説明するね。
ボス戦とか流石にキツいので、ちょっとした救済措置を設けてもらうことになりました。
『救済措置?』
「わたしわたし! 私です! っていうか本来ここは私のチャンネルなんですけど!」
『おっ、ちっちゃい鏡の中にアリスが見える』
『実家のような安心感』
『囚われのお姫様ポジじゃん』
「あっ、姫ポジもいいですね……ではなくて! シェフ・ラビットちゃんがピンチになったとき、私がちょっとだけ助っ人できるそうなんです! まあ私が目立ちすぎてもいけないので、ボス戦とか要所要所で出撃する形になるとは思うんですが」
というわけです!
ただ、助っ人として出てきてもらうためには条件があるらしいので、そこはボクもまだ知りません。そのあたりは霊廟を管理してる守護精霊たちが色々と仕込みをしてるみたいです。
『なるほど。ただ攻略するだけじゃなくて、召喚するための条件を探す謎解きもするってわけか』
『これはもう封印されしアリス様では』
そういうわけです!
それじゃ、いっくよー!
◆
いきなり負けました。
『はえーよホセ!』
『なんだそのポンコツムーブは!』
『物の見事にボロボロである』
『いきなりセーブポイントに戻されてるやつおる?』
だってこのステージおかしくない!?
5階層まではなんか手ごたえがあるようなないような幽霊っぽいやつで、6階層からいきなりドラゴンとか出てくるんだもん!
あれをボコって退治できる方がおかしいって!
『嫁への唐突なディス』
『でもドラゴン肉とか調理してたやんけ!』
あれはスプリガンちゃんに狩ってもらったやつだから……。
ていうか料理人が食材に勝てるならイノシシに勝てることになるよ!
『まあ料理人はハンターではないからな……w』
『それにしても、ドラゴンの体当たりで見事にボコボコにされたなぁ』
『アリスさんがいないと見るや喜び勇んでとびかかってきてた』
『というかアリスさんにやられた仕返しでは……w』
『江ノ島で鳥にいじめられてるピンクジャージの子を思い出した』
「がんばってくださいシェフ・ラビットちゃん! 物理攻撃でドラゴンは倒せます!」
『それはアリスさんのフィジカルと刃物があったからだろ!』
あ、そっか。
刃物ってアリか。
ウサ耳のワイルドな魂に引きずられてパンチとキックで戦ってたけど、素手で頑張らなきゃいけないってルールでもないんだよね。
『聖剣ピザカッター借りるとか?』
アリスちゃん、借りてもいいかなー?
「問題はないですけど……バージョンアップすればするほど重くなってますよ? 一番重いやつで300キロ、刃渡り2.5メートルで刃の厚さも15センチくらいあるし」
ひえっ。
「ひえってなんですか、ひえって! 設計図出してきたのそっちじゃないですか!」
ご、ごめんごめん。
でもボクに扱うのは無理っぽいね……。
『初期型のクロモリのピザカッターあたりがいいんじゃないの』
『あと、飛び道具使うべきだよ』
『でも銃は無理でしょ』
『クロスボウとか?』
『それも許可が面倒くさいはず』
『じゃあ、コンパウンドボウとかは? アメリカなら狩猟で使う人もいるはず。日本じゃ禁止だけど』
コンパウンドボウって、確か使い方としては普通の弓だよね?
ただ、スコープとか付いてて撃ちやすくなってる感じの。
『そうそう』
『素人が扱えるの? 難しい気がするけど』
『扱えないけど、なんかフィジカルとかバフ掛かってるならなんとかなるんじゃない?』
『物は試しだ! やってやりましょうぜ!』
なるほど……。
飛び道具を使いつつ、近付かれたら剣で戦う感じだね。
「それと、見晴らしの良い平地で1体複数という、ドラゴン側が遥かに有利な状況に陥ってるのがよくありませんね。森とか川とか、色々あるのですからもっとフィールドを活用しましょう。初心者が無為無策で突っ込んで勝てると思ってはいけません」
『解説のアリスさんが真面目なコメントを出した』
『流石プロ。違うなぁ』
よし!
じゃあ作戦を練り直して、装備も整えて再チャレンジだよ!
『がんがれ』
★☆★天下一ゆみみ:あと服も直して……。中破した艦むすみたいな恰好は刺激が強いから……スクショは撮っておくけど \30,000★☆★
「他人の夫の半裸に興奮しないでください! 男の人ですからね!?」
あっ、それはほんとごめん。
男でごめんなのか、変なもの見せてごめんなのかはともかく。
『そんなことはわかっている!』
『わかっているけどなにかが俺たちを動かしている!』
「なんかもうみんな業が深いんですけど! いや、みんなの気持ちはわかりますよ! なんでわかっちゃうんでしょうね!?」
アリスちゃんの情緒がまた狂い始めたので、今日の配信はこのへんでね!
まったねー!





