第六十六話 無自覚の異常
昨日ONEPIECEの映画を見てきて超テンションが上がってる作者です。
ネタバレの関係上詳しくは言えぬが、とにかくウタちゃんがカワイイのはマジ。
とりあえず全人類見てくれ、話はそれからだ。
◇Side:〇〇◇
〇〇視点での進行
◇NoSide◇
三人称視点での進行
◇ ◇ ◇
視点変更無しでの時間軸等の変化
これから多分こんな感じで進みます。
最初に何もなかったらアレン視点だと思ってください。
◇Side:リズ◇
「いやはや……圧巻、と言わざるを得ないね」
私は半ば呆然としながらそう呟いた。
私の視線の先にあるのは異常とすら言える速度で数多のロボット兵を薙ぎ払うレンくんの姿だ。
リヒトとユカ、そして彼自身のバフによる六重……いや、聖剣のスキルも含めれば七重の加速。
それがあの馬鹿げた速度を生んだ原因……そこまではいい。
ただ単に他者の力を借りてスキルを積み重ねただけ、それだけならば誰にだってできる。
問題はあの速度を完璧に使いこなしていることだ。
加速スキルの理屈は単純にAGI……肉体の速度を上昇させるものというより、身体を過剰に動かすものに近い。
パソコンで例えるならマウスの感度を急激に上げて小さな動きをそのまま大きく拡大するようなもの。
当然そうしただけ速度は上がるが、それと同時に扱う難易度も大きく跳ね上がる。
普通免許しか持っていない人間にF1カーを乗りこなせるか、という話だ。
そうした不具合を回避するために『アナザー』のシステムそのものに『AGIと体感時間を加速させる』という機構が備わっているのだが……ここに一つの大きな欠陥が存在する。
それは『プレイヤー本体のAGIしか反映しない』というもの。
つまり、どれだけステータス補正の高い装備を使おうが、どれだけの加速スキルを重ね掛けしようが……その上昇値は体感時間の速度には反映されないということだ。
それ故にほとんどのプレイヤーは加速スキルを重ね掛けすることはなく、したとしても二つが精々だ。
扱いきれないのだから当然と言えば当然だ。
しかし、万物には必ずと言っていいほど例外が存在する。
そして、私はそれを今、目の前で目撃している。
動体視力、身体操作、空間把握にetc……どれほどの技能を、どれほどの力量で必要なのかもわからないほどに高度な動きを……まだ始めて一月も経っていないプレイヤーが繰り広げている。
「━━アハハッ」
思わず笑みが溢れるが、それも仕方がないと思える。
それほどまでにあの動きは常識から逸脱している。
しかも、彼はまだ第三階梯のレベル八だと聞いた。
最終地点となっている第六階梯まで、あと三回の進化が残っている。
それに彼ならばおそらく……いや、まず間違いなくその先にだって……
「ああレンくん……君はどこに向かうと言うんだ?」
知りたい。彼がどこを目指すのか。
知りたい。彼がどのような力を手に入れるのか。
知りたい。彼がどこまで至るのか。
それを見れたら……あわよくば後ろで、隣で、誰よりも近くでそれを見れたなら━━
「━━っとと、考え込み過ぎたな」
後ろから接近していた機械兵を振り向くことなく鞭で破壊する。
分割思考による身体の制御と思案の同時並行はまだまだ練習が必要だな、思わず考え込み過ぎてしまう。
しかし、これは……
「数が多すぎるな……」
私達を圧殺するためにプラントフォートレスが出した機械兵の数は五〇〇〇体。
レンくんの奮戦もあって二、三〇〇体くらいは減ったと思うが、それでも相手の数は圧倒的だ。
あと数分もすればレンくんの多重バフも効果が切れる。
それまでに数をできる限り減らさなければ……おや、今そこで何かが光ったような?
軽く鞭を振るって周囲の機械兵に牽制を入れると共に光った何かを弾き、空いている左手で掴む。
それは手の平ほどの大きさの金属片。
機械兵のドロップアイテムの一つのはずだ。
確か正式名称は『古代機兵の装甲片』……待てよ、装甲片?
それならもしかしたら……
「試してみる価値はあるかな」
私は辺りの機械兵を破壊しながらドロップアイテムの金属片をかき集める。
ユカの広域破壊に巻き込まれて粉々になったりしているものもあるが、それでも倒した数が膨大なおかげか、相当な量が転がっている。
どれだけいるかもわからないし、数が多いに越したことはない。
「……先輩何してるんですか?」
「ん? ああ、ハキルか。すまないが金属片集め手伝ってくれないか? あと、ユカに少し魔法の威力を加減するように伝えてほしい」
「いや、それはいいですけど……何してるんですか?」
そういえば問いに答えてないな、これ。
レンくんやタイガは意図を聞かずに動いてくれるから実に便利……いや有り難いが、普通なら説明はしなければならないか。
これからは頭の片隅に置いておこう。
「ふむ、色々と言い方はあるが……」
私は集めていた金属片を持ってニコリと微笑んでみせる。
「━━ここに城を築く」
◇Side:アレン◇
「━━で、出来上がったのがこれと」
「大体そんな感じね。いきなり言われた時は驚いたけど、まさか説明ゼロで指示に従うことが前提になってたとは思わなかったわ」
ああ、リズさんはそんなことするよ。
まあ、主に俺やタイガが意図を聞くことなく指示に従うから悪いんだろうが……実際リズさんが指示してそれが無駄になったことがほぼないから聞くより早いんだよな。
「いやぁ、これが出来たらビックリするよね。まあ、作ったのは私なんだけどね!」
ユカが自慢気に胸を張りながらその後方……大量の金属片が混ざった土の壁に触れる。
この混ざった金属片は工場要塞が生み出したロボット兵のドロップアイテムらしく、ユカの地属性魔法の壁に混ぜ込んで強度を底上げしているのだという。
それだけでできるのかと疑問になるが、あの金属片も中々の強度を持っており、試してみたところ金属片で殴るだけでロボット兵は粉砕できた。
外のロボット兵が密集し過ぎて圧壊されないように、魔法を使えるメンバーが土壁の小窓から魔法を放って定期的に間引き、それでリヒトの聖剣のスキルの発動条件である戦闘継続も満たしている。
そうして、余裕の生まれた俺達はハキル、ユカ、リズさんの女子組が持っていた飲み物とお菓子でお茶会に興じている。
「しかし、このままずっと壁の中に籠もってるわけにもいかねえだろ。なんとか反撃しなきゃならん。おい、紅茶もう一杯くれ」
「さっきリヒトが突破する攻撃能力があるって言ってるから、それに期待するしかないな。誰か甘くないお菓子持ってないか?」
「それはそうだが、外は機械兵に完全に包囲されてるんだ。誰かこの包囲網を突破する手段を持っているのか? あ、このクッキー美味しいな」
「俺のスキルは一発きりっすからねー、それまでは全員がかりで無理矢理切り開くしかないっすよ。……うえっほ!? おい誰だ、クッキーの中にクソ苦いチョコ混ぜた奴! 味覚死ぬわ!」
「それなら私が突破用の魔法を組みますよー。時間さえあれば道のりの半分くらいまでなら届くと思います。アレンくん、この塩キャラメルなら甘じょっぱいから食べれるんじゃないかなー」
「それならユカの準備ができるまではこのまま待機で良さそうね。外の牽制は私とリヒトとアレンでしましょ。あと、高カカオチョコレートは私が持ってきたけど、混入させた犯人は知らないわよ」
最後のハキルの発言、そしてリヒトのスキルは時間をかければかけるほど強くなるという補足の二つが決め手となり、このまましばらく静観することが決まった。
ちなみに、クッキーの中にチョコを紛れ込ませたのは俺である。
見た目から少しにがめのやつだろうと予測できたので、誰か引っかからないかなー、とちょっとした悪戯心が働いてしまった。
リズさんに当たってくれたら面白いことになったかもなんてこれっぽっちも思ってません。
だからその疑いの視線を外してくださいリズさん、俺がリヒトに疑われるので。
そんなことを考えながら俺は壁に開いた穴から工場要塞を見る。
異様な風貌、そこから湧き出る大量のロボット兵。
確かに厄介ではあるが……どうにもできないほどに強いかと言われれば否である。
ハキルやユカみたいな鈍足型が相手なら圧殺できるかもしれないが、俺のように機動力が高い相手には詰みまでは持っていけない。
本当にこれが最高の一手なのか……はたまたさらに奥の手があるのか。
「このままじゃ……終わらないか」
「あん? なんか言ったか?」
「いや、何も」
そう言ってリヒトを誤魔化し、俺はお茶会の雑談に戻る。
脳裏によぎった悪い予感は気の所為であれ、と願いながら。
それと何も関係は無いけど、今後この作品に音楽系統のスキルを持ったプレイヤーは登場する予定。
下手したら後一、二年先になるかもしれないけど。
あと、前書いたリヒトのステータスが明らかにおかしいことに気づいたので修正します。
当時の作者はどんな計算をしたらこうなったのだろうか。




